くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「秀子の車掌さん」「怪盗グルーのミニオン大脱走」「奥田民

kurawan2017-09-21

「秀子の車掌さん」
たわいのないお話の映画ですが、やはり撮る人が撮るとなんとも楽しい映画に仕上がっています。小さなバス会社の運転手とバスガイドの物語をテンポよく描いて行く軽やかさがとっても爽やかな映画でした。監督は成瀬巳喜男です。

一台しかバスを所有しない上にオンボロときているバス会社の運転手と車掌。今日もいつものようにバスを走らせていますが、新しいバスを走らせている会社のバスに追い抜かれ、客らしい客もない。

ふとしたことで、名所のガイドを入れてはどうかという案を考えた車掌は早速運転手と相談、社長の許可を得て、その文章を、たまたま近くの旅館に泊まりに来ている小説家に依頼する。

出来上がった文書を練習するのだが、バスが田んぼに転覆してしまう。社長は走っている途中で落ちたことにしたら保険がおりるからと指示するが、運転手も車掌もやりたくなく、その話をしに行くと、いとも簡単に社長も了解。

やがて小説家も東京に帰り、練習したガイドをしながら颯爽とバスが走るのですが、会社では社長がバス会社を閉める相談をしていた。

映画はこれだけのお話です。でも古き日本の田園風景や、乗合バスという今ではなくなった懐かしい風情が満載で、ただそれを見ているだけでも心が癒されます。しかも、リズミカルに話が進むのがとっても楽しい。名作とかの部類ではないのでしょうが、心に残る一本になりました。


怪盗グルーのミニオン大脱走
時間埋め合わせに見た映画ですが、それなりに楽しんでしまいました。

怪盗グルーは悪人を倒す組織にいるが、大失敗をしてクビになる。折しもグルーに双子がいるという話が来て、その双子と、世界一のダイヤモンドを盗むことに。

この展開とミニオンが刑務所に入り、脱走するという二本のエピソードを交互に描きながらテンポよく物語が進んで行く。

ビックリするほどな出来栄えではないけど、散りばめられる、細かいエピソードがとっても素敵で楽しい。こういう娯楽アニメの面白さはアメリカは独特の世界観ですが、見終わって、損をした気がしないから不思議ですね。楽しい一本でした。

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール
妻夫木聡のミスキャストを除いては、オープニングからエン

ディングまで1つの塊になったような見事な面白さの詰まった映画だった。監督は大根仁。この監督の作風は好みではないけど、他にない独特のオリジナリティは本当にすごいなと思います。

奥田民生を崇拝する雑誌編集者のコーロキは、おしゃれなライフスタイル雑誌の編集部に異動になるところから映画が始まる。その歓迎会で、誰からも相手にされなさそうな出だしはややあざといが、話のわかる編集長のフォローが入ってとたんに映画のエンジンがかかる。この演出にまず圧倒される。

そして、仕事で出会ったファッションプレスの天海あかりに一目惚れ、しかも、ちょっとした一言から意気投合し、一気に恋人関係になる。次々とディープキスを繰り返すショットが実にうまく、この辺り水原希子がはまり役である。

しかし何かにつけ空回りし、その度にあかりに拗ねられ、それを取り繕うコーロキ。あかりにはDVの彼氏がいると言われるが、実は同僚の吉住で、その展開からコーロキも吉住と気まずくなる。

猫特集にかかわったコーロキは、そのエッセイストとの展開で、京都デートを約束していたあかりともすれ違い、とうとう別れる流れになる。しかもコーロキのLINEが吉住に盗み見されていたらしい疑いを持ったコーロキは、わざとあかりのパーティに行く約束をし、おびき出す。

ところがやって来たのは吉住だけでなく編集長も来て、実は編集長ともあかりは関係があったことがわかる。逆上した編集長は吉住にカッターナイフで切りつけるし、さらにあかりに襲いかかったのでコーロキは編集長を酒ビンで殴り倒す。最後にあかりはコーロキに、あなたが最後ねと言って突き飛ばす。結局それぞれの男の好みの女を演じていただけのあかりに三人の男は翻弄されていたのである。

そして三年、コーロキはあれ以来自らの生き方を考え、名前を変えて敏腕編集者となっていた。猫好きエッセイストのパーティでちやほやされた後、立ち食い蕎麦屋で蕎麦を食いながら、ひと回り成長した自分を見つめるコーロキの姿があった。このエンディングが実にうまい。

物語の展開は、ひとかたまりにまとめあげて、描くべきメッセージはさりげなくラストに盛り込む。この才能は、独特だなと思います。映画に勇気付けられる。そんな作品でした。