くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「丼池」「伊豆の踊子」(吉永小百合版)「花嫁会議」

「丼池」

下手に軟弱な落とし所にせずに、徹底的に、上には上がいる物語を、軽快な大阪弁の機関銃のような応酬で徹底的に描いていく面白さは絶品。名作、傑作というより佳作という評価がピッタシの一品でした。監督は久松静児。さすがです。

 

船馬丼池の老舗問屋安本商店が差し押さえられて、品物を引き上げられる場面から映画は始まる。差し押さえにきたのは今風の高利貸しを始めた室井。徹底的に合理的に私情を挟まず丼池で店を構える。ただ、当初の開業資金に老獪な金貸平の婆婆から資金を借りていた。室井の元彼は丼池の老舗問屋園井商店で働く兼光という男だった。園井商店を舞台に、料亭のウメ子や、商売を始めようとしてやって来たマサらを絡めての丁々発止の金の物語が展開する。

 

園井商店の店主忠兵衛は株で一儲けしようと金を借りようとし、そこにつけ込んだ平の婆婆らが画策を始める。しかし、室井は平に婆婆と縁を切るために宝投資という投資信託で金を集め、平の婆婆に金を返済。それに気を悪くした平に婆婆は室井の宝投資を潰すべく暗躍、さらにウメ子の陰謀も絡んで、とうとう、園井商店は潰れてしまう。さらに宝投資の破綻で室井も倒産の危機に。

 

詐欺まがいの行為に裁判沙汰を覚悟した兼光や室井の姿で映画は終わっていくが、陰湿さは全くなく、古き良き大阪商人の世界を描いていく。お金を小汚く描いているようで、そこは非常に現実的に押さえる現実は押さえている演出も見事。久松監督の手腕が光る一本でした。

 

伊豆の踊子」(吉永小百合版1963年版)

有名な原作を元にした作品ですが、映画が実にしっかりしている。吉永小百合のアイドル映画ではあるが、現実的な残酷さはちゃんと描いている展開は見事。ストーリー展開も厳しすぎるほどに残酷にたんたんと描いていく姿は、名作とまでは行かないまでもクオリティはなかなかの仕上がりになっています。素直に良かった。いい映画でした。監督は西川克己。

 

大学の教室、一人の教授が授業をしている。帰り道、学生に、恋愛相談をされ、40年前、伊豆の下田へ一人旅に出た時のことを思い出して映画の本編が始まる。

 

伊豆へふらっとやって来た川崎は、道で旅芸人の一座と出会う。その中に一人の少女薫を見つける。薫も川崎のことが気になり、川崎は何かにつけてその一座が気になり、一緒に行動するようになる。下田に着いた一行は、薫が活動に連れて行ってほしいと執拗に川崎に頼み、川崎も楽しみにしていたが、旅芸人の踊り子が書生に恋焦がれることを危惧した一座の母は、予定していなかった座敷の仕事入れてしまい、薫は活動に行けなくなる。一方川崎も、そろそろ東京に戻らなければいけないと反省して、翌日下田を離れることにする。

 

落胆してしまう薫だが自分の生まれを受け入れ、座敷で踊りを披露する。一方の川崎も後ろ髪を引かれるようになりながらも、薫を忘れようと決心する。翌朝、一座の男士に見送られ東京へ向かう船に乗り込む川崎。薫は一人起きて港へ向かう。しかし、すでに船は出たところだった。

 

岸壁から必死で手を振る薫の姿を認めた川崎も手を振り二人はそのまま別れてしまう。現代になり、若い二人を見ている年老いた教授=川崎の姿で映画は終わる。本当にしっかり作られた文芸映画で、見ていて、いつの間にか現実の厳しさを感じつつも若い二人の一時の恋物語に胸を打たれてしまいます。いい映画でした。

 

「花嫁会議」

オールスターキャストで、そのオールスターキャストというのを逆手に取って遊び心満載で作られた娯楽映画という感じで楽しかった。少々ストーリー展開は雑だけれども、どこかほのぼの癒される空気感のある作品でした。監督は青柳信雄

 

この日、チャキチャキの江戸っ子の元吉の見合い話で相談をしている弟の次郎の場面から映画は始まる。見合い相手はいかにも浪速っ子という大阪女千代子。元吉は、そんな千代子を受け入れない。一方千代子も元吉の家の二階に住まいする女が気にかかって、踏ん切れない。

 

そんな頃、次郎の家に、会社の専務に頼まれて丹波という、なんとも図々しい男が居候にやって来る。丹波に翻弄される次郎の家庭の物語に、次郎の娘とその恋人のエピソード、さらに、覆面歌手として活躍する雪枝のエピソードなども絡んでくる。

 

そして、丹波が、実は船の設計で優秀な人物で、コンクールで優勝。次郎の家族は態度を改めて、丹波の授賞式のために散髪に行かせるが、なんと帰って来たら水も滴るいい男=池部良に変わっている。その展開から次々とカップルが生まれ、元吉と千代子もうまく行って、全員の集合写真で映画は終わる。

 

全くたわいのない映画だが、あちこちに出てくるトップスターたちの配役が実に楽しい一本で、まさに映画産業黄金期のお遊び心満載の作品でした。