「エンダーのゲーム」
オースン・スコット・カー原作の名作SF小説の映画化。監督はギャビン・フッドである。
特撮が、CGの発展で、ほとんどのことをできるようになった今、一番陥りやすいのは特撮だけが見せ場で、映画の演出がほとんどなされていない薄っぺらい作品である。この映画も、そのほとんどが、訓練場面での特撮シーンと、主人公エンダーが操作するバーチャルゲームの中の世界。
従って中盤あたりまでは、ひたすら、そんな美しい特撮シーンを楽しむことになる。一人の主人公エンダーが、地球を救うため、侵略者フォーミックとの最終決戦のため、指揮官となるべく訓練する人間成長の物語が、そのほとんどだが、そのドラマ性が非常に希薄になってしまった。
特撮シーンにも、それほどのオリジナリティは見られないし、カメラ演出もふつうであるために、もしかしたら「2001年宇宙の旅」の方がよほど、すばらしかったかと思ってしまう。いったい技術の進歩はどうしたのという感じである。
とはいえ、原作の力によるものか、後半からラストのほんのわずかな部分に、このドラマのメッセージを凝縮させる。
主人公エンダーが、最終シミュレーションだと思って操作した作戦が、実は、現実の世界で、そのために敵の惑星の住民すべてを殺戮してしまう。
この差し迫った期限までの緊迫感がぜんぜん描けていないために、この終盤が際だたない。
そして、その苦悩の結果思い出したのが、ゲームシミュレーションで、実はフォーミックが彼にアクセスしてきていたことである。
そして、最後の最後の生き残りの女王蜂の子供を新たな生育地へ運ぶ為に、一人、宇宙船で旅立って暗転エンディング。
非常に、奥の深い物語、というかそういう原作ゆえに、映画化が難しかったのだろう。特撮だけで壮大な世界を作り出すと、肝心の原作の味が薄れるのだ。その点でこの作品は、完全に失敗している。原作が壮大すぎるのである。
終盤は、さすがに、特撮シーンだけでは引っ張っていけなくなった。こういう作品こそ、二部作にすべきだったのではないかと思います。まぁ、ふつうのSF映画ですね。
「黒執事」
人気コミックの映画化で、映画版オリジナルストーリーとなる。監督は大谷健太郎とさとうけいいちの共同監督。
水嶋ヒロの圧倒的な存在感と演技力でラストシーンまで支えた作品でした。とにかく、冒頭のアクションシーンが抜群におもしろいし、すばらしい出来映えになっている。もちろん、それ以外の場面でも水嶋ヒロ扮する黒執事のアクションが見事で、そのシーンを見ただけでもこの映画を見た値打ちがあったといえる一本でした。
剛力彩芽ほか、キャストがすべて役不足と、ひたすら台詞で物語を延々と説明する脚本の弱さを、すべて水嶋ヒロが必死で支えたという感じでした。
映像についていうと、カキ割りのような安っぽい、サイケデリックな画面づくりを徹底し、非現実的な世界を演出しようという意図は十分に感じられるのですが、いくら、フィクションの世界とはいえ、貴族の世界なのであるから、物言いといい、立ち居振る舞いといい、最低限の演出は必要である。それが全くできていないし、演技者もなにを勘違いしてるか、水嶋ヒロ以外はすべて、ただのアイドル演技である。
物語がオリジナルであるのと、原作のストーリー展開を崩せない制約から、とってつけたような説明シーンが、終盤でやたら登場し、それなら、映画を見ずに、説明を聞いた方が良かろうというクライマックスであるものの、最後まで水嶋ヒロが締めてくれました。
アクションシーンは、世界に通用するレベルのスピード感があったと思うし、あと、ストーリー部分をしっかりすれば、「るろうに剣心」レベルの一本に仕上がったかもしれない。
いろいろと、弱点は多いものの、とにかくアクションシーンにすかっとする映画でした。できばえはともかく、楽しませてくれました。