くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「RUN/ラン」「グリード ファストファッション帝国の真実」「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」

「RUN/ラン」

なんの工夫もない普通のB級サイコスリラーでした。今更というサイコママが登場して、執拗に子供を可愛がるがそれがそれが異常という展開に新しさはなく、B級ならもっと思い切って斬新なことをすれば面白いのになんの変哲もなかった。監督はアニーシュ・チャガンティ

 

未熟児の新生児の蘇生処置がされている場面から映画は始まり、母親らしき人がやってくる。そしてなんとか保育器の中で呼吸している風な新生児だが次の瞬間カットが変わり、さまざまな病気の症状のテロップ、画面が出るとその症状を持つ主人公クロエのシーンとなる。

 

大学進学希望している彼女は日々合格通知を待っている。喘息で皮膚にも疾患があり糖尿、かつ両足が不自由で車椅子生活をしている。母のダイアンは献身的に世話をしているが、いかにもおかしいのが最初から見え見えである。

 

ある時、クロエに新しい薬が加わる。気にせず飲んでいたが、たまたまスーパーの袋を開けた時に薬の名前が母親宛になっていたので不審を抱く。なんとか調べようとするもネットも繋がらない。そこで、映画に観にいきたいと母を誘い、飲まずに貯めていたグリーンカプセルを手に町へ行く。そして母の目を盗んで薬局に駆け込み、それが動物用の筋弛緩剤だとわかるが駆けつけた母に注射され意識を失う。

 

翌朝気がつくと、クロエは部屋に監禁されていた。なんとか窓から脱出し、自室のドアを開けて車椅子で降りようとして階段の昇降機が壊されているのを発見、転がり落ちるように落ちたが、その時足が少し動くことに気がつく。

 

車椅子で脱出し、通りかかった宅急便の配達員トムに助けを求めるが、帰ってきたダイアンはトムに注射をして再度クロエを拉致し地下室へ閉じ込める。地下室でクロエは、ダイアンの新生児は生後間も無く死んだこと、幼児誘拐されたという新聞記事を発見、自分は誘拐されたと知る。ダイアンが入ってくるがクロエは物置に逃げ、劇薬を飲んでダイアンに無理やり救急車を呼ばせて病院へ逃げる。ところが、隙を見て母に再度拉致され、病院を逃げ出そうとするがエスカレーターの上でクロエは足を踏ん張りダイアンの動きを阻止する。そこへ駆けつけた警備員にダイアンは撃たれてエスカレーターから落ちる。

 

七年が経つ。クロエはほとんど足が治ったもののまだ車椅子だった。ダイアンが収容されている施設へ行ったクロエは口の中に隠していた薬を吐き出して、またお薬の時間よ、と母に飲ませようとして映画は終わる。

 

これという斬新なシーンもなく、こうだろうなという展開で普通にラストまで流れて行くサイコサスペンスで、もう一工夫しても良かったんじゃないかと思う映画でした。

 

「グリード ファストファッション帝国の真実」

金を儲けることしか頭にない一人のファストファッション界の経営者の半生をブラックユーモアで塗り固めて描いたなかなかの秀作。さまざまなメッセージを織り込んだ物語の積み重ねが実に面白いし、主人公を徹底的にデフォルメした演出も見事、映画のテンポも良いし作品のレベルはなかなか高い一本でした。監督はマイケル・ウィンターボトム

 

ファストファッションブランドのモンダの貢献者を表彰する社内パーティで映画は幕を開ける。そして、生み出された巨額の利益の配当は社長リチャードの妻サマンサへ送られてカットが変わる。

 

六十歳の誕生パーティをギリシャのミコノス島の海岸にローマのコロッセウムを作って行うという企画が進んでいた。リチャードの伝記を書くために呼ばれたニックが、リチャードの過去を語りながら、物語は誕生パーティの五日前に戻る。コロッセウムのセット製作が進まない中、さまざまな物語が展開して行く。

 

リアルストーリーを映画に仕上げるために撮影している場面、海岸に不法に居住している難民たちの物語、母がリチャードの異常な値切り行為の犠牲になった末に死んでしまったが、リチャードの下で今は働くアマンダの姿、などを現代の流れとし、リチャードがいかに強引に値切りながら経費を徹底的に抑えて、さまざまなブランドを買収しては潰しながら成長して行く姿を描く。スリランカやミヤンマーの縫製工場にぎりぎりの賃金で仕事をさせるリチャードの姿も次々と描く。

 

さらに、彼が買収したM &Jの倒産事件で裁判になっている法廷シーンを交えながら、次第にパーティの日当日へと流れて行く。コロッセウムのセット、当日は全員ローマの衣装を着て、さらにライオンも檻に準備してグラディエーターの再現も計画されている。トップスターをオファーするも金が高いと文句を言ったリチャードに、そっくりさんを呼ぶことでまとまって行くくだりも面白い。

 

やがてパーティ本番の夜、エキストラのように雇った難民の子供たちが勝手に食器を盗み始めたり、食堂で勝手に食事をして騒動を起こしながらも、パーティは進んでいく。どうにも元気が出ないライオンだが、酔った客がライオンの餌にドラッグをまぶしてしまう。一方、パーティに疲れたリチャードがコロッセウムに入り、ライオンに蘊蓄を垂れ始める。興奮したライオンとリチャードが対峙するのを見ていたアマンダは、ライオンの檻をあける。その様子をニックは黙認する。それは、誰もがリチャードに抱く気持ちの総意でもあるかのようだった。飛び出したライオンはリチャードに襲いかかりリチャードは食い殺されてしまう。

 

リチャードの息子フィンが後を継ぐが、彼もまた狂った様に、金の亡者だった。ニックが書いた伝記は大ベストセラーとなる。ニックはアマンダの家を訪ねる。彼女はまた新しい縫製工場に勤めていた。縫製工場で働くアマンダたちの場面にABBAの「マネーマネーマネー」が流れて映画は終わる。まさにブラックだ。

 

なかなかクオリティの高い作品で、移民問題や第三国の労働者の搾取など様々な問題をブラックユーモアで包み込んで描いた表現力は見事なものです。中身の深い作品を堪能いたしました。

 

クワイエット・プレイス 破られた沈黙」

脚本の甘さは今回も同様で、連続ドラマの様な様相を呈してきた感じで、エピソードが小さくなってきたのがなんとも残念ですが、まあ面白かったから良いとしましょう。監督はジョン・クラシンスキー。

 

人気のない街に一台の車が入ってくる。乗っているのはリーで、これから息子マーカスの野球の応援に出かけるべく買い出しをしにきたのだ。町中が少年野球を見ている風で、娘で耳の悪いリーガンと妻のエヴリンも来ていた。友人のエメットも応援していたが、突然空に何やら落下してくるのを見つける。その場の人たちは、異常事態だと避難を始めるが、突然正体不明の化物が街を襲う。リーは子供らを連れて逃げるが、何故か音を立ててはいけないのをみんなが知っているという?の流れから物語は約1年半後へ。

 

生存者を求めてサバイバルを続けるエヴリン、マーカス、リーガン。この日、新たな灯を見つけてなんとかたどり着くがそこにはエメットが一人で暮らしていた。その住まいに入る時に、仕掛けていた罠にマーカスは足を挟まれ怪我をしてしまう。なんとかエメットの隠れ場所で夜を明かすが、持ち歩いているラジオから音楽が聞こえてきて、生存者が他にもいると判断する。

 

一方リーガンは化け物の動きを止める補聴器から出る雑音をそのラジオに流せないかと考え、ラジオの発信局が少し離れたところの島からだと突き止めて、一人で隠れ家を出て行く。エヴリンに頼まれ、リーガンを連れ戻すためにエメットが向かう。エヴリンは、マーカスの傷の手当てのために薬を調達に町へ行く。マーカスは赤ん坊と留守番をするが、何故かマーカスは勝手に隠れ家の中を物色し、音を出してしまって化け物に気づかれる。例によってとってつけた様なピンチな展開。

 

エメットは、リーガンが化け物に襲われているところに駆けつけ、リーガンを助け、リーガンに説得されて、島へ向かうことにする。港で船を探しているところで、エゴの塊の集団に襲われるが、エメットの機転で化け物を使って脱出。なんとあの化け物は泳げないのだ。

 

島に辿り着いたエメットとリーガンは島の避難民の一人に、リーガンの作戦を実行してもらうように頼み了承される。にもかかわらず、すぐにやらないので、たまたま流れ着いたボートに隠れていた化け物が島を襲ってピンチになる。化け物を誘き寄せながらエメットとリーガンは車で放送施設のある建物へ向かう。そして、あわやというところで雑音をスピーカーに乗せて化け物の動きを止め、退治する。

 

そんな頃、化け物に追い詰められたエヴリンたちもピンチになっていたが、ラジオから流れてきた雑音を化け物に向けて、マーカスが化け物を撃ち殺して退治する。こうして映画は終わるが、一体この家族は食べ物をどうしていたのか?そのあたりの描写が全くないのはなんとも不思議。前作同様、かなり雑な脚本ですが、まあ面白かった。