くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「今さら言えない小さな秘密」「帰ってきたムッソリーニ」

「今さら言えない小さな秘密」

ほとんど一人台詞で進んでいくので、ちょっとうんざりしかけたのですが、ラストの処理がとっても素敵だったので、救われた感じです。その意味でいい映画だった。監督はピエール・ゴドー。

 

主人公ラウルが全身に包帯を巻きベッドに横たわっているシーンから始まる。そして彼の少年時代の回想へ。彼は今でこそ、自転車修理で有名なのだが、実は幼い頃から自転車に乗ることができなかった。父は郵便配達をしていたが、自転車に乗れないからあとは継げないと告白した時、父は雷に打たれて死んでしまう。

 

ラウルは、幼い頃、無理に坂を自転車で下って、ジャンプして池に飛び込んだことで英雄になっていた。そのまま青年となり、恋人もできたが、彼女に自転車に乗れないことを告白したら彼の元を去っていった。それ以来、決して自転車を乗れないことを言わず、そのまま修理屋になった。

 

間も無くして、自転車事故で両親を亡くした女性と結婚、決して自転車に乗らないと誓って人生を始める。そんなある時、村に村人の写真を撮る写真家エルヴェがやってくる。彼も自転車が得意ではなかったので、意気投合するが、ラウルの妻の提案もあり、ラウルが自転車で坂を下るところを写真に撮ることになる。

 

ラウルは何とかこの計画がダメになるようにエルヴェのカメラを盗んだりするも、結局撮影することに。そして坂を疾走してくるラウルの姿を写真に撮るが、ラウルは崖をジャンプして大怪我をする。しかし、それが英雄視され、彼の名前の自転車レースなども開催されることになる。

 

その日、ラウルは、幼い頃の自分の姿を見かけたように思って後を追う。夫の姿を不審に思い妻も後を追う。ラウルはとうとう自分が自転車に乗れないことを告白する。すると、幼い頃の自分の姿の少年は軽快に自転車を乗っている。風船が舞い上がる。妻は、そんなことで去ることはないと抱き合う。

 

ラウルは写真集のできたエルヴェと仲良くなり映画は終わる。とにかくラストの処理がファンタジックで素敵なのでこの映画が好きになってしまいます。ラストはまさに映画でした。

 

「帰ってきたムッソリーニ

帰ってきたヒトラー」をムッソリーニに置き換えたいわばリメイクである。ムッソリーニヒトラーほどのカリスマ的な存在感がないので、さすがにインパクトが弱い。ストーリー展開は原作の良さでカバーするのでそれなりでしたが、メッセージ性はヒトラー版より格段に弱かった。監督はルカ・ミニエーロ。

 

移民の子供達の取材をするカナレッティの前に突然ムッソリーニのそっくりさんが舞い落ちてくる。最初は興味半分に彼を撮っていたが、やがてネット拡散で有名になり、テレビ出演することに。そこでさらに人気が沸騰し、人々の心は彼に引き込まれるようになる。

 

そんな様子を見ていたカナレッティは、彼が本物であることを確信して、テレビ局へ乗り込むが時すでに遅く、彼は人民の心を掴んでいた。

 

車に乗って街頭で手を振るムッソリーニのカットでエンディングは同様だが、それに至る展開が非常に弱いために、単なる真似事映画にしか見えない。やはりカリスマ性の弱さも関係している気がします。