くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「CUTIE HONEY-TEARS-」「世界一キライなあなたに」

kurawan2016-10-06

「CUTIE HONEY-TEARS-」
久しぶりの最低映画。

キューティーハニーといえば、セクシーで強くてカッコよくなければいけないのに、そのどれもできていない。永井豪の原作のテイストを全く理解せずに作られた駄作。とにかくアクションシーンが最低。カメラが寄りっぱなしで、全体の動きが見えないし、スローモーションさえもカメラが寄る。なんだこれは、センスがなさすぎ。しかも、主演の西内まりやのセクシー度も全然出ていないし、とにかくキューティハニーが強くないのだ。監督名を書く気にもならない。テレビの戦隊モノの方が幾分か見れるという出来栄えだった。

近未来、上層界と下層界に別れた世界で、上層界にはコンピューターによる完全体のジルが君臨している。下層界には貧しい人間がいる。今時ありきたりすぎる設定。

当然、反乱分子が上層界を破壊すべく画策するが、このキャラクター描写が全くなされていないので、誰が誰か見えない。しかも脚本が荒すぎて、適当さ満載でストーリーも見えない。

なら、キューティハニーの美形、セクシーさ、かっこよさが前面に、いやこれ見よがしに見せればいいのかもしれないがそれも妙に中途半端。

最後はハッピーエンドだが、これって何も起こらなかったとしても別にいいんじゃないというレベルで、サスペンスの仕上がりもできていない。これでお金取るなよと言わんばかりの一本だった。最悪。


「世界一キライなあなたに」
とっても素敵な映画でした。まず、画面作りのセンスが抜群。色の配置、物の配置がとっても美しい。こういうセンスのいい映像を見るとそれだけで画面に引き込まれてしまいます。その上、キャラクターの描き方がとっても綺麗なのです。物語の構成もバランスよくて嫌味がないし、本当に上品なラブストーリーの名編に出会った感じでした。監督はテア・シェアイックです。

ベッドの中で仲睦まじい恋人のシーンから映画が始まる。しかもこの二人の品の良さは上流階級の気品を感じさせてくれる。真っ白なシーツに包まれるこのオープニングがまずいい。そして男性はベッドを出て外へ。

携帯電話をしながら通りに出ますが、バイクが走ってきて事故にあってしまう。そして暗転、タイトル。

画面が変わるとコケティッシュで可愛らしいルーがカフェで愛想良く働いているが、突然カフェが廃業になり失職してしまう。スポーツオタクのような彼が彼女の相談に乗るも前に進まない。家に帰れば、どうやら父も失業しているようで、お金が大変な様子。しかし、決して暗い雰囲気ではないし、やたら可愛らしい派手な服装のルーの存在感と、コミカルな会話が画面を沈ませない。

そして、紹介されたのは、介護の仕事。行ってみると驚くほどの大邸宅で、向かいにそびえる城の持ち主だという。下半身不随で車椅子に乗る青年ウィルは、現在の状況もあってルーに冷たく当たる。彼をサポートするのはトレーナーのネイサン。

最初は戸惑うルーだが、仕事が必要であることと持ち前の陽気さでウィルとの距離を詰めていく。しかしウィルには一つの決心があった。それは、スイスに行き安楽死をすること。それを聞いたルーは気持ちを変えようと、まだ経験していない様々なイベントや計画を立て始める。

ルーがウィルのところに行くようになり、間もなくして、ウィルの元彼女はウィルの親友と結婚するというエピソードが挿入される。しかし、ルーに心を開き始めたウィルはその結婚式への招待を受けるのである。

美しい景色や城の背景、ルーのサイケデリックなほどの色あざやかな服装の変化がとにかく画面を美しく彩ってくれるし、ころころと笑うルーの明るい会話、微笑み返すウィルの気品のある振る舞いが映画を上品なものに仕上げていく。さらにストーリーの展開も実に品がいいし美しいから、全体の空気がとっても素敵になるのです。

様々なイベントやコンサート、旅行などもこなしたルーだが最後にウィルは揺るがない決心を告白、一時はどん底に落とされたルーだが家族の励ましで、最後を看取るためにウィルのいるスイスへ旅立つ。そして束の間の時を過ごし、ウィルは旅立っていくのだ。

ウィルの希望もあり、夢だったパリのカフェに座るルー。手元にはウィルからの最後の手紙が握られていた。夢を叶え、未来に向かって欲しいと。

ルーはその手紙を読み、一人歩き始める。彼方にエッフェル塔が見えてエンディング。美しい。これが映像作りである。映像センスを感じざるを得ないのは、監督のテア・シェアイックが舞台演出家でもあるためかもしれない。

しかし、バランスよく配分されたエピソードが奏でる脚本のリズム感、さらにルーの周りの家族たちの存在感、そしてウィルたち家族の気品ある立ち居振る舞い。どれもが見事にコラボレーションして一本の映画として、映像作品として仕上がっている。これはもう名編と言うほかない。とっても素敵な映画だった。ただ、日本語題名のセンスのなさは唯一の汚点。