くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バックドラフト」「1秒先の彼」「トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~」

バックドラフト

人間ドラマを丁寧に描いていく展開と大作らしいスケール感が見応えのある映画ですが、ところどころに若干甘い脚本が見え隠れするのが僅かに勿体なかった。それでも、火事シーンの迫力は必見だし、スリリングな演出はさすがというほかありません。傑作とまではいかないまでも、なかなかの作品でした。監督はロン・ハワード

 

1971年、消防士の父が勤めるシカゴ消防署で幼いブライアンと兄のスティーブンが遊んでいる。緊急連絡がはいり、父は出動するが、ブライアンを連れていってくれる。それほど大きな火事ではないと思われたが、父が飛び込んだ部屋でガスが爆発し、ブライアンの目の前で父は亡くなる。それから20年、建築会社を辞めて地元に帰ってきて消防士となったブライアンは、この日就任祝いでバーで盛り上がっていた。

 

場面が変わる。一人の男が自宅に帰ってきてドアの鍵を開けた途端、バックドラフトで吹っ飛ばされ死んでしまう。事故現場に駆けつけたスティーブンらは惨状を見る。事故か事件かを火事の調査員のドナルドが調査を始める。スティーブンの小隊に配属されたブライアンだが、何かにつけて厳しく当たる兄にブライアンは反抗的になっていく。しかし、ある現場で、スティーブンの勇敢な行動に圧倒されたブライアンはすっかり自信を無くし、かつての友人ジェニファーが秘書を務める議員の依頼もあってドナルドのもとで働き始める。

 

その後も、二人めの犠牲者が出て、消防士の削減計画を進める議員のやり方が消防士達の間で問題になり始める。さらに、ブライアンの同僚だった新人のティムがスティーブンと現場で行動をしていて、バックドラフトの事故で重傷を負ってしまう。かつての放火魔で今は獄中にいるロナルドに相談したブライアンは、身近にあるものを探せと言われる。

 

ティーブンは妻へレンと別居して、父の持っていた船に寝泊まりしていたが、ブライアンはそこで見かけた薬品が今回の放火事件に関わっていると判断、兄を疑い、問い詰めるが追い返されてしまう。

 

ブライアンは消防署の兄のロッカーを調べるが、そこで、かつての父の同僚で、大先輩であるアドコックスに気がつく。真犯人はアドコックスだった。彼は人員削減を進める議員が関わっている幽霊会社のメンバーとなっている経理メンバー三人を殺し、議員を追いつめたかったのだ。アドコックスが真犯人だと知ったスティーブンもアドコックスに問い詰めようとするが、折しも火事が起こり出動となる。

 

ティーブンはアドコックスと出動、不安に思ったブライアンは後を追い、現場でアドコックスを責めるスティーブンのところへ駆けつける。しかし、現場の屋根が落盤し、スティーブンとアドコックスは落下、かろうじてブライアンはスティーブンを救出するがアドコックスは死んでしまう。しかし、瀕死の怪我を負ったスティーブンは救急車の中で亡くなる。

 

今やすっかり頼もしくなったブライアンが次の現場に向かう消防車に乗っていた、こうして映画は終わる。

 

大作の貫禄十分の作品ですが。脚本が今ひとつ弱いところが目立つのが残念。でも人間ドラマとしては実に丁寧に描けていると思います。良い映画でした

 

「1秒先の彼」

台湾映画「1秒先の彼女」のリメイク。京都を舞台に変えて、シンメトリーな構図を徹底した静かな絵作りが功を奏したのか、前半はオリジナリを越えるほどにテンポがいいのですが、時間が止まって真相が明らかになっていく後半部分はオリジナル版に近い形になってしまって、ちょっと個性が失われてしまったのは勿体無い。でも、オリジナル版の面白さ、感動を決して失う事なく仕上げた感じはとっても素敵でした。監督は山下敦弘

 

真っ暗な画面でニュースが聞こえ、バスから一人の青年が消えたと流れて画面が変わる。一人の青年ハジメが交番に来て、昨日が無くなったと訴える。郵便局に勤めるハジメは子供の頃から何かにつけて人より1秒早かった。そんな彼は三十才を超えてもまだ彼女らしい彼女ができず、できてもすぐにふられるという面倒な性格だった。

 

ある日、河原で歌っている桜子と出会う。CDが欲しいとハジメが言ったので郵便局まで届けにくる桜子。やがて親しくデートするようになり、弁当の差し入れまでしてもらう。そして、ハジメの実家の宇治の花火大会にいく約束をする。桜子は弟が病気で40万の金がいると言い出し、二人でお姫様抱っこ競争に出ようと提案するが、それがダメでも金はなんとかするという。

 

どんどん盛り上がり、気持ちが昂るハジメ。しかし、そんな彼に視線を投げる一人の少女がいた。彼女はレイカと言って大学生だった。彼女はいつもハジメの窓口に来て切手を貼って手紙を出していた。たまたまある月曜に彼女が出している手紙の宛先が天橋立私書箱だと知ったハジメ天橋立に行って私書箱を開くとたくさんの写真が入っていた。

 

昔、幼いハジメが入院している時、一人の少女が同室に入院していた。彼女はドライブの途中で事故を起こし両親が亡くなり、自分は入院していたのだが、その少女はレイカと言い、ハジメは彼女を励ますために頻繁に声をかけているうちに親しくなり、退院したら文通しようとしていた。

 

しかし、ハジメは退院後すっかり忘れていた。ハジメの父は、ある日突然、晩のおかずの茗荷を買いに行くと出ていったのだった。出ていく時にハジメは父に、パピコを買ってきて欲しいという。

 

宇治では、花火大会の準備が進んでいた。試し打ちをした瞬間、ハジメは目を覚ます。ところが日曜日のはずが月曜日になっていて、郵便局は普通に開いていた。花火大会の会場に行っても片付けが行われているだけだった。冒頭の交番に行くが、酔っているのかと言われるだけだった。しかも、桜子に用立てるつもりの40万の現金もなかった。家に帰ると、妹とその彼氏が、残念だったというが、なぜか40万円はレンジの中から見つかる。

 

たまたま通った写真館に自分の写真が飾られているのを発見、店主に聞くと、目立たないバイトの大学生が置いていったのだという。しかも彼女は行方不明だった。その写真の場所が天橋立だと聞いて、写真の現場に向かう。その私書箱で沢山の写真を見つける。いつも窓口に来ていた女性こそがレイカだった。

 

一方、レイカは、ある日、桜子が実は自分のCDデビューのネタのためにハジメと付き合っていたと知る。弁当も、自分のファンが届けてくれたのを回しただけだった。それをハジメに伝えたくても伝えられず、結局、桜子に直談判するが、桜子はドライな対応をする。

 

イカは花火大会の日曜の朝、目を覚ますと時間が止まっていた。なぜかわからないままに、自転車を借りて走っていると、悪態をついているバスの運転手に会う。その運転手は普通に動いていた。しかも、バスにはハジメが乗っていた。レイカは運転手に頼んで天橋立に向かってもらう。

 

イカ天橋立ハジメと一緒に写真を撮り、帰ってくるが、京都に着いた途端、もう一人バスの後ろに動く人がいることに気がつく。それはハジメの父だった。彼は時間が止まったのは二度めだという。今回動ける三人は、皆名前が長すぎて、いつも損をしていたので、神様が一日時間をくれたのだという。ハジメの父は元妻の家に行き、ハジメらと一緒のところをレイカに写真に撮ってもらう。別れ際、ハジメの父はレイカに、ハジメパピコを買ってやって欲しいと100円渡す。元妻には茗荷を握らせる。

 

時間が戻り、レイカは最後の写真をハジメの窓口に持っていく。その帰り、パピコを買うのを忘れて引き返したところでトラックに跳ねられる。それから363日が経った。ハジメ天橋立の郵便局で働いていた。そこへ、松葉杖をついたレイカが現れる。そしてパピコハジメに渡して映画は終わる。

 

オリジナル版もそうだが。かなりてんこ盛りにエピソードが盛り込まれているのはちょっとやり過ぎ感がないでもないけれど、今回のリメイクも、基本を踏襲した作りで、これはこれで面白かった。終盤にもうちょっとリメイクするにあたっての工夫が欲しかったが、無難な仕上がりの映画だと思います。楽しめました。

 

「トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~」

三谷幸喜の「ザ・マジックアワー」の中国リメイク。オリジナル版はほとんど覚えていないけれど、今回は様々な映画のパロディを盛り込みながらの中盤まではなかなか面白いし、背景をおそらく全てCG映像で処理したファンタジー感も楽しめる。ただ終盤がちょっとダラダラと取り止めもなく引っ張るので、さすがにしんどかった。リメイクなのだからラストはもっと手際良く処理してほしかった。監督はシン・ウェイション。

 

ある組織の大ボスが何やらイベントをしに海辺に手下とやってきた。ボスを狙ってスナイパーのカールが離れた高台から狙っていたが、射撃した途端、ボスのダイナマイトのスイッチが押される。カールがいたところを破壊するイベントで、カールは落下して大怪我を負い、ボスは耳元を何かが通っただけの怪我で済んだ。カールは視力を失い、失語症になって入院、ボスが見舞いに行く。殺し屋カールの素顔は誰も知らなかった。

 

ここに、映画を撮っているミランと弟で監督のミラーがいたが、資金が尽き、しかもスポンサーのボスから狙われていて、この日、とうとう捕まってしまう。殺し屋カールを知っているとミランが出まかせを言ったので、翌日までに連れてくれば命は助けるとボスに言われる。たまたま、ウェイという、エキストラのことを思い出したミラーは彼をカールに見立ててボスに差し出すことにする。ミランはウェイに、ウェイを主役にした映画を撮るからと持ちかけ、ウェイをその気にさせる。

 

ウェイは映画の撮影だと思い込んでボスの前にやってきて殺し屋を演じる。物語は、映画撮影だと信じるウェイと、周りの人たちのドタバタで展開、時折、名作映画のパロディなどが入る。ウェイの両親が訪ねてきて、ミランに実はウェイは養子だと告白する。実子は不慮の事故でなくなったのだが、盲目の父が悲しむので、ウェイの親友が息子を演じるとかって出たのだった。

 

ミランは申し訳なく思い、全てを告白する。一方、ボスの片腕のジミーは真相を知り、ボスを暗殺する計画にウェイを巻き込む。そしてウェイはボスを撃ち殺してしまうが、ボスは急所を外れていて、病院に担ぎ込まれる。ウェイはボスを殺したとジミーたちに生き埋めにされそうになるが、ミランがジミーと結婚することを条件にウェイを助ける。ウェイは現場を追い出される。

 

やがてジミーとミランの結婚式、なんとかミランを助けたい弟のミラーは、またまたやってきたウェイと一芝居を打ってミランを助け出す。しかし、計画がばれ、ジミーたちに追い詰められて、ウェイは、実はカールを雇ったのはジミーであること、そしてウェイを使ってボスを殺したのもジミーの計画だとボスの手下達に明かす。そこへ、回復したボスがカールと一緒に現れる。

 

ウェイとミランはいい仲になり、ハッピーエンド、かと思われたら、ボスが撮っている映画のラストシーンだった。こうして映画は終わる。

 

終盤がしつこいのは残念ですが、お遊び映画としては楽しめる一本でした。