くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スイング・ステート」「カンウォンドのチカラ」「オー!スジョン」

スイング・ステート

面白かった。期待してなかったけど、楽しめました。アメリカはこれほどまで下品な国になったと言わんばかりの展開を徹底した後にひっくり返す鮮やかさは拍手ものでした。監督はジョン・スチュワート。

 

ヒラリー・クリントンドナルド・トランプの大統領選、民主党共和党の対決場面のフラッシュバックから映画は始まる。そして、タイトルバックに歴代の大統領選の模様が映され、民主党選挙参謀として敗北したゲイリーの事務所へと画面は進む。そんな頃、ウイスコンシン州ディアラーケンの村の町議会、町長ブラウンの町議会の場に反対意見を述べるため乗り込んだジャックの姿が映る。その真っ当な意見具申の動画がネットに広まり、それを見たゲイリーはこれは使えるとディアラーケンの村へやってくる。ジャックを次期町長選に立候補させ、民主党のイメージアップを図ろうとしたのだ。

 

ゲイリーが来てみれば、いかにも長閑な農村というイメージの町で、一晩でゲイリーの名は街の人たちに広まるほど地域の連携がなされている田舎町。ゲイリーはジャックを説き伏せて町長選立候補を決め、参謀として娘のダイアナを巻き込んで都会的な選挙活動を始める。ところが、再選を目指すブラウンのもとに共和党選挙参謀でゲイリーの恋人でもあるフェイスが多額の選挙資金を背景に乗り込んでくる。

 

本気モードになったゲイリーは、寄付金集めに力を注ぎ、富豪から次々と大金を寄付してもらう。お互い接戦となる中、ついに投票日となる。ところが蓋を開けると、お互い一票づつに引き分けで、町民は誰も投票していなかった。全てはダイアナを中心にした町民たちが、街に寄付金を貰うため、当初の動画投稿から仕組んだものだった。結局、ゲイリーたちは利用されたのだ。しかも、今の選挙管理法では、寄付金の使途などは全く公表する必要がない。ダイアナたちはその金で街に公共施設を作る資金とする。ゲイリーとフェイスも呆れながらの恋人同士に戻って映画は終わる。エンドクレジットで、現代のアメリカの法律の穴をコミカルに見せていく。

 

とにかく、ゲイリーとフェイスのスラングだらけの応酬戦が、いかにもアメリカは下品だと言いまくってきますが、ジャックの笑顔が物語の本筋を崩さなかったという感じで、ラストのどんでん返しは完全にはめられました。面白かったです。

 

「カンウォンドのチカラ」

交錯する二つの物語のオーバーラップを楽しむ作品で、この監督の得意なパターンですが、男性の顔がうまく見分けられなくて、後半部分、しっかり理解できなかった。でも面白い映画でした。監督はホン・サンス

 

列車の中、ジソクが友達と現地集合でカンウォンドに旅行に行くために向かっている。二人の友人と合流したジソクは三人で観光を始める。そこで一人の警官と知り合う。三人が帰宅後、ジソクは一人で警官ともう一度会うためにカンウォンドに行く。その帰り、ジソクは高速バスの中で泣き、暗転。

 

大学の教授サングォンは後輩とカンウォンドにいく。列車の中で、後輩がビールなどを車内販売で買うがその時、ジソクの冒頭の場面と重なる。実はサングォンは学生であるジソクと別れたばかりだった。映画は、交錯する人間ドラマをオーバーラップを繰り返して描いていく。

 

顔がわかりづらくて、締めくくりの面白さはわかったのもののすっきり整理できずに終わった。出来れば後半をもう一度ゆっくり見直せたらと思います。それがホン・サンス作品の面白さなのですが、その点では十分堪能できました。

 

「オー!スジョン」

例によって交錯するストーリーが繰り返され、その微妙な相違が真実と思い出の狭間を描いていく手法を楽しむ一本。これが個性なので面白いのですが、では本筋はどれだったのかと考えてしまう作品でした。監督はホン・サンス

 

ジョフンがホテルからスジョンに電話しているが、都合が悪くなって来れないと言う。スジョンは自宅でこれまでを回想する。カットが変わり、ある画廊から出てくるスジョンとヨンス。遅れて画廊からヨンスの後輩のジョフンが出てくる。こうしてジョフンとスジョンは出会う。ヨンスは映画監督で、スジョンは構成作家である。後日、撮影に来ていたスジョンにジョンスは再会する。こうしてジョフンとスジョンは付き合い始める。

 

映画は、スジョンが回想する思い出を前半で、ジョフンの現実を後半で描き、やがて二人は結ばれるまでを描いていく。繰り返しの映像と、記憶と現実の微かなズレが映画の見せ場になるあたりはさすがにうまい。モノクロ映像も美しい作品で、全体の完成度はとってもいい感じに仕上がった作品でした。