くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あさがくるまえに」「俺たちポップスター」「50年後のボ

kurawan2017-09-20

あさがくるまえに
映画としてなかなか見せてくれる作品でした。絵作りが実に上手いので、どんどん引き込まれていきます。監督はカテル・キレヴェレという人です。

明け方前のベッドで恋人たちがまどろんでいる。男性が起き上がり、窓から下に飛び降りる。そして自転車で走り出す。途中からスケートボードに乗った青年が合流、さらに車で若者が合流、三人で海に行きサーフィンをする。一通り終わって車に乗り帰路へ。

しかし、目の前の道路がいつの間にか海に変わり、何かの衝撃。事故を起こしたようである。

カットが変わり、一人の女性のところに電話がかかる。急いで病院へ行くとそこには脳死状態の息子シモンがいた。三人の若者が事故を起こしたが、彼だけベルトをしていなかったのだという。そして、病院で一人の移植コーディネーターが面談し、臓器移植に同意してほしいという。一旦は断ったのだが、恋人ジュリエットの電話が入り、そのあと何があったかは描かないが、別居中の夫と相談、了解をする。

シモンとジュリエットの馴れ初めをさりげなく挿入するのが実にタイミング良くて上手い。

ここに一人の女性クレールが息子に連れられ弟の新居を見に行く。彼女は重度の心臓疾患で移植しか命を繋ぎ止める方法はないと医師に言われている。彼女には女性の恋人がいて、その恋人のピアノコンサートに行き、帰り自分の家に寄って束の間の抱擁をする。

画面は移植コンサルタントの仲介会社、深夜。シモンの臓器提供の情報とそれに適合する女性クレールの情報がマッチング、速やかに手術の段取りへ進む。

こうして、二人の人生が描かれ、その仲介する人物も描かれ、物語は移植手術のクライマックスへ進んで行く。

シモンの心臓が取り出される。コーディネーターの計らいで、血管遮断の直前に曲を聴かせる。それはシモンの恋人ジュリエットが選んだ波の音だった。冒頭でシモンと一緒にいたのはジュリエットだったのだ。

そして空輸、クレールがベッドに横たわり開胸。そして無事移植される。再鼓動を始める心臓。シモンの遺体が丁寧に拭き清められる。クレールがベッドでゆっくりと目を覚ます。生きていたことに喜びを隠せない笑みが浮かびそうで浮かばない顔のアップで暗転。

シモンが窓から降りるカットを終盤に繰り返したり、クレールが消毒シャワーに行く前に、思わず泣いてしまったり、映像作りのうまさもさることながら、物語展開のうまさも丁寧で、見ていて隙がない。いい作品でした。


「俺たちポップスター」
いわゆるフェイクドキュメンタリーというタッチで、ミュージックドキュメントをおちょくって行くコメディ映画である。

幼馴染のコナーたちは四人でバンドを組みデビューをする。そして成功して行くが突然コナーがソロデビュー、あっけなく解散。コナーはみるみる人気が出て、自分のドキュメンタリーを作ることに。ところがセカンドアルバムは大こけし、どんどん落ち目になって行く。

やがてすっかり落ち目になった彼らに有名ショーの最後を務めてほしいと依頼があり、久しぶりに四人が集う。

これという奇抜な面白さもなくアメリカ映画らしい品の悪さで突っ走って行くイメージのみの悪ノリ映画ですが、やはりステージシーンは上手いですね。

お気楽な映画という一本でした。


「50年後のボクたちは」
とってもテンポのいい爽やかな名編でした。こういう映画作りができるのはやはり細かい感性をお持ちなのでしょう。監督はファティ・アキンです。

血だらけの少年、主人公マイクが事故を起こしたのか救急車に乗せられて行く。チックという名を呼んでいるが、友達のようである。

カットが変わると、ドイツのハイスクールで、作文が披露されている。マイクは同じクラスのタチアナに惚れているが、いかんせん、目立たないマイクは鼻にも掛けられていないようで、バカンスが近づき、タチアナの家でパーティがあるようだが呼ばれていない。マイクの母親はアル中で、時折施設に入って療養している。父親は不動産開発をしていたが事業は思うほどうまくいっていない。会社の若い女の子と不倫関係のようである。

ある時、チックといういかにも危ない転校生がやってくる。マイクも距離を置いていたが、タチアナのパーティにも呼ばれず、母親は療養所へ行き、父親も女と遊びに行って一人ぼっちになったこともあり、チックはマイクの家に遊びにくる。しかもオンボロ車を盗んできて。

そして二人は車に乗り旅に出ることに。

あとは、ひたすらのロードムービーなのですが、さりげなく挿入されるエピソードがとって素朴で楽しいのでどんどん引き込まれる。しかも、聞きかじりの知識でピンチを乗り越えようとするが、実戦に間に合わず、そんな時入ってくる何気ない助け人が絶妙の味を見せる。

途中でプラハに行こうとしている浮浪者のような少女を乗せたことで、マイクは密かな初恋を実感するという展開もとっても素敵。三人はある廃墟の観光地に行き、そこで三人のイニシャルを刻む。このシーンの画面が素晴らしい。

彼女と別れたあと、マイクとチックは旅を続けるが、沼地を通る時にチックが怪我をし、代わりにマイクが運転することになる。ところが、夜の道で豚を運んでいるトラックに追い越され、追い抜き返そうとふざけてるうちにトラックが横転、そのまま突っ込んで事故を起こしてしまう。チックは施設送りになるからとその場を去って逃げ、マイクは冒頭のシーンにつながり病院へ行く。

退院したマイクは学校へ行くが、途中パトカーに乗せられ、チックのことを聞かれるままに学校へ送ってもらう。パトカーから降りてきたマイクへのクラスメートの視線が変わり、
タチアナもマイクに手紙を回して興味をそそるが、マイクはすでにひとまわり大人になりタチアナよりチックのことを心配していた。

エピローグ、三人が廃墟で、約束したセリフがかぶる
「50年後の興味をここでもう一度会おう」
いいラストである。これが映画作りだと思います。