くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クラウド アトラス」「プラチナデータ」

クラウドアトラス

クラウド アトラス」
ウォシャウスキー兄弟とトム・ディクヴァ監督が描いた壮大な輪廻転生の物語。正直この手のめんどくさい映画が好きな方にはたまらない一本。
物語は1949年のお話から地球が滅亡した遥かみらいの物語と合計6つのエピソードが交互に入れ子になって展開して行く。同じ俳優がそれぞれの時代でさまざまな役どころで登場、それが端役であったり主演であったりとさまざまな上に、人間ドラマありアクションあり、ミステリーありSFありとジャンルもさまざま。それらが次々とシーンを変えて繰り返されるのだから気を抜くと混乱しそうになる。

しかしながら、トム・ハンクスがいつの時代もそれなりの役どころなので彼を見つければ大体物語を追うことができる。

デジタル映像が美しいし、それぞれの監督の個性も見えなくもないのだが、作品を貫くメッセージはラストでも明らかに見えてこないのが残念。たしかに、それぞれの時代がどこかでつながり、かかわって地球の物語として壮大な展開を図って行くのであるが、ラストでトム・ハンクス扮する老人が子供たちに過去を語るシーンで終結すべきところがきれいにまとまり足りない。

個性的な監督が共同で演出したために一貫性がずれてしまったのか、原作や脚本に不十分な部分があったのかはともかく、それぞれのエピソードはしっかり描かれているし面白い。そしてきっちりと起承転結で締めくくるのだがそれぞれの関連付けからの輪廻転生のメッセージがきれいに紐解かれないのである。そのあたりがちょっともったいない。

いろんな役者がそれぞれの時代でいろんな役柄を演じているのをエンドロールで答えを見せるところで自分の答えと照らし合わせるシーンは面白かった。
とにかくこの手の面倒な映画が好きな私としてはまあまあ満足した映画でした。


プラチナデータ
大友啓史監督なので、ちょっと期待していたが、さすがに東野圭吾原作小説の面白さは再現し切れなかったようです。さらに鈴木保奈美が完全なミスキャストに思えました。

近未来、全てのDNAデータを記録して冤罪をほぼ100%なくさんとする計画がいままさに試験第一号で立証されようとしているシーンから映画が始まる。開発したのは神楽龍平。しかし彼の考えに疑問を持つ敏腕刑事浅間玲司がこの物語の中心になる。

導入部のタイトルまでのスピーディなカット、さらに神楽が逃亡するシーンでの大友監督得意のアクションシーンのうまさはさすがである。しかし、さらにカーチェイスジーンでも逃亡シーンを描写したのがちょっとしつこい。しかも、後半に入ってミステリー部分がそのストーリーの中心になり、そこに東野圭吾得意の人間ドラマが絡んでくるととたんに映画がそのリズムを崩す。しかもそのあたりがうまく描ききれていない上に、マッドサイエンティストであり、猟奇殺人鬼でもある鈴木保奈美扮する水上教授があまりにも存在感が薄い。彼女は神楽龍平の母でもあるという重要な人物であり、いわば原作の中心的な人物である。その彼女を鈴木保奈美ではまったくダメなのである。

結果、後半のミステリー部分のテンポの悪さとキャストの弱さで結局、真のプラチナデータの真相の面白さも、水上教授が真犯人であったという衝撃的なクライマックス、さらに天才数学者蓼科早樹とリュウとの物語なども完全に影が薄れてしまった。

東野圭吾原作の映画化はほとんどうまくいっていないと思うけれど、これもまたそんな一本だった気がします。