「ヴェノム」
話の展開がスピーディなのですが、どうもこの手のシリーズは食傷気味で、キャラクターが変わってもそれほど斬新さもなく、まぁ普通の娯楽の時間つぶし程度にしか楽しめなかった。監督はリーベン・フライシャー。
一基の宇宙船が地球に向かって飛んでいるが、突然、態勢を崩して地球に不時着。この宇宙船はライフ財団が地球外生命体シンビオートを捕獲して、その生命体と同化して宇宙に移住する計画のために飛ばされたものだった。
しかし、不時着した宇宙船からは四体あるはずの生命体が三体から見つからず、一体が乗組員に同化して脱出するところから物語が始まる。
ここに、しがないジャーナリストのエディが、恋人アンが掴んでいた極秘資料から、ライフ社が人体実験を行っているという情報を得てライフ社に侵入する。ところが、ライフ社は浮浪者による地球外生命体との同化実験を繰り返していてエディはたまたま知り合いの浮浪者が捕獲されているのを発見、助けようとするが、どうかしていた生命体がエディに寄生する。
エディは、望まずして生命体と同化しながら、生命体ヴェノムもエディの体を気に入ったことから妙な連帯意識が生まれる。
一方、ライフ社には、脱出した生命体が宿主を点点として、社長のドレイクに寄生。この寄生した生命体は最強で、残りの仲間を呼び寄せるべくライフ社のロケットを発射しようとする。それを阻止するためにエディとヴェノムが戦いを挑むのがクライマックス。
アメーバのような生命体が人間と同化したり変幻自在に変化する様がCGで描かれ、それによるアクションが見せ場になるが、今更目新しくもなく、弱点の高周波の音や炎というのもそれほど効果的に使われるわけでもない。
結局ハッピーエンド、エディはヴェノムといいように共同生活になって映画が終わる。まぁ、ネタ切れのシリーズもまだあるのかという主人公という感じです。面白くないわけではないけれど、何を期待するものもない映画でした。
原作は知りませんが、脚本が悪いと、こういう映画になるという典型的な作品。サスペンスにもホラーにもドラマになり切れていまい出来栄えがなんとももったいない。監督は中田秀夫。
主人公の稲葉麻美は富田誠という彼氏と付き合っている。この日もお互い親密なメールのやり取りをしていたが、プレゼン先に急いでいた富田はタクシーの中にスマホを忘れてしまう。ところが程なくして麻美に、拾い主から連絡が入り、麻美はカフェに預けてもらった富田の携帯を受け取りに行く。
ところが、この携帯を拾ったのはパソコンのスキルのある異常者だった。一方、髪の長い女性が殺される連続殺人事件が起こっていて、毒島刑事と加賀というパソコンスキルのある新人刑事が捜査をしていた。このキャラクター紹介がいかにも陳腐。さらに携帯を落としてから不審なメールなどが麻美に降りかかり始めるホラー感の描き方も実にありきたり。
さらに、加賀が、もしかしたら真犯人なのというフェイクもとってつけたようで適当。もう少し見せ方、描き方があるだろうにというほどあざとい。
やがて、麻美の携帯に不審なメールが入り始め、SNSにも、身に覚えのない写真などアップされ始めるが、この辺りの畳み掛けのリズムも全然である。そして、その出来事から富田と麻美の関係が崩れる様も全然緊張感がない。
そして、麻美に絡んできたパソコンセキュリティ専門家という浦野という人物はいかにも最初から怪しいのに、安易に自分の携帯を渡すあたりの適当さはちょっといただけない。
おそらくと思っていたら、やはり浦野が真犯人で、麻美が拉致されるのだが、助けに行った富田の前で、麻美の真実の姿を告白させる下りも、もう見ていられない。
麻美のかつてのルームメイトの山本美奈美は自殺したのだが、実は自殺したのは麻美で、美奈美が麻美に成り代わり麻美の人生を生きてきたことがわかる。麻美は株取引に失敗し、美奈美の名前で多額の借金をし、美奈美の人生も壊した。そこで自ら自殺し、麻美としてやり直すように提案していた。
というこの謎解きは、果たして必要?原作があるので仕方ないものに、脚本の組み立ての弱さがいたるところで露呈してくる。
犯人は麻美を拉致し、殺す寸前で富田が踏み込み、さらに毒島らも駆けつけて大団円。わあ、なんとありきたり。あれだけ宣伝してた割にこの程度かという仕上がりにがっかりしてしまった。
結局、嘘をついていた麻美は富田から離れるが、かつてプロポーズしたプラネタリウムで再会しハッピーエンド。さすがにあの宣伝でこの出来栄えはないよなと思う映画だった。