くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「喜劇駅前弁当」「ソイレント・グリーン」(デジタルリマスター版)「祝日」

「喜劇駅前弁当」

楽しい映画だった。たわいないお話なのですが、芸達者な喜劇陣の巧みな、しかも機関銃のようなアドリブ演技の応酬から、大物俳優をすっと挿入してラストを締めくくる組み立ての妙味が絶妙。日本映画黄金期の娯楽映画とはいえ、見終わって面白かったと劇場をでられる心地よい映画でした。監督は久松静児

 

東京から三時間、大阪から四時間で着く浜松の駅、地元の鰻弁当で有名な互笑亭の弁当を売る織機屋の金太郎とストリップ小屋の主人孫作の姿から映画は幕を開ける。二人は互笑亭の女主人で、夫を亡くした景子をこよなく慕い、この日も、弁当屋の手伝いに出ていた。景子には弟の次郎がいたがオートレースにはまっていて店を手伝おうとしない。そんな互笑亭に大阪から倉持という男が、事業の話をもってやってくる。

 

映画は、金太郎と孫作の軽快などたばた喜劇の合間に、景子が倉持から持ちかけられる話、さらには再婚話、次郎の恋人とのラブロマンスなどが交錯して賑やかに展開していく。そんな時、景子の夫の大学時代の親友で景子の元カレで実業家の村井が浜松に立ち寄る。たまたま、村井は倉持を見かけ、彼が詐欺師だと景子に忠信したことから村井と景子の恋が再燃。

 

そんな頃台風がこの地を襲い、駅で立ち往生した列車の客に弁当を準備することになり、次郎も大活躍。そして次郎は付き合っていた娘と結婚して店を継ぐことを景子に告白して景子を自由にすることにする。金太郎や孫作の落胆をよそに、村井と一緒になることになった景子が東京へ旅立ち、二人を見送る金太郎と孫作の姿で映画は終わる。

 

シンプルな人情ドラマですが、さすがにこれだけ芸達者を揃えると、演出が何もしなくてもそれなりに回っていく。そして終盤だけピリッと引き締めて映画をまとめた久松静児の力量を目の当たりにする映画でした。楽しかった。

 

「ソイレント・グリーン」サイモソン、ソーン刑事

スクリーンで見直したのは40年ぶりくらいか、ーほとんどのシーンを覚えていた。この映画の舞台となった2022年はすでに過ぎて、さすがに時代の矛盾が見えるので、当時の衝撃は無くなったものに、スピーディな展開とメッセージをストレートに訴えかけてくる手腕は見事な一本でした。監督はリチャード・フライシャー

 

2022年ニューヨーク、人口爆発と自然破壊の結果、ー人類は価値手の自然な食糧は一部の富豪が独占し、一般市民は毎週火曜日に配給されるソイレント・グリーンという海洋プランクトンから作られた食料で日々を凌いでいる。ここに、ソイレント社の重役であるサイモンソンは、家具と呼ばれる伴侶の女性シャーンをダグというボディガードをつけて買い物に出す。その頃、何やらバールのような武器を手にした男がサイモンソンの部屋に押し入ってきて、抵抗もしないサイモンソンを殴り殺してしまう。

 

大富豪の殺人事件ということでソーン刑事が捜査することになる。ソーン刑事はソルと呼ばれる本という役割の知識人と一緒に暮らし、本と呼ばれるソルはソーン刑事の依頼でさまざまな過去の文献を調べて協力していた。ソーン刑事はサイモンソンの殺害現場に行き、酒や石鹸、リンゴなどをくすねて、シャーンに優しい言葉をかける。物としてしか扱われないシャーンはソーン刑事の言葉に心が揺れ始める。

 

ソーン刑事は、サイモンソンがソイレント社の役員だったことを突き止め、納得の上で殺されたことから、ー彼が最後に会った教会のパオロに会いにいく。サイモソンが何を告白するために出かけたのだが、一方で上層部から操作の打ち切りが告げられる。納得いかないソーン刑事はサインしなかったため。命を狙われ始める。しかも上司のハッチャーとタグはグルだった。

 

ソルは、ソーン刑事が持ち帰った食べ物を食し、サイモソンの事件の調査を進めるが、その過程でソイレント社の謎を知ってしまう。そして全てに絶望したソルはホームへ行くことを決意する。ホームとは、安楽死を行い施設だった。そこへ行ったことを知ったソーン刑事は慌てて施設に行くが間に合わず、ソルは美しい景色の中死んでいく。多田、最後にソルは、交換所へ行けとソーン刑事にヒントを与える。

 

ソーン刑事は、死体を搬送する車に忍び込み、死体処理工場へ潜入、そこで、死体がソイレント・グリーンに変わる真実を目撃してしまう。すでに海洋プランクトンは死滅していたのだ。ソーン刑事は、工場を脱出するが追ってきたダグの銃弾を浴びてしまう。駆けつけた上司のハッチャーが、ソーン刑事を搬送させるが、ソーン刑事は搬送される単価の中で「ソイレント・グリーンは人間だ」と叫んで映画は終わる。

 

悲劇的な結末が衝撃の一本で、シンプルなストーリー展開と、サスペンスフルな面白さも兼ね備えていて、やっぱり名作だなと思います。

 

「祝日」

辛辣な出だしをファンタジーで覆い尽くしていく展開がちょっと面白い映画だった。画面作りや、ロケーション舞台にもこだわった演出は上手いし、ラストに向かってじわじわと心に沁みる暖かさが見えてくる展開も素敵。小品ながら、ちょっと好きな映画だった。監督は伊林侑香

 

一人の少女希穂が、首を吊っている父の姿を見つけたところから映画は幕を開ける。どうやら職場で濡れ衣を着せられたような説明と、その後希穂の母は新興宗教にはまった末、結局希穂を捨てて出ていき、生活費だけポストに入れるようになった。この日、希穂はいつものように学校へ行くが祝日で休みだった。希穂は一人屋上に登り飛び降りようとするが、天使だと名乗る女性が現れ、「明日のほうがいいよ」と声をかける。

 

天使という女性は鼻血を出していた。しかも、体を手に入れたら翌日には死んでしまうのだという。その天使が馬場チョップをしてみたいと言って希穂とふざけたことから、天使のことを馬場さんと呼ぶことになる。二人は喫茶店に入り、ロコモコを頼むが、普段プリンと野菜ジュースだけの希穂は食べなかった。お金を払おうとしたら80円足りず、店員の女性は、その80円を建て替える代わりに最近習っている社交ダンスを見せる。

 

希穂らが外に出ると、蟻を踏み殺してしまったのでと謝っている小学生の女の子と出会う。さらに、散らかったトランプを拾い集めているマジシャンに出会う。彼は、幼い娘と逸れてしまい、マジシャンの格好をしていたら気がつくかと探しているのだという。公園に来た希穂の所に、クラスメートの女の子が塾帰りだと声をかけてくる。馬場さんは泥人形で雪だるまを作っている。

 

橋を渡っていると、パントマイムをしている青年とすれ違う。希穂の家にやってきた馬場ちゃんだが、お腹が空いたから麻婆豆腐を食べようということになり外に出る。そして中華屋さんに着くが、そこの主人は店を開けられないのだという。しかも、妻と娘を事故で亡くし、それ以来喪服を着ているのだという。主人は希穂らのために麻婆豆腐を作ってやる。希穂が食べ終えると、主人は、娘の天使が、喪服を脱ぐようにうるさいので脱ぐことにしたという。

 

主人は喪服を海岸で燃やすというので、希穂らも一緒に行く。やがて夜が明け、希穂らは主人と別れ学校へ向かう。途中、マジシャンが蟻を殺した小学生にマジックを見せていた。マジシャンがトランプを散らかしたので、希穂らが拾い始めると、カフェの女性がやって来る。マジシャンはその女性が自分の娘だとわかる。そこへ希穂のクラスメートが小学生のところに駆け寄る。自分の妹なのだという。マジシャンは、今度もっとマジックを上手になるからと娘と去っていく。

 

希穂と馬場さんは学校にやってきたが、いつのまにか馬場さんは消えていた。屋上に上がった希穂は、屋上の端に立ち、飛び降りずに後ろにひっくり返り、映画は終わる。

 

不思議なお話を、さりげなくいろんな人物を登場させて、主人公が前向きになる再生のドラマとして描いていく脚本がとっても上手い。大傑作ではないけれど、みて良かったなあという映画だった。