くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「真昼の決闘」「ロケーション」「堀の中の懲りない面々」

「真昼の決闘」

なるほど、これは傑作です。ジョン・フォードが描く勧善懲悪の西部劇とは一線を画した人間ドラマとして、そのリアリティに圧倒されます。なんと言っても物語のスタートからクライマックスの12時までの約90分ほどを時間の流れそのままに展開するストーリーは圧巻。監督はフレッド・ジンネマン

 

一人の男が荒野で佇んでいる。彼方から仲間らしい男がやってきてやがて三人になる。背後にメインテーマ、そしてタイトルが被る。カットが変わると、ハドリービルという西部の街、この日、保安官のウィルは、結婚を機に職を辞する予定で盛大な結婚式が行われていた。妻のミリーと幸せが待っている祝福された場面、一方で、列車の駅に冒頭の三人が向かってハドリービルの街を通る。誰もが振り返るのだが彼らは、5年前ウィルに逮捕されたミラーの手下と弟で、ミラーが釈放されウィルに復讐にやってきたのである。駅に着いた三人はミラーが乗ってくる列車の到着が12時だと聞く。

 

駅員がウィルにミラーがやってくると知らせ、ウィルと妻のミリーはその前に街を出るべく馬車に乗り走り出すが、逃げることに抵抗を覚えるウィルは馬車を引き返し街に戻ってくる。そしてミラーを迎え撃つべく応援を集め始める。そんなウィルを見てミリーは一人で街を出る支度を進める。

 

ウィルは、街の人々に応援を頼んで回るが誰も引き受けようとしない。時間は刻々と迫ってくる。友人にも断られ、疲れ果て、一人で立ち向かうことを決心し、遺書も準備するウィル。一方、ミリーも列車に乗ろうと、ウィルのかつての女ヘレンと駅にやってくる。やがて列車が来てミラーが現れ、仲間と街に向かう。そして不意打ちでウィルは一人を倒す。その銃声で、ミリーは戻ることを決意、街の一軒に隠れる。

 

ウィルは、残る三人を巧みに誘き寄せながら一人倒し残る二人となる。そして、ミリーが一人を倒し、残るミラーと一騎討ちになるが、ミリーがミラーに捕まる。ウィルは姿を出し、ミリーの機転もありミラーを倒す。ミラーが死んだことで隠れていた街の人たちがぞろぞろ出てくる。ウィルはミリーと馬車に乗り、保安官バッジを地面に投げ捨てて去っていく。こうして映画は終わる。

 

人間の本当の姿をリアルに描き切る演出の素晴らしさ、物語の時間と映写時間を同時進行させる緊迫感あふれる映像、スクリーンを意識した見事な構図、これぞ名作と呼ぶにふさわしい一本でした。

 

「ロケーション」

映画イン映画ではあるが、リアルのドラマが映画のドラマになり、それがひとつのドラマに仕上がる展開の面白さは絶品。相当荒削りな演出ではあるけれど、勢いで撮って行った迫力がそのままスクリーンから伝わってきます。面白かった。監督は森崎東

 

海岸で、カメラマンが吊り下げられて撮影しようとする場面から映画が始まる。ピンク映画の撮影に四苦八苦する主人公のカメラマンベーやんのチームの奮闘が延々と展開、女優である奈津子とはいい仲だが、奈津子からはピンク映画はやめてほしいと言われ、ホカ弁屋をすると言っているものの、呼ばれれば飛び出していくベーやん。

 

撮影中の女優が抜けて、たまたま風呂屋の掃除婦だった笑子を女優にして、撮影を続けるが、監督が急病で入院、ベーやんが引き継いで続行するも、笑子は故郷の墓参りに行くという。そこで福島まで追いかけてそのまま撮影するものの、笑子の過去が見えてきて、最後はその現実を映画にしていくことになり、ベーやんらは大傑作を完成させる。しかし、その作品は配給会社がノーと言って突っ返してしまう。フィルムを抱えて帰ってきたベーやんだが、また次の日から、がむしゃらな撮影の日々が始まって映画は終わる。

 

それこそ、傑作とかそういう作品ではありませんが、バイタリティあふれる作品で、妙なジメジメもなく見ていて心地よい映画でした。

 

「堀の中の懲りない面々」

ベストセラー小説の映画化で、これということもありませんが荒唐無稽に展開していく物語は、フィクションでもありノンフィクションでもある若々しさのある一本でした。監督は森崎東

 

刑務所内、囚人たちが風呂に入る場面から映画は始まり、一人が口笛を吹き出したことから、看守たちが強硬にやめさせる流れの中に、刑務所内の規則が語られていく。物語は囚人たちそれぞれの個性あふれるドラマをコメディタッチで次々と紹介していく。中心になるのは安倍というヤクザの話になるが、彼を取り巻く人たちの悲喜劇を楽しみながらラストまでいきます。

 

これという優れた何かがあるわけではないけれど、飽きることなく、気がつくとラストシーンでした。まあプログラムピクチャー的な娯楽映画という感じです。