「未来のミライ」
アニメーション画を駆使したファンタジー色溢れる素敵な作品で、これという話があるわけでもなく、4歳の男の子くんちゃんの家に赤ちゃんが生まれたことから展開するくんちゃんと赤ちゃんのミライちゃんの成長の物語。とにかくほのぼのさせてくれるのですが、どこか身に詰まるほど身近な話が不思議なノスタルジーを生み出してくれました。監督は細田守。
お父さんは建築家でお母さんもキャリアウーマンのくんちゃんの家に赤ちゃんが生まれたところから映画が始まります。病院に入院していたお母さんが今日は帰ってくる。待ち兼ねてそわそわしているくんちゃんのシーンから映画が幕を開けます。
そしてやっと帰ってきたお母さんですが、これまでくんちゃんをちやほやしてくれたお父さんもお母さんもじいじもばあばもみんな赤ちゃんに夢中で、くんちゃんはほったらかしになる。さみしくてわがままを言っても、誰も相手にしてくれず、家のど真ん中にある中庭に飛び出すと、王子様という男が立っている。実は飼い犬で、自分もかつてそんな思いをしたと告白される。
やがて、赤ちゃんはミライと名付けられる。どんどん両親が遠くに見えていくくんちゃん。さみしくなると中庭に飛び出す。ある時、現れたのはセーラー服を着た少女。彼女はくんちゃんの妹ミライの未来の姿だという。
こうしてくんちゃんは、さみしくなると中庭に飛び出し、過去に遡って、幼い日にお母さんに会ったり、若き日のじいじに会ったりして、少しづつ成長していく。
わずかの時が経ち、今日は、家族でハイキングに行く。履いていくズボンのことでわがままを言ったくんちゃんは、みんなが出かけようとするのに反対して、階上へ逃げてしまう。ところが迎えにくると思っているのに、誰もこない。仕方なく一人で家出をし迷子になってしまう。
大好きな列車が走る東京駅に着いたものの恐ろしい電車に引き込まれそうになり、そこに赤ちゃんのミライを発見、身をもって助ける。そこへ未来のミライちゃんが現れくんちゃんを助け家に連れ戻される。
荷物を積み終えた両親がくんちゃんを呼ぶ。くんちゃんはミライのそばに行きバナナをあげる。そしてミライちゃんもくんちゃんと同じく大きな声ではぁいと返事をする。
くんちゃんもミライちゃんを受け入れやっと兄弟、家族になったことを実感して映画が終わる。
全くたわいない話を、イメージの世界でどんどん描いていく。細田守ならではの世界観が展開するのがなんとも心地よい一本。楽しめました。
「あらかじめ失われた恋人たちよ」
典型的なATG映画という空気が満載の一本。物語があるようでなく、演出もなされているのか即興なのかその境目がない。しかし、映画がものすごく身近にに感じる空気感がとってもいい。監督は田原総一朗と清水邦夫。
一人の男が道を歩いている。バスを止めようとするが走り去られて悪態を吐く。
この男がひたすらがむしゃらに道を進む。途中で唖のカップルに出会い行動を共にする。
時にSEXをし、時に全裸で海に飛び込み、平気でスーパーで万引きをする。自由奔放、思いつくままに行動する若者の姿を捉えていく。
アメリカ軍が残した射撃場跡に住み、自堕落な生活を始めるが、どこに向かうわけでもなく、何をするでもない。気が向けば食べ、SEXし、語り合う。
どうやらこのカップルには事情があるらしいがそんな説明などもなく、途中で何やら警察隊に襲撃されて、目を怪我する。
そして三人は何処ともなくまた歩いて行ってエンディング。
なんなのだろうと言える一本だが、素朴に映画を作りたい、見せたいという気持ちが画面全体から溢れ出てくる感じがとってもいい。こういう素直さが失われてきていると思います。