くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「千姫」「悲しみは女だけに」

千姫

作れば売れた時代の古き良き日本映画の一本という感じで、なんの変哲も無い歴史絵巻でした。京マチ子映画祭にて見ました。監督は木村恵吾。

 

徳川家康の孫にして豊臣秀頼の妻千姫。時は大坂夏の陣大坂城落城にあたり家康は千姫救出のため出羽守を遣わす。報酬は千姫を妻に迎えるという約束だが、いざ救出したものの千姫は頑なに断り、出羽守は刃傷に及んで、自害する。

 

出羽守の家来が千姫のそばに潜り込んで御庭番から側用人となり、いざ千姫を打たんとするが恋心が芽生え行動を起こせない。そんな中、正体がバレて、討ち死にするに至る。

 

こうして物語は千姫の数奇な運命から、やがて尼となって出家するまでを描く歴史絵巻となる。

特に秀でた画面つくりもない平凡な時代劇ですが、やはり映画全盛期の豪華さは今と比べ物にならない贅沢さが漂います。こういうのが映画の本当の役割なのかもしれません。

 

「悲しみは女だけに」

とにかくうっとうしいほどに陰気な映画だった。監督は新藤兼人だが、彼の一番嫌なタイプの作品という面が表に出ていた。戦後間もなくの日本の家族の、一見まとまって幸せなようでその底にある暗さを舞台劇の照明演出で浮き彫りにしていくリアルさが胸に迫って、気持ちが沈んでしまいました。

 

谷村家を支えてきた政夫の姉で、谷村家を救うためにアメリカに嫁いだ秀代が帰ってくるところから映画が始まる。なぜか政夫の子供たちが家にやってくるが、彼らの目的は、華やかなアメリカで暮らしていると思っている秀代の金が目当てだった。

 

政夫は、妻と離婚し慰謝料を払いながら後妻と暮らしている。元刑事だが戦後間も無く退職し、後妻の営む女郎屋まがいの店に主人に収まっている。しかし、金にはかなり不自由している。神戸に行っていた道子も帰ってくるが、彼女もまた、どこか暗さが漂っている。

 

秀代はアメリカでの生活より、この日本に戻ってきた懐かしさの話ばかりし、戦中戦後を通じて必死で生きてきた暗い過去を隠すように明るく振舞っている。しかしそんな秀代に金の無心をしようとする政夫の子供たち。しかし、秀代もまた貧しかったのだ。

 

一つ一つほころびていく家族の絆が、クライマックス再びバラバラになって映画が終わる。ラスト、必死で生きてきた政夫と秀代にスポットライトが当たって終わるエンディングが実に切ない。

 

たしかに、戦後の日本は、一見復興に向かって前向きに見える一方現実はこうだったのだろう。そこをステロタイプ化した登場人物で赤裸々に描写していく手腕はさすがだと思うがやはり暗い。なんともやるせない作品だった。