くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジェイソン・ボーン」「不思議惑星キン・ザ・ザ」「オフィ

kurawan2016-10-07

ジェイソン・ボーン
さすがに面白い。映画が始まってからノンストップであれよあれよとアクションが間断なく繰り返される。しかも、ワンパターンではなく、様々なパターンが目まぐるしく展開して行くのである。さらにすごいのは、次々と物語が先に進むにもかかわらず、絶対に混乱しない脚本力、ストーリーテリングのうまさである。もうここまでくると芸術的とも言える職人技ですね。監督はオリジナルシリーズを作ったポール・グリーングラスである。

アフリカだろうか、荒涼とした土地で一人の男がドッグファイトよろしく屈強な男の前に立つ。いわゆる格闘技賭博である。一瞬で相手を倒した男は元CIAの殺し屋ジェイソン・ボーンだった。完全に世間から姿を消していた彼に元同僚のニッキーから、CIAが巨大企業と組んで世界を監視操作するプログラムを作ることを画策しているという情報を提示される。さらに、彼に、彼の父の死にまつわる事実を告げる。

ハッキングの追跡でニッキーの存在を見つけたCIA長官のデューイは早速情報官部長のリーとともにニッキーと彼に近づくジェイソン・ボーンの存在をキャッチ、その抹殺に動き始める。

アイスランドでのハッキングシーンに始まって、ロンドン、ラスベガスと世界中を転々と動きながら展開する物語は、とにかくめまぐるしい。しかもCIAの追跡チームとそれを交わすジェイソン・ボーンの駆け引き。秒単位で切り替わって行くストーリーにいっときも目を離せない上に、半端ではないアクションの見事なカメラワークと編集に見入ってしまうのです。

ボーンの父親の死の真相が明らかになり、一見、ニッキーの意思を継いでデューイを狙っているかに見えた展開は、実はボーンの父親を殺した男の抹殺が目的へと転換し、次々と、追っ手をかわして行く様はノンストップである。

クライマックス、ボーンを射殺せんとする作戦員とのカーチェイスも半端なアクションではなく、車をぶっ飛ばす、なぎ倒す、くぐり抜ける、撥ねとばすと、これでもかというほどのアイデアが繰り返されて行くのである。そして格闘の末作業員を殺し、デューイの元へ向かうボーン。すんでのところでリーが味方となってボーンを助け、デューイは殺されるが、エピローグで、実は全ては自分の出世のためで、次期長官の元で自分を重宝するようにと車の中で語るリー。そして、車を降り、近づいてきたボーンに建前の勧誘をする。考えておくと返事をするボーンを見送り、自分の車に乗ったリーの助手席に、先ほどリーが語っていた本音を録画した映像が残されていた。もう鮮やかというほかない。

目まぐるしく慌ただしいほどのアクションシーンで圧倒した後に、鮮やかに身を引いて行くボーンの存在感が絶品。アクション映画はこれでないといけません。今、映画を作っていたらこの作品を何度も見て研究していたことでしょうね。本当に見事な映画でした。


不思議惑星キン・ザ・ザ
約30年前の旧ソ連映画である。カルトムービーの一本で、当時、誰もが相手にしなかったのに、いつの間にか熱狂的なファンができてしまった珍品SF映画をようやく見ることができた。正直、空いた口が塞がらない。いやそれより、なんと感想を書いていいかわからない映画でした。前衛芸術家を集めたのだという解説を見たこともありますが、全編、そういう感じで、退屈を通り越して、ケムに巻かれてしまった。監督はゲオルギー・ダネリヤという人です。

ソ連に住む普通の建築技師のマシコフは、妻に頼まれて買い出しに街に出る。そこで一人の学生ゲデバンと出会う。

彼は「あそこに異星から来た人間がいる」という。マシコフとゲデバンがその男のところに行くと彼は裸足で、自分は星に帰りたいのだという。そして空間移動装置を持っているというので、信じないマシコフはその装置を触ってしまう。瞬間にゲデバンとマシコフは奇妙な砂漠の中に放り出される。

彼方から釣り鐘のような形の物が飛んで来て、彼らの前に降りると中から二人の男が降りてくる。ここはキン・ザ・ザという星だという。奇妙な挨拶をし、奇妙なことを喋りながら、マシコフたちはとにかく地球へ帰るために、この星の風習を身につけながらその手段を模索し始める。

次々と現れる前衛芸術のようなオブジェや乗り物、さらに奇妙な人物たちに翻弄されながらも次第にこの星の風習になれ、金を稼ぎ、最後は地球に戻ってくる。

わけがわからないまでも、宇宙人二人との友情も芽生え、正義感も生まれ、心の交流する展開もあるのがある意味不思議であるが、とにかく、頭の中がモヤモヤになってくる。

本当に珍品という珍品で、当時のソ連で大ヒットしたといういわくつきながら、一体どういう感覚の生活をしているとこの映画に熱狂するのか不思議なほどである。でもまぁ、映画ファンとしては見ていて話の種になるかなという映画だった。


「オフィス檻の中の群狼」
韓国映画の名作「チェイサー」の脚本家ホン・ウォンチャンの初監督作品ということで見に行った。だいたい、優れた脚本を書く人はちょっとした映画を作ることが多いからだ。と思っていたのですが、サスペンス映画としては凡作、真相を見せるタイミングが良くないし、それ以前にネタが見えてくるのは演出力の弱さでしょうか。確かに面白いけど、よくある展開に、芸のないラストシーンは残念。

一人のうだつの上がらなそうなサラリーマンがコーヒを飲んでいる。そのまま家に帰り、普通の家族の前に金槌を持って迫り惨殺事件となる。ところはこのキム課長は行方不明になる。

場面が変わると、満員電車から飛び出す一人の女性ミレ。彼女はキム課長の勤務していた会社のインターン、つまり正社員ではない。存在感も薄く周りからいじめられる存在であるが、キム課長には可愛がられていたらしい。

映画は、この会社の同僚たちが会社に潜伏したキム課長によって殺されて行くという展開で進んで行く。この事件を追う刑事ジョンフンは真実に迫るべく調査を進める。

しかし、物語中盤を超えたあたりで、キム課長の犯罪ではないのではと見えてくる。間も無く、ミレが一人の同僚の女性をトイレで「サイコ」のシャワーシーンよろしく惨殺。つまり犯人はミレであるとわかる。さらに、キム課長の死体も見つかる。このエピソードの配置が悪い。最後の最後に畳み掛けるように真実を見せるべきである。

ミレはさらに殺人を行い、そこに刑事が駆けつけるが、ミレはターゲットともみ合って、自分が刺される。そこへ駆けつけた刑事が、ミレに馬乗りになっている男を撃ち殺しエンディング。これも良くあるラストだ。結局犯人はミレではなく、若い社員となって終わるのだが、この若い社員はラストまでほとんど見せないし、冒頭のキム課長の一家惨殺はどうでもいいオープニングになってしまっている。

優れた脚本家だと思って見たが、意外だった。やはり、自分で監督となるとこうなるのだろうか。過去の名監督たちが築き上げたサスペンスタッチをちゃんと勉強すべきだろうと思う。

全体のクオリティは、韓国映画の並作品レベルだし、特に秀でたサスペンスでもなかった。期待しすぎということもあるけれど、まだまだ韓国映画はほんの一部の監督作品だけがずば抜けている感じである。