「あの、夏の日〜とんでろじいちゃん〜」
大林宣彦監督の成功作品の一本という感じで、とにかくファンタジックでノスタルジー満載の傑作でした。ラストはじんわりと涙と熱い感動に包まれてしまいました。
主人公の少年由太の紹介がとってもテンポのいいカットで描かれるオープニングにまずすっかり引き込まれてしまう。そして夏休み、尾道の祖父がどうやら最近ボケが来たようで、奇妙な行動を繰り返すらしいからその監視役として行くよう両親から勧められ尾道にやってくるところから物語が始まる。
着いた途端、煙に巻かれるようにおじいちゃんに翻弄されて行く由太。目を閉じて何やら奇妙な呪文を唱えるといつのまにか、おじいちゃんが少年時代の懐かしい世界に放り込まれる。この展開を繰り返し、かつておじいちゃんの子供時代のほのかな初恋や、お寺の弥勒様の小指を壊したいたずらの真相などが描かれて行く。
素朴な特撮で描かれるファンタジックな映像と、懐かしい子供時代をほんのりと描くノスタルジーにどんどん引き込まれ、やがて、おじいちゃんは死んで行く。
なんとも言えない傑作。とっても好きになる映画の一本に出会いました。こういう作品を作ると大林宣彦監督は実に上手いなと思います。見て良かったです。
「ふたり」
これはいい映画でした。名作という感じの爽やかな成長の物語。しんみりと染み渡るストーリーに引き込まれました。監督は大林宣彦。やはり尾道を舞台にするとこの人は実にいい映画話作りますね。
坂道、モノクローム、二人の少女が降りてくるシーンから映画が始まります。主人公美加と姉の千津子である。
カットが変わると美加は中学生。雑然とした部屋の中で探し物をしているシーンに始まる。優しい両親と暮らしているが、姉と登校の途中姉が事故で死んでしまう。そのせいで母の治子はノイローゼ気味になってしまう。仕事が忙しい父雄一もなかなか家にいられない。
ある時、美加の前に姉が幽霊として現れる。こうして揺れ動く思春期の美加は姉との会話を続けながら少しづつ成長して行く。
中学時代の初恋や親友との物語、父の不倫なども描きながら、中学から高校へ進んで行く美加の成長が静かなタッチで描かれていきます。大林宣彦監督得意の尾道の狭い坂道などを多用したノスタルジックな画面も効果的で、繰り返される姉が歌っていた歌や美加の部屋に吊ってある、笑うマリオネットなどの効果も美しい。
結局入院してしまった母、北海道へ転勤した父、一人になった美加はどこかひとまわり大人になっている。やがて姉の幽霊も向こうの世界へ去っていき、美加は強くなって大人に一歩近づいた。美加が一人で冒頭の坂道を登って行くモノクロームで映画が終わります。これが映画ですね。良かった。