くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「不能犯」「RAW〜少女のめざめ」

kurawan2018-02-06

不能犯
原作の世界観は「人間はどこまでいっても愚かである」ということである。それは再三主人公宇相吹がつぶやくし、その前後の彼の前にいる人たちの行動でわかるのですが、いかんせん、インパクトが弱くて、ずしっと迫るものがない。「デス・ノート」と同様の展開で見せるように見えるが、雲泥の差がある。もっと面白いはずが、殺人のエピソードの羅列だけが繰り返されるのが実にもったいない。監督は白石晃士

ある公園の電話ボックスに、殺して欲しい人の名前を書くと、一人の男がその希望を叶えてくれるという都市伝説が広まっているところから映画が始まる。そして、一人の金融屋が喫茶店で目の前に現れた男に何やら呟かれた後苦しんで死ぬ。

殺したのは宇相吹という黒スーツの男で、人間のマインドコントロールをすることができる。事件に謎に迫る女刑事多田は、この黒スーツの男が犯人だとあばくが、全く手を下さず不可能な方法で人殺しをする不能犯という存在に手も足も出ない。しかし、たった一人多田だけがそのマインドコントロールにかからないことがわかる。

次々と宇相吹が人を殺していく姿が描かれ、その殺し方が見せ場になる。ここにかつて多田が捕まえ、更生させたひとりの若者タケルがいる。一方、爆弾テロ事件が次々と起こっている。この流れで爆弾犯はこのタケルだろうとわかるし、一方宇相吹がどう出るのかというサスペンスが進むのですが、予想通り最後の対決になるものの、なんか、弱い展開で迫力も緊張感もなく終わってしまう。

もちろん、原作が連載中なので、難しいところですが、見せ方、訴え方というのはあると思うのです。しかも、多田を演じた沢尻エリカも今ひとつ精彩にかけるし、松坂桃李の犯人も一人頑張ってる感だけが目立ってしまって、映画全体がまとまっていかない。タケルの不気味さもサイコパスさも見えない弱さもある。

どうも、ふと湧いた企画に乗ったという感じの出来上がりというのがもったいない映画でした。


「RAW〜少女のめざめ」
一台の車が走っている。前方に人が出てきたのを認め急ブレーキをかけ事故を起こす。ところがはねられた人間らしい生き物は立ち上がり、車の方に行く。このオープニングはどこかで見た感じだが、全体にスタイリッシュなホラーを意図したらしい。が、とにかく演出が下品でグロテスクである。女性ならではの残酷さが表に出た感じでほぼB級ホラーの一歩手前の出来栄えだった。監督はジュリア・デュクルノー

オープニング映像から、一台の車に乗る主人公ジュスティーヌ。両親に連れられ全寮制の獣医大学に入学をするため連れてこられた。出迎えるはずの姉のアレックスは出てこず、そのままジュスティーヌは寮に入る。

ところが、いきなり上級生たちの洗礼に会い、学校の行事だからと生肉を食べさせられる。実はジュスティーヌの家庭はベジタリアンなのだ。ところが上級生の姉アレックスの強引な手段で無理やり食べさせられてしまう。そしてジュスティーヌはアレルギー反応を示し、次第に獣のような感情が目立ち始める。

どうやら、ジュスティーヌの家庭は人肉を食べる食人の家系であるらしい。ヴァンパイアでも狼人間ではないところがまず斬新なはずなのだが、細かいエピソードの一つ一つがグロテスクで感情を逆なでする。

やがて獣のようになったジュスティーヌは貪るように食べ物を食べ、狂ったようにSEXし、姉とともに狂気の中に入り込んで行く。やがて、一年が終わり、ジュスティーヌは学年が上がる。

獣に目覚めた娘に、父親は母もまたこうだったと、傷だらけの体を見せてエンディング。なんともこれ以上のコメントがしづらい作品だった。

シャープで、階段や暗闇などを使ったスタイリッシュなカットを意識してるのだが、どうも、目を背けたくなるシーンが散りばめられていて参った。ただ、物語自体はファンタジーなのではないかと思う。学生たちの動きや描き方も不気味だし、普通の学校には見えない。あくまで寓話であると見ればこれはこれで面白いのだろうと思う。