「こどもしょくどう」
切ない。ただひたすら切なくて、途中から涙が止まらなくなってしまった。こういう社会の一面が存在するのは知っていたものの映像として仕上がるとここまで訴えかけられるものかと終始自問自答して今の生き方を考えさせられてしまいました。監督は日向寺太郎。脚本は足立紳である。
小学生のユウトが野球チームで頑張っているシーンから映画は始まる。友達のタカシはいつもみんなにいじめられている。というのも母親はしょっちゅう男を連れこんで家に行き場がなく、内向的な性格ゆえである。
ユウトはいつもタカシを自宅の食堂に連れて帰りご飯を食べさせていた。そんなある日、ユウトはコンビニで一人の少女が万引きするのを見かける。その時は無難に済んだのだが、学校の帰り、河原で、車で生活している姉妹を発見。その一人が、先日見かけた少女だった。
ユウトはいかにも貧しいその姉妹にタカシと一緒にご飯を届けたりし始めるが、姉妹と一緒にいた父親らしき男が、どこかへ消えるのを見かける。そしてその姉妹を自宅の食堂に連れ帰りご飯を食べさせる。
姉妹の名はミチルとヒカル。ユウトとタカシはこの姉妹と行動を共にするようになり、ヒカルが常々、虹の雲が見えたら願いが叶うという言葉で、二人に虹の雲を見せようと考える。
ミチルとヒカルが、最後に母ときたという伊豆のホテルへ向かうが、そこにミチルたちの両親は当然いない。一方、ミチルたちの寝泊まりしている車も、どこかの少年たちに壊され、帰る場所もなくなってしまう。
某然とするミチルたちのところに警察がやってきて、二人は施設に送られることになる。姉妹を見送るユウトとタカシ。
これを境にタカシはいじめてくるクラスメートに殴りかかり、ユウトの家の食堂は小学生以下無料にして子ども食堂となって映画が終わる。
とにかくミチルたち姉妹はあまりにも不憫で見ていられない。その思いが最後まで気持ちを占めて来て、たまらなかった。
「お傳地獄」
明治の毒婦高橋お傳の半生を描いた作品。普通の映画ですが、明治の風情がさりげなく描写されているのがとっても楽しかったです。監督は木村恵吾。
農村、お傳が走っている。田んぼから村人が声をかける。夫の波之助が暴れているらしいのだ。波之助は悪性の皮膚病から気持ちが荒れていて、酒ばかり飲んでいた。
なんとか連れ出したお傳だが、愛する夫のため村の大地主に金を借りることにする。しかし、大地主の男はお傳の体が目当てだった。もみ合ううち、その男は腐った橋の欄干から落ちてしまう。
お傳と波之助は、借りた金で東京へ出る。そこで有名な医者の手にかかるが、そこの医院にいた若い医者に、危険な鎮痛剤を処方してもらう。その高価な薬を手に入れるためにお傳はその男と懇ろになるが、やがてその男は危険な薬を処方していたことから医院を辞めてしまう。
医院の医師の紹介でお傳と波之助は横浜へ行く。そこでお傳は女郎まがいのことをしながら波之助を養うが、そこで、気っ風のいいスリの男と懇ろになる。
しかし、そんなお傳に嫉妬した波之助は、お傳に詰め寄り、もみ合うなかお傳は波之助を絞め殺してしまう。折しもスリの男は捕まり警察に連れて行かれる。お傳はその男を追うカットで映画は終わる。
登場人物が次々と入れ替わり、物語に脈略が立たない仕上がりになっていますが、昔の映画というのはいいですね。当時の世相、風俗がリアルに感じられます。本当に楽しむことができました。