くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エージェント・ウルトラ」「ザ・ウォーク」

kurawan2016-01-28

エージェント・ウルトラ
イデアは面白いはずなのですが、宣伝フィルムを見た時の危惧が現実になったという感じでした。つまり、物語のとっかかりは良いのですが、そのあとの展開に面白みがないという感じなのです。監督はニマ・ヌリザデという人です。

どこかの取調室にいる一人の男マイク。そして物語は3日前に遡る。

平凡な青年マイクにはフィービーという恋人がいる。しかし、ドジなマイクは婚約指輪を渡すタイミングも見出せず、二人でハワイに旅行するはずだったのに、空港でパニックになるマイク。

一方、カットが変わるとCIAのオフィス。なにやらある人物を殺害する計画が始まる。それに危機感を持った捜査官ラセターは、その人物、つまりマイクを守る行動に出る。かつてCIAで行われた超人製造プログラムで生まれたのがマイクで、あるパスワードを聞くと覚醒し、超人的な戦闘能力を発揮するのだ。

コンビニで働いていたマイクにラセターが近づき、ある言葉を伝える。なんのことかわからなかったが、たまたま、自動車強盗が駐車場に現れ、あっという間に殺してしまう。

こうして、CIAが放った狂人のような暗殺集団とマイクとフィービーのカップルが戦うのが本編。実はフィービーはマイクを監視するためのCIA職員だという真相も語られるが、それはさらりと流して、ひたすらバトルシーンになる。しかし、どこかでテンポが悪いのかキレがないのか、シーンからシーン、アクションからアクションの切り返しにスピードがない。

ラセターも参戦し、CIAのイェーツらの執拗な攻撃を難なくかわしてしまうし、ラセターの相棒的な職員の存在感も際立たない。しかも、狂人のごとき暗殺集団も一人だけがやたら目立って、大勢いるのに他の人はみんな同じ的で個性もない。

結局、イェーツらは殺され、マイクは捉えられて冒頭シーンになるが、その後、本格的にCIA職員として、海外に派遣されて活躍する姿を描いてエンディング。

ちょっとこの監督、ストーリーテリングの才能はない感じですね。もう一押しのエンターテインメントが見えないのが残念な映画でした。


ザ・ウォーク
ワールドトレードセンターのビルにワイヤーを渡して綱渡りをした男の実話を基にした映画、ということで、ドキュメンタリータッチかなと思っていたら、これがなかなか映画として、映像として素晴らしい一本でした。監督はロバート・ゼメギスです。

主人公フィリップが自由の女神のトーチのところに立って、観客に向かって語りかける画面で映画が始まります。

少年時代、大道芸にはまり、ジャグリング、綱渡りを身につけ、パリの街頭で演じていたが、ニューヨークに建設中のワールドトレードセンターのビルの記事を見つけ、この間にワイヤーを通して渡るというパフォーマンスを計画する。

もちろんクライマックスは綱渡りシーンですが、大道芸をしている頃の人々との出会いや、綱渡りの師匠との出会い、ワールドトレードセンターの計画をサポートしてもらうメンバーを集めるくだりや、いよいよ当日のサスペンスフルな展開など、映画としてのリズムも実に面白くできているし、縦横に駆使したカメラ映像もロバート・ゼメギスらしくて楽しい。

そして、いよいよ綱渡り当日、一度は渡りきるが、もう一度引き返す上に、警官がやってくると、ワイヤーの上で様々なパフォーマンスを企てたりと、最後の見せ場も実に上手くまとめてある。もちろん、実話なので、作った部分は無いのですが、全体のストーリー構成の配分、演出の強弱がうまいので、最初から全くスクリーンから目を離せないのである。

そして、見事パフォーマンスを終え、映画は終わるが、そこになんとも言えない感慨を覚えさせるのだから見事である。良い映画を見ました。