くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サラブレッド」「ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち」

サラブレッド」

シュールでスタイリッシュなサスペンスなのですが、物語がラストに向かって収束していかないので、途中でだんだん眠くなってしまった。アニヤ・テイラー=ジョイの存在感で引っ張っていく感じの作品でした。監督はコリー・フィンリー。

 

大邸宅に一人の少女アマンダがやってくるところから映画は始まる。アマンダはこの家の娘リリーに勉強を教えてもらうために来たらしい。表面的な対応をするリリーに何かにつけて感に触る態度をとるアマンダ。二人は幼馴染で長らく疎遠だった。リリーは名門校に通い上流階級の暮らしをしているがアマンダはその個性から周囲から除け者にされていた。

 

アマンダが、リリーの本心をさりげなくくすぐり、リリーがその本心を見せるにあたり二人は急速に友情を深めていく。リリーは継父のマイクを憎んでいたのだ。

 

二人は、ふと知り合ったヤクの売人のティムを使いマイクを殺させようとする。この展開が実に弱く、リリーたちの狂気的な不気味さが、時に躊躇するリリーの行動で薄められてしまって、非常にインパクトが弱い。脚本の弱さか演出の弱点か、ここをもう少しキレよく処理すべきだった。

 

そして、リリーが母と旅行で、アマンダが心理療法に行く、留守でアリバイのある時にティムに実行させる手はずが、マイクが突然、リリーたちを迎えに来て計画が狂ってしまう。

 

戻ったリリーは、自分でマイクを殺す計画を立て、アマンダを睡眠薬で眠らせて、マイクを刺し殺し、その包丁をアマンダに握らせようとする。アマンダは、それを知った上で睡眠薬入りのジュースを飲み干す。それはつまり自殺行為だった。

 

リリーはマイクを殺し、計画通り実行、セラピーを受けている場面で映画は終わるが、身の毛がよだつようなゾクゾクした怖さが全く見えてこない。映像は美しいし、カメラワークもしっかりできているのですが、テンポが良くないのか脚本が弱いのか、今ひとつ、迫ってくるクールさが見えない作品でした。

ハミングバード・プロジェクト0.001秒の男たち」

これは個人的にものすごく考えさせられるドラマでした。映画の出来栄えは普通ですが、とっても奥の深いドラマ作りになっている点はかなり評価できると思います。面白かったし、不思議な感動を覚えました。監督はキム・グエン

 

ニューヨークの株取引の会社で働くヴィンセントは、他社よりもより早く取引するためにニューヨークのデータセンターからカンザスまでの1600キロを一直線のケーブルでつなぎ、0.001秒でも早く取引をして大金を手にする計画を思いつく。

 

技術面のプロでいとこのアントンを誘い、強引に会社を辞めた二人は、投資する会社を見つけ、マークという相棒も見つけ、夢を叶えべく早速工事にかかっていく。

 

一方、育てた社員に裏切られた元の雇い主のトレスは彼らの計画をサーチし、より早く取引するためのプロジェクトを画策していく。

 

そんなおり、ヴィンセントは胃癌にかかっていることが発覚、病気を隠して必死で工事を進めるが、トレスの妨害でアントンはFBIに逮捕されてしまう。さらにトレスが密かに建設したマイクロウェーブの鉄塔をヴィンセントは見つけ、狂ったように取り壊そうとするが、気を失い病院へ担ぎ込まれる。

 

一方のアントンはあらかじめ仕掛けたプログラムを始動させ、トレスのシステムを妨害、なんとか釈放される。

 

退院したものの、全てを失ったヴィンセントにアントンは新たな提案をする。ヴィンセントはアントンに、連れて行って欲しいところがあるという。そこは、工事の途中で反対され、強引に工事した農場だった。ヴィンセントはそこの農場主にすべて撤去したことを伝える。

 

ここへいく前に、ヴィンセントはアントンに言う「ゴールが目的ではなくて、その過程での出会い、経験こそが目的」なのだと。

 

農場の小屋で休むヴィンセントとアントンのカットで映画は終わりますが、夢を追いかける男たちの物語のみでなく、その先に見えた何かがラストで胸に迫ってきます。見て本当に良かったと思える映画だった気がします。