くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「チャッピー」「ラン・オールナイト」「メイズ・ランナー」

kurawan2015-05-28

「チャッピー」
近年、廃れていた浪花節の世界をロボットで再現した娯楽映画の傑作。しかも、映像づくりといい、ストーリー展開のリズム感といい一級品の作品、めちゃくちゃよかった。監督はニール・プロムカンプである。

映画はヨハネスブルグ、テトラバール社が開発した警察ロボット、スカウトが活躍しているという映像が流れるところから始まる。細かいカットを繰り返し、テンポのよい曲で映像を乗せていく導入部が実にうまい。

建物のアングル、絵作りを意識した、空の熊や、浮かび上がる個性的なビルなど、画面が実に美しい。

スカウトを開発したディオンは、人間並の意識と感覚を持つAI知能の開発に成功、その実験を会社に申し出るが却下される。たまたま、任務の途中で大破し、廃棄処分となるスカウト22号を盗み、IDキーを借りて、実験をしようと試みる。

ところが、ここに、ギャングたち一味のニンジャ、アメリカ、ヨーランディらが、ディオンを誘拐、車に乗っていたスクラップとともに、ロボットを手に入れる。

ディオンのプログラムの転送は成功し、22号はチャッピーと名付けられ、人間のように、見る見る知識を身につけていく。
こうして、三人のギャングと、チャッピーとの、心の交流?が、いかにもドラマとして展開。

一方ディオンのライバルで、ムースと呼ばれる戦闘ロボットを警察組織に導入させようと野望を持つヴィンセントは、ディオンの罪に着目し、そのIDキーを手に入れるために、ギャングたちに近づく。

次第にチャッピーが人間くさくなる下りが、実に人間ぽい?し、反抗期さえも見せる成長ぶりが緻密。最初に、少年たちにいじめられる下りや、ヴィンセントに無理矢理IDキーを盗まれる下りも、もの悲しさというか、胸が痛くなるほどに丁寧に描写していく。

そして、最初はいかにも悪という感じのニンジャたちが、見る見るチャッピーを子供のように慈しむようになるドラマもまたいい。

終盤、ヴィンセントは、すべてのスカウトを使用不能にし、それで犯罪が爆発して増え、無理矢理ムースを起動させる。

一方、ヴィンセントが使う、ロボット誘導装置のヘルメットで、意識の転送という実験に成功したチャッピーは、バッテリーが切れかかっている自分を救うため、自分の意識を保存し、新しいボディを手に入れようと、ギャングたちに加担。

最後は、ギャングたちの内輪もめに、ムースが攻撃してきて、チャッピー、ディオンを巻き込んだ大戦闘シーンへ。仲間のアメリカは死んでしまい、そこで、ディオンは撃たれるが、死の直前、チャッピーに、ロボットに意識を転送させ、ロボットとして生き返る。さらに自らも別の一体に転送して生き返る。

ママと呼んでいた、ヨーランディも死ぬが、彼女の意識を保存したメモリーを使い、新たな女ロボットが完成して、転送するところでエンディング。

ニンジャが自ら犠牲になって、恋人のヨーランディを守ろうとする下り、さらに、そんなニンジャを守るため、ムースに撃たれるヨーランディの悲哀など、泣かせるクライマックスもすばらしい。アメリカは死んで、ニンジャは生き残るというのは、なんか日本びいき的なところが見え隠れするのは、考え過ぎかな?

ギャングたちの隠れ家の巨大ビルや、円形のボーダホンビルの偉容、さらに、空に浮かぶ雲の美しさ、ロボットと人間を地面すれすれからとらえるカメラアングルなど見事。

オープニングから、どんどん引き込まれる映画で、これほどの作品を久しぶりに見た感じがしました。最高。


ラン・オールナイト
それほど期待していなかったが、これが意外におもしろかった。とにかく、飽きさせないほどに、次々とストーリーが前に進んでいく小気味良さがいい。監督はジャウム=コレット・セラ。

映画は、主人公ジミーが、森で倒れている。傍らにショットガン、物語は16時間前に戻る。

ジミーは若いボスらしい男のところに金を無心にくるところから始まる。若いボスは、ジミーのかつての仲間で、ボスのショーンの息子ダニーである。

カットが変わるとボクシングの練習をするマイク。彼を慕う少年。このマイクはジミーの息子である。

登場人物を細かいカットでつぎつぎと紹介し、その背景を描写して物語は本編へ進んでいく。この導入部が実にうまい。少々、デジタル処理が目に付くけれど、それを脇にすればなかなかの演出である。

マイクは運転手で、ダニーがショーンに紹介したが、ショーンに断られ、紹介料を取り戻すために、ギャング二人をダニーのところへつれていく。ところがその二人をダニーが殺し、それをみていたマイク、さらにたまたまマイクのところにきた少年が目撃する。

それを知ったジミーがマイクのところにいくと、後からきたダニーがマイクを撃とうとしたので、ダニーを撃ち殺してしまう。

こうして、ジミーとダニーがショーンたち、さらに警察に追われる展開となり、一晩のアクションがスタート。

後は、追いつ、追われつの銃撃戦である。ストレートな物語なので、分かりやすいし、マイクを演じたジョエル・キナマンがなかなか好演だし、ショーン役のエド・ハリスがやはりかっこいいから、作品が引き締まる。

結局、ショーンとジミーの一騎打ちから、無事ラストかと思いきや、ショーンの放った殺し屋が執拗にジミーたちを追っていて、最後の銃撃戦の後、ジミーは死に、大団円となる。

わかりやすさと、アクションのおもしろさをわかった演出が、並の娯楽映画で終わっていない出来映えで、とにかく本当に楽しめる一本だった。


メイズ・ランナー
三部作の第1話なので、まだまだ物語は薄っぺらい。この程度ならアメリカのテレビドラマでも可能な感じであるが、まぁ、エンターテインメントとしてはそれなりに面白かった。

いきなり、主人公トーマスが何やらエレベーターのようなところに乗っていて、着いた地上は、巨大な迷路に囲まれた場所で、少年たちが生活している。

何やらルールも決められていて、1日1回目開く迷路の中に入れるランナーと呼ばれるメンバーがいて、何やら謎めいた展開だが、第1話にしては、ちょっと説明が緩い。

あまりしつこいのもどうかと思うが、やや、雑な導入部が気になる映画でした。

結局、第一はラストで、実は地上は太陽に焼かれ、人類はほとんど死滅、さらにうぃるすもまんえん。ところが一部の青年が無事で、彼らに試練を与えるために迷路を作ったという説明。

そして、物語は新たな試練のために第二話に進んでエンディング。

クレジットの後で映された第二部の映像は、さらにスケールアップしているようで、面白そうだが、イマイチ、キャストに魅力がないのが残念。この手の娯楽映画は、やはりスターが欲しい。

よほど、原作に力があるのか、監督にネームバリューがあればともかく、女優にもそれほど魅力を感じない。

映像で客を呼ぶというところかもしれないが、今後は一抹も不安もあるかな。でもまぁ、まぁまぁ面白かったから良しとします。そんな感じの映画でした。