「リヴァプール、最後の恋」
非常にオーソドックスな作りの作品ですが役者がしっかりしているので、最後まで間延びせず見入ることができました。監督はポール・マクギガン。
1981年ランカスター劇場楽屋で一人の女優が化粧をしている。開演五分前の合図で立ち上がるがまもなくその場に倒れる。彼女の名前はグロリア・グレアム。モノクロ映画時代アカデミー賞助演女優賞を受賞したこともある、名優である。
リヴァプール、一人の青年ピーターが家に帰ってくる。そこへ、ランカスター劇場からグロリアが倒れたという連絡が入る。駆けつけたピーターの前にぐったり倒れたグロリアがいた。時は1979年に遡る。
ピーターが住むアパートに、一人の老婦人が越してくる。一人で踊ったり叫んだりしている彼女を見つめるピーターは、彼女は有名な女優だと教えられる。ピーターもまた舞台役者であることもあり、いつのまにかダンスの相手などをしているうちにピーターとグロリアは惹かれ合うようになり愛し合うようになる。
物語は、1981年、ピーターの家で介抱されることになったグロリアのシーンと1979年のピーターとグロリアの甘いラブストーリーが交錯して進んでいく。
ある時、ピーターに黙って病院へ行ったグロリアは、ガンが手遅れになったと告知される。帰ってみれば、ピーターに新しい舞台のオーディションの連絡が入っていたが、グロリアとの生活を優先するピーターは、それを断ろうとしているのを聞いてしまう。
グロリアは、わざとピーターを追い出しリヴァプールに帰らせる。そして時は1981年、病状が悪化し弱っていくグロリアの姿に、ピーターたちもやや疲弊していた。グロリアは、とうとう家族に連絡を取るようにピーターに依頼、グロリアの息子が迎えにきて、ニューヨークへ去っていく。
切ない思いで見送るピーターのカットとタクシーで去っていくグロリア。背後にグロリアがアカデミー賞助演女優賞受賞シーンが被って映画が終わり、1981年10月、グロリアが息を引き取ったとテロップが出る。
カメラが回転すると時間が遡ったり戻ったりする。さりげなく時間移動を繰り返しながら、年の離れた恋を丁寧に描いていく演出はちょっとしたものである。色彩演出がちょっとセンスがないので、時代色が美しく出ていないのが残念ですが、これが映画だなと思える絵作りに、ノスタルジックな感動を覚えることができました。