「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(アニメ版)
岩井俊二監督原作の名作ドラマのアニメ化。それなりに頑張っていた出来栄えではないかなと思います。脚本に大根仁を参加させ、岩井俊二のほのかなプラトニックな世界を必死でアニメとして映像化しようとした感じの出来ばえで、普通に仕上がった感じです。ただ、やはり岩井俊二の世界は岩井俊二でないと出ません。そこはさすがに残念。
クラスで人気の少女なずなが母親の再婚で引っ越すことになった。そんな彼女は浜辺で丸いクリスタルのようなものを拾う。
クラスメートの典道と祐介がなずなとプールで50メートル競泳をして、なずなは自分の次にゴールした祐介を花火に誘う。ところが、祐介はそれをすっぽかし、代わりに典道が行くことになるが、途中でなずなは母親に連れ戻される。なずなは家出をするつもりで出てきたのだ。その様子を見、たまたまなずなのトランクからこぼれたクリスタルを典道が投げると、なんと時間が遡る。
そして、プール、典道がなずなの次にゴールする世界に変わっていて、なずなは典道を花火に誘う。そして、花火の夕方、祐介を巻いて典道はなずなの言うように列車に乗って駆け落ちしようとするが、追いかけてきたなずなの母親らに連れ戻される。
そこで典道はもう一度クリスタルを投げてやり直す。そしてまんまと列車に乗ったが、今度は途中で祐介らに見つかり、またも母親に連れ戻される。そして再度クリスタルを投げて、やり直す典道。
こうして、冒頭で花火が横から見たら丸いのか平べったいのか調べるために花火大会に行く典道や祐介らクラスメートの行動と、なずなと典道の切ないラブストーリーが繰り返される、まさに岩井俊二の世界観なのだが、何もかも映像にして行くので、賑やかなだけに見えてくる。
最後は結局、なずなは引っ越してしまい、出欠を取ると典道はいなくてエンディングなのだが、綺麗に収めた割に途中が少し残念。でもそれなりに出来上がっていた気がします。
「ストロベリー・ロード」
蔵原惟繕監督の最後の作品ですが、なんともゆるい映画だった。いろんなエピソードが羅列されるようの次々と挿入され、アメリカに移り住んでイチゴ農園を営もうとする主人公の奮闘を描いて行く。
成功した人物の傍らで将来を夢見る主人公が、その雇い主に認められ、やがて自分の農園を手にする。そして現地の女性と出会い恋もする。一緒に働く弟の悩み、苦悩も描かれ、当時の日本の若者の心境も盛り込む。
弟と生き別れになった老人のエピソード、学生運動、ベトナム戦争、移民問題、それぞれどれも中途半端に挿入されては消えて行く。
主人公の農園はとりあえず成功し、アメリカ人女性と結婚してエンディング。途中、現地の日本人女性のキャリアウーマンと弟のエピソードなども入るも結局すん切れで終わったり、なんとも言えなく適当な映画でした。
でも見終わって、どこか当時の日本が、世界が見えたような不思議な感覚にとらわれた。