くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マイ・サンシャイン」「メアリーの総て」

「マイ・サンシャイン」

1992年ロサンゼルス暴動を背景に描かれるドラマですが、全編バタバタしていて、まとまりのない作品で、どこに視点が置かれているのかわからない映画でした。監督はデニズ・ガムゼ・エルギュベン。

 

一人の黒人少女が歩いている。とあるドラッグストアに入り、ジュースをバックパックに入れてお金を払おうとレジに行くと、店員がいきなり万引き呼ばわりをし、挙げ句の果て銃を向ける。そして逃げようとする少女を撃ち殺し映画が始まる。ショッキングなオープニングと、続く裁判映像。この導入部はかなり優れています。

 

一方、ロドニー・キング事件で警官が黒人をリンチする映像から裁判沙汰になった事件がテレビを賑わせている。黒人少年たちが好き勝手に騒いでいる。ここに犯罪者の子供達で身寄りのない黒人を引き取り世話をしているミリー。今日も忙しい朝がやってきて、走り回るように子供達の世話をしている。一人正義感のある真面目な少年ジェシーが取りまとめて手伝っているが追いつかない。

 

隣には白人のオビーという男がいて、ミリーの預かっている子供達が騒ぐと切れたように罵倒してくる。そんな日々、ロドニー・キング事件で起訴された警官四人が無罪となり、ロサンゼルスでは黒人たちの暴動がエスカレートし始める。

 

そんな中で、ミリーはふとしたきっかけでオビーと親しくなり、暴動がエスカレートしていく中、預かる子供達を保護したりして一夜の行動をともにするのがストーリーの中心になる。

 

と思うのだが、ジェシーと街で拾った少女の話やあれやこれやが絡んできては中途半端に処理されて、全体がまとまらない。一体、ロドニー・キング事件のテーマなのか、ミリーたちのヒューマンドラマなのかはっきりしないままに、映画が終わってしまう。

 

映像の編集はスピーディなのだが、本編に入ってからひたすらバタつくだけに終始してしまうので、結局、わかったようなわからないようなお話で終わりました。

 

「メアリーの総て」

これは良かった。ヒューマンドラマとしても見事に心の変化、それによる奇跡の物語が見事に描かれていたと思います。特に主演のメアリー・シェリーを演じたエル・ファニングが抜群に良かった。クライマックス「見よ!怪物に命が宿る」というセリフ、そしてそれに続くシェリーとのハッピーエンドに胸が熱くなってしまいました。監督はハイファ・アル=マンスール

 

主人公メアリーが墓地でいつものように物語を綴っている場面から映画が始まります。継母の呼ぶ声に父が経営する書店に戻るメアリー。妹のクレアたちに創作したお話をするメアリーだが、継母からは疎まれている。

 

父も亡き母も作家でそれなりに名声もあるものの、生活はそれほど豊かではない。ある時、売り出し中の詩人でイケメンのパーシー・シェリーと知り合う。メアリーは一目で惹かれ、やがてシェリーはメアリーの父の弟子として出入りするようになる。

 

メアリーはシェリーと恋仲になるが、実はシェリーには妻子があった。自由恋愛を唱えるシェリーとメアリーは結婚することなく愛を育みやがてメアリーは妊娠。世間の目もあり家を出ることになったメアリーは妹クレアとシェリーと暮らすようになる。

 

しかしまもなくしてシェリーはクレアとも親しくなり、さらにシェリーは父に勘当され無一文となる。娘クララを生んだメアリーだが、ある時取り立て屋から逃げることになりシェリーたちは雨の中夜逃げ、その中で娘のクララは死んでしまう。メアリーは失意の中に暮らすが、そんな時クレアは有名な詩人バイロン卿と知り合う。

 

女たらしのバイロン卿はすぐにクレアとも親しくなり、クレアは妊娠する。そしてバイロンシェリーたちを自分の別荘に招待する。そこにはバイロンと親しい医師のポリドリがいた。

 

ところがシェリーたちがついて間も無く数週間に渡る雨が続き、シェリーたちは退屈の極みとなる。ある時バイロンの提案で、それぞれが怪奇物語を書くことになる。ポリドリは以前から温めていた吸血鬼の物語を、メアリーは巷で噂になっていた電気による生命の復活をテーマにしたフランケンシュタインの物語を生み出す。

 

しかし、メアリーとシェリーの仲は冷めてしまい、一方クレアもバイロンに捨てられ、メアリーとクレアは父の元に戻って来る。そこでメアリーはフランケンシュタインの物語を完成、出版しようとするが、当時女性がそういう怪奇物語を書くことへの偏見も強く、シェリーの冒頭文と匿名を条件に初版が出版される。

一方、ポリドリの吸血鬼の話はバイロンの名で出版される。

 

誰もがシェリーが書いたものと噂したが、初版を読んだメアリーの父は娘の作だと確信、自分の書店で出版披露会を行い、そこに名だたる人物を招聘、さらにシェリーも呼ぶ。

 

物陰に隠れるメアリーの前で、パーシー・シェリーは、「フランケンシュタイン」の作者はメアリーだと明言する。

 

やがてメアリーとパーシーは正式に結婚した旨のテロップ、ポリドリは最後まで作者と公表されず自殺したというテロップが流れ映画が終わる。

 

パーシー・シェリーの姿を怪物に重ね合わせ、自分の人生の悲劇を組み入れた「フランケンシュタイン」の物語は言うまでもなく小説として唯一無二の完成度を誇る傑作として読み続けられている。と言う背後のメッセージが見事に描ききられた映画でした。ラストでメアリーが呟く「見よ!怪物に命が宿る」と言う、おそらく「フランケンシュタイン」の中の一節が胸に突き刺さってきます。本当に良かった。