くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・プレイス 運命の交差点」「ラストタンゴ・イン・パリ」

「ザ・プレイス 運命の交差点」

アメリカのヒット連続ドラマをイタリアで一本の映画として焼き直したものですが、面白い題材ながら映画にするには無理のある物語で、正直退屈な出来栄えの一本でした。監督はパオロ・ジェノベーゼ

 

ザ・プレイスというカフェに一人の男が座っている。彼のところに次々と男女が現れて、恋人が欲しいだの夫と別れたいだの、息子の命を救いたいだの、認知状の夫を治したいだの様々な希望を告げ、それを実現するためにすべきことを謎の男から指示される。

 

それぞれの要望とその解決策のための指示が絡み合うようにできているストーリー展開なのですが、画面がカフェから一歩も出ない上に、依頼者が時にキレ、時に尻込みしという物語にいまひとつドラマティックな面白みがないので、だんだんと退屈になってくる。

 

なにやら意味ありげなカフェの店員の存在もちょっと弱いのでストーリーにリズムが乗ってこない。結局何もかもが一段落し、最後に謎の男が、もうこの仕事に疲れたとカフェの店員に告げ、書いていたノートの切れ端が燃えてエンディング。

 

つまり彼もまた何かの希望を叶えるために指示されていた一人だったのだろうか。シュールなラストだけがいい感じなのですが、どうも全体の仕上がりは映画ではなかったという感じです。作り方に工夫が欲しかった。

 

ラストタンゴ・イン・パリ」(4Kレストアデジタルリマスター版)

3度目くらいの再見ですが、こんなに綺麗な映画だったかなという印象です。ブラウンを基調にした色彩とバッチリと決まる美しい画面の構図がとにかく素晴らしい。ビットリオ・ストラーロのカメラの美しさが際立ちます。ベルナルド・ベルトルッチ監督作品の中では中くらいの出来栄えながら、ショッキングな性描写が当時話題になった映画。今ではその性描写はあまりに控えめですが当時はセンセーショナルだったのでしょう。

 

ブラウンのコートを着たポールを見下ろすカメラアングルからぐーっとよっていくオープニング。頭上を走る列車と彼方のビル群。見事な絵作りに引き込まれていきます。

 

続いて、ジャンヌが一軒のアパートを探し出す。フィアンセとの新居なのだが、このアパートの美術も素晴らしい。このアパートにたまたま先に入り込んでいたポールはいきなりジャンヌをレイプする。しかし二人は、なぜか幾度もこのアパートで禁断の愛を交わす。

 

ジャンヌのフィアンセは映画監督で、遅れてパリにやってくる。ポールの妻は先日自殺したばかりで、その失意の中でジャンヌと逢瀬を繰り返す。しかし、ジャンヌのフィアンセも着き、ジャンヌはポールにダンスホールで別れを告げ、ポールはふざけてラストタンゴを踊る。そして逃げるジャンヌを追い、アパートについたポールは、ジャンヌに一緒に暮らそうというがジャンヌはピストルでポールを撃ち殺す。

 

最後の最後までお互いに名前を明かすことはなく、ジャンヌは、見知らぬ男にレイプされそうになり撃ったと呟いて映画が終わる。

 

ポールとジャンヌのSEXシーンが話題を呼んだらしいが今となっては普通である。全体の画面の構図と色彩演出の美しさに最後まで引き込まれてしまう見事な映画でした。