くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「陽は沈み陽は昇る」「春の鐘」

kurawan2017-08-24

「陽は沈み陽は昇る」
時代を感じさせるロードムービーという感じの一本でした。ため息が何度も出てしまった。公開当時見たらそんなことはなかったという感じがする映画で、その意味でとっても楽しめた。監督は蔵原惟繕

バイクサーキットをパリでこなした主人公西は東南アジアからインドを通って日本へバイクで帰路につく。途中、アメリカ人のバイク乗りポールやフランス人の元ストリッパーティアナと出会い、三人でインドカトマンズ方面を目指す。

途中、現地人とのエピソードや、三人のドラマが展開するというシンプルな物語で、最後はティアナはなぜか病気で死んでしまい、ポールはカトマンズへ西は日本を目指して別れてエンディング。それだけの映画ですが、これも時代の一本ですね。楽しめました。

「春の鐘」
荒はたくさんありますが、結構この映画ははまってしまいました。大人のファンタジーという空気感がとってもいいし、古手川祐子がとっても綺麗で色っぽいし、映像も美しいし、脚本もしっかり書けているのが良かった。やや、物語の構成がちょっとリズムが崩れるのですが、それを脇にしたらとってもいい映画でした。監督は蔵原惟繕です。

美術陶器を鑑定している主人公鳴海の姿から映画が始まる。彼と三宅という大物が夢にしていた美術館が完成し、陶器を移し開館となったのである。しかし、あるホテルで鳴海は妻範子が男と出てくるのと鉢合わせ、問いただすとすでに1年の付き合いだという。鳴海は子供達のために離婚はしないと告げ、夫婦の関係は冷めて行くが、そんなおり、知人の娘で、結婚後不幸な離縁をされた多恵を美術館で雇うことになる。もともと、鳴海に想いを抱いていた多恵は、みるみる鳴海に惹かれ、鳴海もまた多恵に惹かれて行く。

こうして、多恵と鳴海の不倫関係の物語が描かれて行くが、花や陶器、四季の風景などを美しく捉えたカメラアングルがとっても素晴らしいのと、奈良の風情が映画に静かな空気を生み出して行くのがとってもいい。

一方の妻範子は自分の過ちと夫鳴海を愛している自分を思い起こし、次第に嫉妬から狂気のようになっていく。そして、鳴海と多恵が生活する奈良の家に押しかけた挙句鳴海に包丁を向け重傷を負わせる。

病院で横たわる鳴海をみる多恵は、そこに妻範子の存在を認めゆっくり鳴海から離れていく。そして、ひと回り成長した多恵の姿のカットでエンディングとなる。

ラストまで和装ばかりの多恵が、最後の最後で洋装に変身する一方で、ずっと洋装で派手だった典子が最後に和装で二人の前に現れる演出や桜の花びらが舞うカットの演出、奈良の鐘が静かに聞こえてきて夫婦の関係が修復されていく終盤などなかなかのものである。

しかも脇を固める役者がしっかりと物語を支えるので、大人の物語で展開していく様は、やはりまだまだ映画が映画としての力を持っていた時代と言える。傑作とかいう評価ではないものの個人的にはまってしまう作品でした。