くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あいつばかりが何故もてる」「酔っぱらい天国」「ナラター

kurawan2017-10-12

「あいつばかりが何故もてる」
ゆるゆるの物語で、こんなことあるわけないやろと思うのですが、これが当時の映画の良さであると思うし、本来映画館に足を運んで、こんなありえないフィクションを楽しんで、なぜかほんのりして劇場をでる。これでいいと思うのです。

東京下町でスリをしながら、バーテンをしている主人公、たまたま街で写真家気取りの女子大生に写真を撮られ、それが縁で様々な事件に巻き込まれる様を描くたわいのない物語。

気のいい刑事や、ちょっとクセのあるババアや小悪人やら、とりとめもない軽いタッチの人情劇に、あっさりした恋物語も絡み、松竹色丸出しで展開する様が心地よいほどに明るい。

肩の凝らない映画といえばそれまでですが、これといって中身もなくさらっと描く映画の世界こそが娯楽の王様だった頃の息吹でしょうね。その意味で、楽しかったです。


「酔っぱらい天国」
いかにもコメディ風に始まるのだが、途中から支離滅裂、何をどう描きたいのかというより、物語が破綻して行く。まるで制作会社に当て付けでもしているのかと思えるような展開になって行く。監督は渋谷実、ちゃんとした人なのに、これはなんなのだ。後味の悪いことこの上もないのである。ある意味珍品。

酒を飲むと我を忘れて酔っぱらう主人公のおやじ。飲み友達と呑んだくれては警察の厄介になる。一人息子と二人暮らしで、息子は恋人がいて、近々結婚するという。

そんなある夜、息子は友達と飲み歩いていて、有名な野球選手と出会い、酒の勢いで友達と選手が喧嘩をしたのに巻き込まれ、バットで殴られて入院する。選手とのことを穏便にしようと、監督やら上司やらが父親を酒の席に呼んで飲ませていい気持ちにさせたはいいが、その夜、息子は死んでしまう。

もうこのあとは無茶苦茶で、息子の恋人は野球選手といい仲になるし、飲んだくれの父親は息子の代わりに息子の恋人だった女性に一緒に暮らそうというし、その女の実家は非常な貧乏暮らしだし、主人公の親父の近くの親戚も皆アル中だし、もう無茶苦茶である。

実はみんな夢オチなのではないかと途中まで思ったが、どうやらそうではなくて、えらく糞真面目な展開になっていって、主人公の親父が野球選手に復讐をするためにナイフを買って、選手のところへ行くが、人違いをして警察に捕まり、酒の席だからと叫んでエンディング。

なんだこりゃという映画である。やけくそと言うほかない。こういう珍品も珍しいものである。


ナラタージュ
演出はしっかりしているし、脚本も丁寧に仕上がっているのですが、やはり役者が弱いとこうなってしまうのかなとなる典型的な映画でした。淡々と進むプラトニックな展開は最後までしっかり見せてくれるし、決して退屈な瞬間はない。それより、不思議なくらいに物語に引き込まれているのも確かですが、登場人物が生きて見えてこないので、心に迫る何かが足りないままに終わってしまう。監督は行定勲です。

主人公の工藤泉は映画の配給会社に勤めているようである。この日も残業で残っていると同僚が帰ってくる。泉が手に持っていた懐中時計の話になり、泉は高校時代、愛した一人の男性葉山先生のことを回想して物語が始まる。

大学に入った泉はある時、高校時代の演劇部の顧問葉山先生から依頼を受けて高校の演劇部にやってくる。かつて、葉山先生に誘われて演劇部に入った泉だが、自分を支えてくれた葉山先生にいつの間にか惹かれ、それが恋かどうかわからないままに卒業していたのである。

一方、別に呼ばれた小野という大学生は次第にいずみに心惹かれるようになって行く。しかし、泉の心には常に葉山のことがあった。葉山は妻と別居状態で、かつて、妻が精神的に参って自宅の物置に火をつけたのをきっかけに別居していた。しかし、常には山の心には妻のことがあった。にもかかわらず、自分を頼ってくれる泉に次第に心が動くようになる。

一方、小野も泉を思い、ある時のきっかけで付き合うようになる。しかし、泉はなぜか葉山のことが心から離れなかった
そしてやがて小野と破局、葉山の元に戻る泉だが、そんな折葉山は妻とやり直すことを決意していた。

そして葉山は、泉と一度だけ体を合わし、父からもらった懐中時計を泉に譲り、泉は葉山の元を去る。

ほとんど、最後までプラトニックなラブストーリーが展開、その歯がゆさが淡々と描かれる様はなかなかの仕上がりになっていますが、葉山の教え子の自殺などのドラマ部分が際立たない。細かい背後のエピソードがしっかり表現し切れていないせいなのですが、あえて淡々と平坦に作られたのでしょうが、やはり演技力の強さが必要だったかとおもいます
いい映画ですが、もう一歩。