くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」(IMAX HFR 3D)「クライング・ゲーム」(デジタルリマスター版)

アバター ウェイ・オブ・ウォーター」

監督のジェームズ・キャメロンが、通常の倍のビットレートHFRで描いた大ヒット映画の続編。正直、映像アトラクションという感じの作品で、観客のことを考えずに描く192分は正直ちょっと長い。しかもその長さの中に詰め込まれるドラマはほとんどなくて、脚本はシンプルそのもの。ただHFRの謳い文句通り3Dにも関わらずほとんど目が疲れないし、圧倒的な映像に陶酔感さえ覚えてしまいます。革新的な映像技術を見せつけたという意味で、海洋シーンが好きな監督の自己満足だったのではないかとさえ思ってしまいます。クライマックスは「タイタニック」だし、中盤にいかにも捕鯨非難するような映像もちょっと鼻につきました。とはいっても、ここまでの映像作品を現実にしたジェームズ・キャメロン監督の才能には拍手したいと思います。

 

パンドラで日々を送る元海兵隊のジェイクと愛する妻ネイティリ。二人の間には子供達も生まれ平和に暮らしている。しかし、執拗にジェイクを倒そうとするスカイ・ピープル=人類のクオリッチ大佐は、リコン計画の元でナヴィと人類の混血の姿リコビナントとなって意識をバックアップし、ジェイク達を求めてパンドラにやってくる。身の危険を感じたジェイクらは、森を捨てて海の民族のもとに身を隠そうとする。

 

海の民のもとで、ジェイクの子供達も人間的に成長していくが、クオリッチ大佐らは、とうとうジェイク達を発見、海の民を交えての人類とジェイク達の壮絶な戦いが幕を開ける。登場人物それぞれの関係の中でのドラマは描かれるが、あまりに映像が美しすぎて、そこに視線が注がれてしまう。全く途切れることなく次々とため息の出るような映像が氾濫、ジェイクの子供達らの苦悩や父と子の確執、人間とナヴィとの混血であることの悩みなどところどころに描かれるものの、全体の尺が長すぎて希薄になってしまった感じです。

 

ナヴィになるべくジェイクらと行動を共にしていたスパイダーは、実はクオリッチ大佐の息子であったり、スパイダーの母を殺した矢はネイティリの放ったものらしい等の描写も散りばめられ、さらに続編を予想させる展開もある。人類は、死にゆく地球を離れてパンドラへの移住を急いでいるという背景も描かれていく。巨大な鯨状の生き物タルカンを捕獲して、老化防止のエキスアムリタを手に入れようとする人物も登場、いかにも環境問題を見せていますという後半の出だしあたりは、この作品のテーマかもしれませんがちょっと鼻につきます。

 

ジェイクはクオリッチ大佐との戦いに勝つものの、巨大な捕鯨船の下敷きになり、海に沈んでいく。それを助けに息子が駆けつけ、一方、ネイティリも娘と一緒に逃げているが、捕鯨船の中で瀕死の状態になる。あわやというところで助けに来たのは海洋生物エイワと会話ができる不思議な娘キリだった。こうしてジェイク達もネイティリ達も助かるが戦闘の中で長男ネティヤムは命を落としてしまう。

 

スパイダーは、一時は海の底に沈んだ父クオリッチ大佐を助け出す。ジェイクらは海の民に受け入れられる。こうしてジェイクらの家族、スパイダーの親子の物語は一旦幕を下ろす。

 

とにかく、映像が凄すぎて圧倒され、背後に忍ばせている環境問題や家族の絆の物語は、若干隠れてしまった気がしないではない。もう少しストーリー部分を研ぎ澄ませば傑作になりそうな一本ですが、全五部作らしいので、これからの展開を見てからということになりそうです。でも、素晴らしい映像作品でした。

 

クライング・ゲーム

これはいい映画でした。傑作とかいうのではなく、とっても映画らしい洒落た秀作。ゲイを扱ったラブストーリーなのですがどこかとっても純粋な愛を感じさせてくれるから良い。こういう映画はやはりイギリスですね。見て良かった。監督はニール・ジョーダン

 

橋の下から遠くに遊園地を臨む画面、心地よい音楽とタイトルが被って映画が始まります。カメラがその遊園地に入っていくと一人の黒人ジョディが女の子の手を繋いであちこち連れ回している。ジョディがその女の子といちゃついて倒れ込んだところへ、さっきから周りを彷徨いていた男達が襲いかかり、ジョディは拉致される。実は男達はIRAの組織の人間で、逮捕された仲間を救出するために軍人のジョディを拉致し、交換の交渉をしようとした。連れ回していた女もジュードというIRAのメンバーだった。

 

顔に布を被せられ、森の中の小屋に拉致されたジョディをファーガスという男がみはることになる。しかし、もともと心が優しいファーガスは次第にジョディと心が通じ始め、布を外してやったりするが、甘い態度を取るファーガスにリーダーのピーターやジュードは厳しかった。いずれ殺されると判断したジョディは、ファーガスに自分の財布の中の写真を見せる。そこには一人の女性ディルがジョディと映っていた。もし自分が殺されたらロンドンのミリー美容室にいるディルに会いに行き、愛していたと告げてほしいという。

 

交渉が進まない中、ピーターはジョディの処刑を明日の朝と決めてファーガスにその執行を指示する。翌朝、ファーガスはジョディに銃口を向けるが撃てない、ファーガスは逃してくれと言い走り出す。後を追うファーガスだが後ろから撃つことができないまま追いかけていくが、ファーガスは道路に飛び出し、彼を救出に来た軍のトラックに撥ねられて死んでしまう。ファーガスはその場を逃げ、しばらくしてロンドンで仕事に就く。そして、ジョディが話していたミリー美容室に行きデイルと会う。

 

美容師の傍、メトロというバーで歌手をしたりして生活するディルには付き纏う男がいた。ファーガスはジミーと名乗ってデイルと親しくなり、付き纏っている男を追い払ってやる。デイルの部屋にはジョディの写真が沢山あった。二人は次第に惹かれ始め、とうとう、ディルに部屋に行ったファーガスは、抱き合うためにデイルの服を脱がせていく。ところがデイルは男だった。ショックでその場は飛び出してしまうファーガスだが、後日気を取り直してデイルに謝る。

 

そんな時、ファーガスが家に戻るとジュードがいた。ジュードとピーターはあの場を脱出し、次のターゲットである判事を殺すべく計画を立てていた。そしてその執行をファーガスに指示する。一方ジュードはファーガスのそばにいるデイルに必要以上に嫉妬し、下手をすると殺しかねないようだった。危険を感じたファーガスは、ディルに男の格好をさせ、ホテルで待つようにいって、ピーターらと、ターゲットの最後の準備に向かう。

 

ところが戻ってみるとデイルは勝手に部屋を出ていた。理由がわからないから家に帰るというデイルとデイルの部屋に帰ったファーガスは一夜を過ごすが、翌朝、デイルはファーガスをベッドに縛り、ファーガスのピストルを手にする。判事暗殺の決行の朝だった。ファーガスを待ちくたびれたピーターらは、強引に判事を撃ち殺し、ピーターはボディガードに撃ち殺される。ジュードはデイルの家にやってきたが銃を構えていたデイルに撃たれ死んでしまう。ファーガスはデイルを逃し、自分が銃を握って警察を待つ。

 

逮捕されたファーガスに面会に行ったデイルに、ファーガスはかつてジョディが話してくれたサソリとカエルの話をする。こうして映画は終わります。

 

物語はIRA兵士の活動という物騒な流れながら、いつのまにかラブストーリーからサスペンスに変わり、最後はとってもピュアなエンディングで幕を閉じる。背後に流れる曲のセンスもいいし、脚本に書かれたセリフの数々もとってもオシャレで、非常に上品な作品に仕上がっています。本当に珠玉の秀作という評価がぴったりの一本でした。