くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ノートルダム 炎の大聖堂」「ザ・ホエール」

ノートルダム 炎の大聖堂」

2019年のノートルダム大聖堂の大火災をIMAXカメラとVFXを駆使して描いた作品ということで見に行った。映画全体のほとんどが消化活動シーンを描いていて、個別のストーリーは存在せず、火災に遭遇した消防士たち、群衆、をひたすら迫力の映像で描いていく。クライマックスの北の鐘楼の消化シーンのみドラマティックな演出がなされているが、後は、信じられない不運の偶然が重なった惨事を丁寧に描写したなかなか見応えのある一本でした。監督はジャン=ジャック・アノー

 

一人の黒人の警備員が赴任してくるところから映画は始まる。月曜日のミサが行われようとするノートルダム寺院の姿、訪れる大勢の観光客の様子、補修のために組まれた巨大な足場で作業する作業員たち、それぞれを描写しながら、心無い喫煙シーンやあまりに古くなった建物内部に存在するゴミなどを写し、警備員の事務所で警報が鳴る。係の男が見にいくが、火災の気配が見当たらず誤報と判断するが、背後に煙が上がっていた。警報が鳴り続け、観光客が煙が上がるノートルダム寺院の写真をネットにアップしたところから、一気に現実であることがわかる。

 

消防隊が出動するも大渋滞と野次馬に阻まれ前に進めない。みるみる火災が広がり、ようやく駆けつけた最初の消防車が消化にあたるが、内部は崩れ落ち、鉛が溶け始める。少しづつ消防隊が集まってくるが、尖塔は崩れ、全体が崩れる危険が見え始め内部に入れなくなる。そんな中、国の至宝である「キリストのいばらの冠」を救出すべく奔走する隊員や学芸員たちの姿を中盤に置き、北の鐘楼が崩れる可能性の中、手も足も出なくなったものの一人の隊員に提案で、北の鐘楼を消化すべく決死隊が組まれ突入、見事消化して、建物全体も鎮火、映画は終わっていく。

 

水が飛び散り蒸発する映像や、鉛が次々と滴り落ちる場面、観光客が避難する直前一人の少女がマリア像に祈りを捧げるショット、スプリット画面による緊迫したシーン、実写と特撮を織り交ぜた構成で、ラストまで画面に釘付けになります。決して面白いという表現をしてはいけないと思いますが、見た甲斐がある一本でした。

 

「ザ・ホエール」

監督はダーレン・アロノフスキー、まさに彼らしいシュールで難解な空気感を醸し出しながら、ストーリーはシンプルそのもので、舞台劇らしいワンシチュエーションを徹底して描いていく。しかし、あちこちに伏線で貼られる宗教観の問題や、現実に存在する親子感の問題、男女の恋愛観の問題、さらには世間一般の視線などを一つ一つ取り上げていくと、映画自体が難解そのものだったように思えます。正直、前半何度か意識がなくなったのは、考えすぎたゆえかもしれません。ただ、詰め込みすぎたメッセージが少々やり過ぎ感があったとも思えました。

 

オンライン授業をしている画面、しかし教授側はカメラが故障していて顔を出せないと言っている。実は、教授でありるチャーリーは200キロを超す巨体で動くことができないのだ。玄関で呼び鈴が鳴り、招き入れるとやってきたのはトーマスという青年。彼はニューライフ教会という新興宗教の勧誘に来たのだという。突然苦しんだチャーリーはトーマスに読んで欲しいと何かの原稿を渡す。それは「白鯨」に関するエッセイだった。なぜかトーマスがそれを読むとチャーリーは落ち着く。そこへリズという看護師がやってくる。どうやらチャーリーは過食によって間も無く死んでしまうらしく、病院へ行くように進めるもチャーリーは拒絶しているらしい。何もできず呆然とするトーマス。

 

チャーリーにはかつて愛した男性アランがいたが、アランは宗教感から、男性を愛したことに悩み自殺したらしい。そのショックでチャーリーも自死したいのだができず、過食によっての死を望んでいた。リズはアランの妹である。窓辺にいつもピザが配達され、時折リズがやってきては様子を見る。なぜかトーマスもそれから何度も訪ねてきて勧誘しようとする。トーマスの属するニューライフ教会の主任牧師の養女がリズで、リズはニューライフ協会を憎んでいる。トーマスは、過去に金を盗んで逃げこの地へやってきた経緯がある。

 

チャーリーには、心残りがあった。娘のエリーが八歳の時、アランを愛して家族を捨てた過去があった。チャーリーは娘のエリーと再会したかった。エリーが訪ねてくる。学校で成績が悪く落第しそうなのでエッセイを書いてほしいとチャーリーに頼む。それは「白鯨」に関するものだった。エリーは、何かにつけてチャーリーの写真を撮る。実は、エリーは自らのSNSにチャーリーの巨体をアップして罵倒していた。さらにトーマスの盗みの告白も録音して、トーマスの家族などに送ったりする。そのことをチャーリーに知らせたのは別れた妻だった。チャーリーは、自ら稼いだ金は全てエリーに送るようにしていた。

 

しかし、エリーの所業によってトーマスは救われる。盗みに関しては、所詮金のことじゃないかと許されたのだ。トーマスは気持ちが晴れて、故郷へ帰っていく。エリーは、チャーリーに書いてもらったエッセイを提出したが、それで落第したと駆け込んでくる。しかし、そのエッセイはチャーリーが書いたのではなく、八歳の時にエリーが書いたものをそのまま出したのだとチャーリーはいう。そして、チャーリーはオンライン授業で、自らの姿を晒す。

 

エリーがエッセイを読む。チャーリーは、巨体を起こして立ち上がりエリーの方へ歩いていく。そして光が当たり、チャーリーの体がふわりと浮き上がったような映像でエンディング。

 

こんな感じの物語だったと思いますが、チャーリーの室内だけの会話劇で、次々と人が入れ替わり入ってきては瀕死のチャーリーと会話するのを繰り返していきます。二時間足らずの中に凝縮された会話劇と伏線が濃密すぎて、わかりやすく感想を書けない映画でした。