くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛の果てへの旅」「濡れた二人」

kurawan2017-04-26

「愛の果てへの旅」
映像がとにかく面白いし、音とマッチングさせてのリズム感の良さにどんどん引き込まれる作品なのですが、物語はほとんど理解できなかった。ラストになって、なるほどそういうことだったかというエンディング。そうは言っても映像に酔わされる一本でした。監督はパオロ・ソレンティーノです。

ずーっと奥まで続く動く歩道のカットからタイトルバック。延々とした彼方から一人の男性がトランクを引いてやってくる。

ゆっくりとカメラが引いてさらにパンしたあと一人の女性にズーミング。そしてそのまま次のカットから、何やらカフェらしいところで話をする男たち。いきなり外の雑踏に変わって、続いて店内へ。このカットの切り返しの妙味に、どんどんこの映画のスタイリッシュな画面の虜になるのである。

ある部屋に入った男が窓の下を見下ろすと、女が向こうへ去り、一人の男がすれ違い、電柱にぶつかる。人物が通り過ぎると別の人物がオーバーラップするように画面を横切る。背後に流れる効果音のリズムと映像のリズムがテンポよく切り替わり、それに細かいカットの切り返しがかぶる。

どうやらこの男は、マネーローンダリングの金の処理を任されているらしいが、その胡散臭さが見えてくるのは後半からで、それまではただの謎のサラリーマン程度にしか見えない。

任された大金を着服し、与えるべき人物に送って、自分はコンクリートの中に沈められてしまう。なるほどそういう話かとわかったものの、ではそれまではどうなのかと問われれば、卓越した映像センスのすごさを堪能できたという充実感に浸ることができるだけで、話をスラスラ話せない。とは言っても、ものすごい才能を感じる映画で、もうちょっとストーリーテリングも考慮してくれたらなと思う作品でした。


「濡れた二人」
若さが溢れたギラギラした作品ですが、やはり 増村保造監督作品としては、いつもほどの妖艶さは出てませんね。大映作品ですが 、日活青春ものというイメージの一本でした。

テレビ局に努める夫との関係も冷めた万里子は、かつて女中をしていた女の実家の海辺の町への旅行を計画する。

しかし、仕事にかまけて夫は来ず、万里子は一人やってきたが、そこで漁師をしている繁男と出会う。主人と正反対の性格の繁男にどんどん万里子は惹かれていき、やがて体を合わせる。

日を置いて夫がやってくるが、すでに万里子の心は繁男にあり、繁男の心も万里子にあった。

一人帰る夫を見送り、繁男ともう一度体を合わせるために離れで待つ万里子。赤いネグリジェを脱ぎ全裸で待つ若尾文子(代役でしょうが)のシーンがとにかく妖艶で、雨の中、庭で躊躇する繁男の姿との対比がなかなかの見所である。

結局繁男は 万里子の所に行けず、万里子は帰る決心をして、最後に繁男のところに挨拶に行く。そしてバスを待つ万里子に、夫から離婚届を送った旨の電報が届きエンディング。

悪い映画ではないけれど、と言って増村保造作品の中での位置付けはそれほど上位でもない。そういう出来栄えの一本でした。