くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「カセットテープ・ダイアリーズ」「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」

「カセットテープ・ダイアリーズ」

これは良かった。映画が躍動している。自然と踊り出してしまうような青春ドラマにも関わらず背景にある人種差別、親子の愛などしっかりとしたドラマが描きこまれた素敵な作品でした。実話ということですが、監督の演出センスに拍手です。監督はグリンダ・チャーダ

 

ジャベドとマットの幼馴染みの少年二人がハイウエイを見下ろしている。マットは誕生日のお祝いに自転車をもらい、ジャベドはルービックキューブをもらったという。マットはジャベドに日記帳をプレゼントして、ジャベドは毎日日記をつけるようになる。それから7年、時は1987年イギリスの田舎町ルートンとなる。

 

この日もジャベドはバイトを終え帰ってくる。パキスタン人の移民の彼は帰り道、英国人の青年から唾をはかれたりするが抵抗できない。封建的な父親は、家族の稼ぎを全て徴収してしまう。ジャベドは今年から高校に入学、しかし父は女などにうつつをぬかさず勉強して稼ぐようになれという。隣に住むマットは今もジャベドの親友だが彼女と平気でキスをする。

 

意気揚々と学校へ行ったジャベドは廊下で一人のパキスタン人のループスとぶつかる。彼はジャベドに自分が信奉しているブルース・スプリングスティーンのカセットテープを貸す。

 

そんな時、父の勤める工場が人員整理にあい、父は解雇される。父は母に内職を増やさせ、一方娘の結婚の段取りを進める。またジャベドにもバイトを増やせと命じてくる。日頃から詩を書いたり文章を書くことが好きなジャベドは、自分の未来に絶望するが、そんな時ループスに借りたブルース・スプリングスティーンの音楽を聴いてみて、人生に目覚める。

 

ジャベドは、同じクラスで運動家でもあるイライザという女性に恋していた。ジャベドは、マットの父親に頼んで、彼の洋服屋を手伝うことになるが、なんとマットの父もブルース・スプリングスティーンのファンだった。「涙のサンダーロード」を歌いながらジャベドがイライザに告白する場面は最高に踊ってしまう。ここからあと映画は一気にテンポを上げていく。

 

ジャベドは学校で、文学の先生に勧められ、書き留めている詩を提出。それが褒められ、ジャベドはどんどんあちこちで認められて行く。一方、友人のループスと、放送室を乗っ取ってブルース・スプリングスティーンの曲を勝手に流したりする。

 

そんなジャベドに、先生のツテでヘラルド紙の職業体験に行けるようになり、そこで記事を書かせてもらうようになって、その記事が載ってしまう。さらに、先生が勝手に応募したジャベドの論文が全国大会で入賞し、米国の大学のセミナーに行けるようになる。

 

しかし、パキスタン人として地道に稼ぐことを求めるジャベドの父は大反対、ジャベドはとうとう家を出て行き、ループスとアメリカに行く。しかし、ジャベドと父の溝は埋まらなかった。

 

やがて卒業が近づき、イライザは、ジャベドの家族をジャベドが学校で優秀学生として論文を発表する会場へ誘う。そこで、父もようやくジャベドの気持ちを悟る。二人は抱き合い、心をもう一度通わせる。

 

やがて、米国の大学に行く日、父はジャベドに運転するように言って車で走って行く。二人がハイウエイを走る様子を見送る幼い日のジャベドがいて映画は終わる。

 

一見封建的ながら家族のために必死で仕事をするジャベドの父のショットや自分の不甲斐なさを妻に嘆くシーンなど、一方的な頑固親父として描いていない点も秀逸だし、マットの存在もさりげなくいい。とにかく爽やかに素敵。良い映画でした。

 

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」

唖然とするほどの傑作。久しぶりのウディ・アレンの真骨頂に酔ってしまいました。しかもヴィットリオ・ストラーロのカメラの美しいこと。うっとりしてしまう場面がいっぱいで、それも良かった。脚本のうまさ、セリフに掛け合いのテンポ、どこをとっても久しぶりの大傑作でした。監督はウディ・アレン

 

実業家の息子のギャツビーは、ヤードレーの大学で学んでいる。名門大学にいたが、親への反抗でここに移ってきた。彼には恋人でアメリカ人のアシュレーがいる。ポーカーで儲けたギャツビーはアシュレーとニューヨークでのロマンチックなデートをしようと計画。大学でジャーナリストの勉強をするアシュレーは、有名な映画監督ローランド・ポラードにインタビューできることになったのがきっかけでもあった。

 

ニューヨークに着いた二人、アシュレーが取材に行く間ギャツビーは時間を潰し、ランチを一緒にしたあとデートする約束をして別れる。ところが、アシュレーはポラードとのインタビューで盛り上がり、彼の新作を試写してもらうことになり、ランチができなくなる。仕方なく、ギャツビーは兄のハントのところに寄る。ハントは結婚が決まっていたがフィアンセの笑い声がどうも受け入れられないと悩んでいた。ギャツビーはハントに頼まれてポーカーをしに行くことに。さらに友人が自主映画を撮っている現場に行き、ラブシーンの役で参加させられる。なんと相方の女優は元カノエイミーの妹チャンだった。

 

一方のアシュレーだが、新作が気に入らないと悩むポラードが、突然試写室を出て行ったので、脚本家のテッドと探しに行くことになる。ところがテッドは途中で、友人と食事していると聞いている妻が自分の親友とデートしている現場を見てしまい、アシュレーを残して妻を詰め寄りに行く。

 

アシュレーは一人、撮影所へポラードを探しに行くが、そこで大スターのフランシスコ・ヴェガと会い舞い上がってしまう。そして、ヴェガとパーティーに行くことに。大スターのベガはテレビカメラに追いかけられていて、アシュレーも写ってしまう。それをたまたまギャツビーが見て、てっきりフラれたと勘違いする。

 

ハントの代わりのポーカーで大儲けしてしまったものの、母のパーティに気乗りがしないままにバーで飲んでいて一人の美女に声をかけられる。彼女は娼婦だったが、ギャツビーはアシュレーの身代わりになってもらい、両親のパーティに行き、アシュレーだと紹介。ところが、娼婦と見抜いたギャツビーの母は彼女を帰して、ギャツビーにあることを告白する。なんとギャツビーの母も娼婦だったのだ。

 

一方のアシュレーは、ヴェガの家に行き、あわやベッドインかと服を脱いだところに、別れたと聞いているヴェガの彼女ティファニーが帰ってくる。下着姿でレインコートを着て雨の中逃げたアシュレーは、ギャツビーとの約束のホテルへ。そこで二人はやっと再会し、ヤードレに帰るべく翌朝ささやかなデートで馬車に乗る。しかし、突然ギャツビーはここに残ると言い出し、アシュレーは一人帰る。ギャツビーはセントラルパークのからくり時計の下でいると、そこにチャンがやってきて、キスをしてハッピーエンド。

 

もう最高の映画でした。ギャツビーとアシュレーの場面の切り替えの面白さ、それぞれの場面のエピソードの洒落たユーモアがどれもこれも大人の世界、大人のウィットに富んでいます。アシュレーをアメリカの馬鹿女として描くのですが、散りばめられるセリフがとにかく微に入り細に入り見事。しかも音楽と美しい映像が見事にマッチングしていて、最高の大人のラブコメディに仕上がっていました。よかった。ただ一言良かったです。