くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「少年ケニヤ」「オイディプスの刃」「刑事珍道中」

kurawan2016-12-02

少年ケニヤ
角川映画祭、アニメです。しかも監督は大林宣彦と今沢鉄男です。それほど期待していなかったのですが、えらく面白かった。原作がいいのでしょうがそれを脚本にしたところで成功しているのでしょう。

次々と冒険物語が魔弾なく展開する様は息をもつかせないと言う感じです。しかも、第二次大戦末期、アフリカという国がいかに未知の国だったかというのが、想像を絶する想像力で描かれていく。

大蛇がいて、巨大なカエルがいたり、トカゲがいたり、さらにクライマックスでは恐竜さえ出てくる。しかし、それを素直に受け入れてしまうストーリーテリングのうまさに感服。その上、大林宣彦らしい、グラフィカルなテクニックを駆使したアニメーションがすごく独創的で、その転換のリズムだけでも楽しめる。予想以上に傑作だった気がします。

主人公のワタルが日本に帰る前に、最後にアフリカの旅行をしようと出かけるところから物語が始まる。

ところが旅行の途中で日本とイギリスが戦争に突入、ガイドしていたアフリカ人がワタルたちを放って帰ってしまう。そこでワタルと父がアフリカを進むが、途中で別れ別れになり、ワタルはマサイ族の酋長に助けられる。そして、たくましく成長する中での冒険物語が次々と展開。

そして終盤、とうとうワタルを探していた父とワタルはドイツの研究所、なんと、アフリカのど真ん中に原子爆弾を救っている研究所があり、そこで再会、しかし開発を強制されていた博士に助けられワタルたちは脱出、博士は身をもって最終兵器を爆発させて、ワタルたちは無事汽車に乗りナイロビに向かってエンディング。

とにかく、展開が早いので飽きないし、映像が次々と変化するのでそのテンポにも乗せられてしまう。うまいとしか言いようのない作劇術です。掘り出し物のアニメーションでした。本当に楽しかった。


オイディプスの刃」
昔ビデオで見たことがあったのですが、その時は、とにかく面白くなかった。今回、スクリーンで見ましたが、いわゆる物語の語りがうまくリズムに乗っていないために、くどくどと展開する。そのために、終盤にかけて疲れてくる。しかし、役者さんそれぞれが、どの人もものすごい熱演をしています。おそらく監督の演出ゆえでしょう。誰もかれもが、目一杯に力が入っているので、全体に緩急が生まれず、どれを中心に見ていくか混沌としてしまう。その結果、ストーリーに波が生まれなかったため、しんどくなったかと思います。監督は成島東一郎です。

物語は、一本の日本刀の名刀が生み出した三人の兄弟の数奇な運命というものです。角川小説大賞をとるだけあって、見事に組み立てられた原作が想像できますが 、映像向きではない。ゆえに、映像になるとくどくなってしまった。

刀と香水の調合の話なのに、刀の話が前面に出て、その刀が生み出した兄弟の悲惨な運命へと流れきらなくなる。

もっと物語をばさっとシンプルに書き直してから映画にすべきだったかなという感じですね。

映像の凝り方や、役者への演出のうまさなど、絶品の出来栄えなのに、力が入りすぎた出来栄えになったのは残念。


「刑事珍道中」
アメリカンスラップスティックコメディ風にひたすらドタバタと展開する中身のない映画です。正直見ていて嫌になる感じです。やけくそで作ったのかと思わせるほどな作品ですが、これも実験的と言われればそれまででしょうか。監督は斉藤光正です。

要するに、交通課で何をやっても裏目に出てドジばかりする刑事コンビが 巻きこまれる大金強奪事件に絡めて、ひたすらバカバカしいドタバタ劇が展開。色気もなく、ジョークもなく、本当にその場限りの適当映画。当時売り出し中の勝野洋中村雅俊のスター映画を適当に作ったという一本でした。