くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロミオ+ジュリエット」(バズ・ラーマン監督版)「キャラクター」

「ロミオ+ジュリエット」

午前十時の映画祭でようやく見れた。シェークスピアの古典「ロミオとジュリエット」を舞台を現代に置き換えて、モダンかつサイケデリックな映像で描いていく作品。とにかく目まぐるしいほど騒がしい展開なので、悪く言えば俗っぽさが前面に出てしまって、原作の格調高さはそっちのけになっていくが、ラストまで突っ走っていくバイタリティに飽きずに見入ってしまいます。若き日のレオナルド・ディカプリオがとにかく美しい映画でした。監督はバズ・ラーマン

 

テレビが画面に登場し、キャスターがこれから起こる悲劇を語って物語は始まる。ヴェローナの街、巨大な像が立ついかにも雑多な景色を俯瞰で捉えて、仲の悪いモンタギュー家とキャピュロット家の若者たちを、不良集団の如く描写して物語は始まる。この日も喧嘩をしてひと騒動を起こした両家は警察から厳しい叱りを受ける。

 

モンタギュー家のロミオはこの日もそんな喧騒はどこ吹風で一人思春期の物思いに耽っていた。彼の親友のマキューシオがそんなロミオに話しかける。そして、キャピュロット家のパーティに行こうと誘う。

 

仮装パーティで忍び込んだロミオたちだが、そこでロミオは羽をつけた美しい女性ジュリエットと出会い一目惚れしてしまう。そして一気に二人の恋は盛り上がり、結婚の約束をして別れる。

 

ところが、そんなこととは知らないマキューシオたちが、やってきたキャピュロット家のティボルトたちと喧嘩になり、ロミオが割って入った拍子にマキューシオがティボルトに刺し殺されてしまう。親友を殺されたロミオは正常心をなくし、執拗にティボルトを追い詰めて殺してしまう。警察はロミオを街から追放することにする。一方キャピュロット家ではジュリエットの結婚相手を勝手に決めてしまう。

 

全ては両家の諍いからのことと考えるハロルド神父は、ジュリエットに仮死になる薬を与え、葬儀を行わせた上で、ロミオに迎えに来させ、二人で街を出るようにと策を練る。しかし、その計画を知らせるはずの手紙がロミオの元に届かず、モンタギュー家の男がジュリエットの死をロミオに知らせてしまう。

 

慌てて戻ったロミオは、毒薬を手に入れ、ジュリエットの墓所へ向かう。そしてジュリエットに最後の別れを告げるが、そこでジュリエットは目を覚ます。しかし時すでに遅く一瞬間に合わずロミオは毒薬を飲んでしまう。悲しみに打ちひしがれたジュリエットはロミオが持っていたピストルを手にして自ら死んでしまう。二人の遺体が運び出され、警察署長が、両家の諍いが生んだ悲劇だと語って映画は終わっていきます。

 

細かいディテールの変更はあるものの、オリジナルを踏襲したストーリー展開は変わらず、独特の映像表現で綴っていく面白さはあるのですが、前半の泡立たしさがどうも私には合わなかった。ラストの処理は実に美しいのでそこだけは評価したいけれど、個人的にはあまり好みの作品ではない感じです。

 

「キャラクター」

これは傑作でした。ここまで研ぎ澄まされ書き込まれたオリジナル脚本は久しぶりに見ました。余計な経緯のシーンを一切カットして、一気に次の展開へ変化させていくストーリー転換の妙味、演技を抑えさせた中に力強さを作り出した演出、その場その場の登場人物の状態を的確に見せる美術、どれもが何度も練り込んだ末に生まれた一つ一つに見え、しかも、予測させない切り替えを繰り返すことで見る人を最後まで釘付けにする。ここまで書かれると、下手な脚本は踏みつけてしまいたくなります。終盤、若干ネタが見えてしまったけれど、それでも、上手い。ただひたすら上手い。その一言に尽きる傑作でした。監督は永井聡

 

アパートの一室の窓を捉えるカメラから映画は始まる。まるで「市民ケーン」のオープニングのようです。そしてその一室、一人も漫画家山城圭吾が一心不乱に絵を描いている。今時珍しいペン書きの原画。編集者の大村に見せるべく最後の仕上げを描いている。彼の同棲している恋人夏美が傍にやってくる。徹夜続きの末、ようやく完成し、大村のところへ持ち込むが、絵は上手いが登場人物が描けていないと返されてしまう。

 

アシスタンを務めている本庄先生に漫画から足を洗うと告げ最後の仕事に向かう。深夜、本庄が平和そのものの家のスケッチが欲しいと言い出すが、アシスタント全員多忙で手が離せず、圭吾が手をあげて探しに出かける。そして一軒の家を見つけスケッチしていると、隣の家から、音がうるさいからと怒鳴られる。スケッチしている家からは大音声でクラシックが流れていた。圭吾はインタフォンで声かけするが返事がないので、仕方なく玄関へ入る。ところが、ダイニングでこの家の家族らしい四人が椅子に縛られ惨殺されていた。

 

その場に腰を抜かす圭吾だが、庭を抜ける一人の人物を目撃する。明らかに犯人と思しき人物で、髪を染め不気味に振り返った。警察が駆けつけるカットから一気にメインタイトル。このオープニングが実に上手い。

 

しかし、警察の聴取では、圭吾は目撃したことを話さなかった。そしてしばらくして、圭吾の漫画がベストセラーになった場面へ一気に飛ぶ。彼の書いた漫画に題名は「34」、目撃した一家惨殺事件を扱ったサスペンスだった。事件を追う真壁、清田の両刑事は、近くに住む十六歳の時に惨殺事件を起こした辺見という男を逮捕、すぐに自白したので本星となる。

 

山間の道を走る一家四人を乗せた車、途中故障者らしい車を発見し、しばらくいくととぼとぼ歩く青年。車がその青年を乗せてやるのだが、冒頭の事件の真犯人である。次のカットで、崖下に落ちた車。中から4人の惨殺死体。辺見の自白に疑問を持つ清田と真壁が駆けつけ、車の中の死体を見、さらに天井から凶器のナイフを清田が発見する。それは、先日読んだ「34」の展開そのままだった。

 

清田は圭吾のところにやってくる。今や売れっ子の圭吾は億ションに住み、大きな仕事場でデジタルで作画を続けていた。清田が「34」に絡めて先日の惨殺事件について詰め寄るも、圭吾は犯人を見たことは話さなかった。その場は清田は帰る。圭吾は息抜きにガード下の居酒屋に行く。そこへ清田が現れる。つけてきたのだが、偶然を装い、自分の名刺を渡そうとする。本署からの電話で清田が外に出る。一人飲む圭吾の傍に突然真犯人が現れる。彼は両角と名乗り、車の天井から発見されたナイフのアイデアを語る。それは、最初の一家惨殺事件に使われたものとすることだった。圭吾は夏美の勧めで圭吾の実家に挨拶にやってくる。夏美は妊娠していた。和気あいあいとする圭吾の家族とのひととき。

 

連載漫画の流れと事件の流れが見事に一致していくことに清田はさらに興味を持っていく。ある時、圭吾は夏美が病院へ行ったところへ出迎えに行く。その帰り、駐車場で突然、両角に声をかけられる。その不気味さに、圭吾は夏美に全てを話し、清田刑事を呼んで、自分が真犯人を見たことなど全てを話す。そして連載も中止すると編集者に伝えにいくが、一旦休載にしてほしいと頼まれる。辺見は冤罪ということになり釈放、警察は両角の行方を探し始めるが、両角と思われた人物は自分の戸籍を誰かに売っていた。

 

圭吾は、休載になった自分の本を本屋で見ていると、突然両角が現れ、休載にしたことを責め、休載になっても犯罪はやめないと宣言する。そして新たな家族が犠牲になる。

 

事件が振り出しに戻る中、清田が漫画と実際の写真を見比べていて、あまりに場所が似ていることに不信を感じる。原作が先にあったのに模倣した事件の現場がそっくりすぎるのだ。早速圭吾を訪ねる。圭吾は、自分が舞台にした場所の近くにかつて四人家族が幸せの基本だとする新興宗教のようなコミュニティがあったと資料をだしてくる。そこから、両角が、その時の家族の一人なのではないかと推測し、圭吾のマンションを後にする。

 

帰り道、真壁から電話が入り、ことの進捗を報告する清田は陸橋の上にいる若者を見つける。それは圭吾が本屋で声をかけられた男に似ていた。次の瞬間、目の前に辺見がいた。そして辺見は清田を滅多刺しにして殺してしまう。清田の葬儀の日、圭吾はある提案を真壁にする。

 

休載と決めた漫画を再度描くことで、それを模倣する両角を誘き寄せるというものだった。そして幸せな家族として、圭吾の実家をモデルにする。真壁刑事が部下を連れて圭吾の実家にやってきて準備を進めるが、そこへ、両角から圭吾に電話が入る。本当の幸せな四人家族でないとダメだという。彼は圭吾の実家がそれなりに問題のあることを知っていた。そしてターゲットにしたのは夏美だった。夏美は双子を身ごもっていたのだ。

 

必死で夏美の元に戻ってくる圭吾だがマンションの入り口で両角がまちかまえていて、圭吾は刺されたまま部屋に転がり込む。夏美も足を刺される中、両角が最後の一撃を加えようと圭吾の胸にナイフを向けるが防弾チョッキを着ていた圭吾の胸にナイフが弾かれる。その隙にナイフを奪った圭吾は両角を返り討ちにして刺す。さらに刺し殺そうとするところへ真壁刑事が駆けつけ、発砲して警護を止める。

 

冒頭のような窓、中は病室で、圭吾が寝ている。傍に夏美、そして双子を乗せたベビーカーがある。裁判所、両角が法廷に出てくる。裁判官の呼びかけに、名前も生年月日も言えない両角。そして辺見をそそのかして清田を殺させたのは自分だと語る。両角の部屋の壁に一面にはられた写真の一枚に、部屋を物色する清田の写真もあった。両角の部屋を調べる刑事たち。両角宛に辺見からの大量の手紙が見つかる。法廷で、両角はかつて辺見に憧れ手紙を書いていた時期があった。しかし次第に辺見は両角にファンになったと供述する。

 

病室を出た夏美が不動産屋に来ているカット、傍にベビーカー、何かを感じて振り返るカット、法定で裁判官が両角を問い詰める、病室を訪れた真壁、そして圭吾のカットで暗転エンディング。エンドクレジットの最後に、ナイフを研ぐような音が入っている。

 

圧倒されるリズム感で一気に展開していく削り込まれた脚本が生み出す緊張感に引き込まれます。殺戮シーンや、圭吾が売れていく過程など余計なシーンはバッサリ切って、前に前にぐいぐいとストーリーを引っ張っていく構成が実に見事で、久しぶりに贅肉のない傑作を見た感じです。居酒屋で何気なく両角の似顔絵をかいたコースターを清田が見つける下りや、そこかしこにさりげなく挿入していく無駄のない伏線の貼り方も絶妙で、拍手したくなった。久しぶりに傑作を堪能しました。