「瞳の中の訪問者」
手塚治虫の「ブラック・ジャック」の中の話から映画化したもので、大林宣彦監督作品の中では凡作の一本という感じでした。色使いや展開などは彼の空気感が濃く出ていますが、まるで映画少年がお金を任されて商業映画を撮ったという感じの出来栄えです。
主人公の千晶はテニスの練習中に目にボールを受けて片目が失明。責任を感じたコーチが有名な闇医者ブラックジャックに手術を依頼する。
見事手術は成功したが、なぜか幻の男性が見えるようになった千晶は、その真相を探り始める。
なんと角膜の提供者は殺されていて、その犯人が角膜を提供した女性の恋人だった。アニメチックでやや茶番劇のようなやりたい放題の絵作りが大林宣彦らしさを見せてくるが、演技演出も稚拙だし、ストーリー展開も雑い。当時こういう斬新な作風は珍しかったように記憶では思えるので、それなりに認められたと思いますが、流石に今見ると辛いですね。
「ふりむけば愛」
三浦友和と山口百恵のアイドル映画ですが、それなら何をやってもいいという感じのはちゃめちゃなストーリー展開と、主人公たちに全く共感できない流れは、本当に感心してしまう一本。監督は大林宣彦ですが、本当に出来の良し悪しが極端な監督だなと思います。
主人公杏子がツアーでサンフランシスコにやってくる。そこで一人の青年田丸と知り合い恋に落ちる。後から東京に行くからという再会の約束をして二人は別れるが、東京に戻った杏子が待てど暮らせど連絡は来ないし出した手紙も返ってくる。
そんな時、一人の好青年大河内と知り合い、やがて結婚という流れになるが、田丸は杏子を愛していたことに気がつき、東京まで追いかけてくる。
一方の杏子もどっちつかずのまま新婚旅行まで行き、サンフランシスコへ。そこで田丸と再会し、大河内を捨てて田丸の元へ。全くとんでもない女である。というラストがある意味コメディである。
大林宣彦らしさもラストに少し見え隠れする程度で、とにかく雑な脚本がひどい。まぁ、こういうのも通ったのだからこれも時代ということでしょう。