くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ライオン・キング」(超実写版)「マイ・エンジェル」「瀬戸内少年野球団」

ライオン・キング

実写版というよりフルCGアニメである。たしかにここまでCGで描けるようになったかと思うとすごいと思う。物語はオリジナル版をややコンパクトにした感じになっているので、オリジナル版ほどに芸術性を感じられないのはちょっとさみしいが、労力と資金力に脱帽する一本でした。監督はジョン・ファブロー。

 

ジャングルの王ムファサの息子シンバの披露目の集会から物語は始まる。シンバは父のように強くなろうと向こう見ずを繰り返すが、そんなシンバにかねてより王の座を狙うムファサの弟スカーの謀略が迫る。そして、そそのかされたシンバはヌーの暴走を呼び起こしてしまう。ヌーの大群に襲われたシンバは、駆けつけたムファサに助けられたものの、スカーによってムファサは殺され、シンバも追放される。やがて成長したシンバは、スカーが王になってから寂れていった王国を立て直すために戻ってくる。

 

二次元アニメでは表現できた絵画的な色調の美しさは、リアルCGになったことで完全に失われ、動物を表現するというテクニカルな見せ場が全面に出てしまった展開となった。まるで生身のように見える動物の細かい仕草の隅々が素晴らしい出来栄えで、映画の進化の一つという感じの作品に仕上がっていました。

 

「マイ・エンジェル」

絵作りの美しさ、カメラワークのリズムといい、クオリティの高い作品でしたが、いかんせん物語があまりにも荒んでいるので、見づらかった。監督はバネッサ・フィロ。

 

コートダジュールの美しい景色、特に空の雲を捉えるオープニングが眼を見張るように美しい。この日、シングルマザーでエリーという8歳の娘と暮らすマルレーヌは再婚の結婚式で船上にいた。

 

お酒が好きで、男好きのマルレーヌだが、娘のエリーを溺愛している。この日の結婚式でも、馬鹿騒ぎをし、酔った勢いで新郎以外の男と抱き合っているのを新郎に見つかり放り出されてしまう。

 

マルレーヌはエリーを連れて自宅に戻るが、アルコール好きは治らず、いつも酒瓶が傍にある。そんな母の姿を見て自分も酒を飲むようになるエリー。なんとも言えない描写である。

 

ある時、友達に誘われたパーティに出かけたマルレーヌは、エリーを先に家に帰し、自分は男と出かけたまま行方不明になる。一人残されたエリーは、家にある食べ物といったら酒しかなく、酒を飲むようになる。

 

そして、エリーは、たまたま向かいに住む父の元をおとづれて面識のあったフリオと知り合う。フリオは浜辺のキャンピングカーに住んでいて、かつては崖から飛び込む選手だったが、心臓を手術して以来、飛び込めなくなっていた。

 

エリーは孤独を癒すために執拗にフリオの後を付きまとい、フリオもエリーを気にかけるようになる。学校では劇の準備が進んでいて、エリーは人魚の役になっていた。

 

そんな頃、ようやくマルレーヌが帰ってくる。そして、エリーが拒否したにもかかわらず劇を見に来る。フリオは当然のように劇を見にきていた。しかし、出番前に兼ねてからエリーを憎んでいた友達に服を破られ、口紅を塗りたくられ、エリーは一人学校から逃げ出す。

 

マルレーヌは、必死でエリーを探すが、エリーはフリオの家のそばの崖に向かっていた。そこへマルレーヌがやってくるが、目の前でエリーは海へ飛び込む。駆けつけたフリオは、飛び込んだら命が危ないのを承知で崖から飛び込みエリーを助ける。

 

エリーを抱きしめこちらに走ってくるマルレーヌのカットで映画が終わる。はたそてフリオはどうなったのかはわからないままである。

 

とにかくカメラが抜群に美しい。さらにクローズアップを中心にした構図で、差し迫る母娘の姿をリアルに捉え、どう育て、接したら良いかわからずにもがくマルレーヌを見せる描写もすごい。さらに、セリフは少ないものの、表情だけで見せるエリーも見事。なかなかの作品だったと思います。

 

瀬戸内少年野球団

およそ40年ぶりくらいに見直したけど、これは何度見ても良い本当の名作やなと思います。物語の構成、展開、脚本の深さ、詩情あふれる映像、胸に迫る人間味ある登場人物たち。みんなに見て欲しい映画というのは限られますが、これはそんな一本だと思いました。監督は篠田正浩

 

瀬戸内の淡路島、終戦の日に物語は始まります。夫が戦地に行き、戦死したらしいという知らせで、その弟との結婚を迫られている教師の駒子。戦後の世相を見事に見せるこのエピソードがまずすごい。

 

物語の前半は駒子の物語を中心に、様々な人たちが入れ替わりこの島に入ってきて、混乱する話が描かれ、後半は野球を通じて、子供達と教師、強いては大人たちがまとまって、未来に進む姿が描かれる。

 

登場人物それぞれにドラマがあり、そのドラマが全て奥の深い内容を秘めていて、胸に迫ってきます。ラストに至っては、少年たちのマドンナ的存在の武女が東京へ去っていくシーンで、日本の新たな時代の到来を見せる。

 

素晴らしいの一言に尽きる名作だなと改めて思いました。こういう映画は多くの人に見て欲しいですね。