くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クレマチスの窓辺」「明日になれば、アフガニスタン、女たちの決断」「北の橋」

クレマチスの窓辺」

平凡なローカリ映画かと思っていたが、意外に面白い作品でした。カメラが美しいので画面へのこだわりが感じられて素敵だし、どこか今泉力哉ホン・サンスを意識した演出も楽しい映画でした。監督は長岡俊幸。

 

東京育ちの絵里は、無くなった祖母が暮らしていた水辺の古民家にやって来るところから映画は始まり、ここで過ごす一週間の中で出会う様々な人々との恋流を淡々と描いて行きます。

 

従兄弟と会い、彼のフィアンセと会い、考古学の教授と会い、バックパッカーと会い、靴屋をしている若者と会い、古民家再生をしている女性と会う。何気なくこの地の空気を感じ取りながら、少し自分に変化を感じて、一週間のバカンスを終えて帰っていく。

 

これということもなく淡々と描かれる日々が、光を意識した美しいカメラで捉えていく絵づくりはとっても好感で、中編ですが、見て損とは思わない映画でした。

 

「明日になれば、アフガニスタン、女たちの決断」

アフガニスタンの女性蔑視の現実を徹底的に描く作品で、出て来る男は全員クソ男だし、いまだに古い慣習のままだというを徹底的に描いていく。それが現実かどうかはわからないが映画としては普通の作品でした。監督はサハラ・カリミ。

 

妊娠中のハヴァに、義父が小間使いのように命令している場面から映画は幕を開ける。義父は小鳥の世話に夢中で、猫退治の鼠取りの罠を準備している。痰壺をハヴァに持ってこさせるも、礼一つ言わない。一方義母はほとんど動けない。夫は今夜も客が来るからとハヴァに準備を依頼して来る。ハヴァは仕方なく隣人の息子に買い物を頼む。ハヴァの唯一の楽しみはお腹の子供が動くことだった。

 

夫が連れてきた客の食事の準備をし、義父のわがままに答えるハヴァだが、食器を洗おうとして義父の作った鼠取りを踏んでしまい転けてしまう。それでも夫は労いの声もない。お腹の子供が動かないと気づいたハヴァは病院へ行きたいと夫に言うが夫は客が大事だと無視する。ハヴァは深夜に義父の鼠取りを片付け、猫にミルクをやりにいく。

 

カットが変わるとニュースキャスターのミリアムは、今夜も仕事を終えて帰宅したが、三週間前に別れた夫からの電話がかかる。執拗にかかって来る元夫からの電話に辟易とするミリアムだが、実は妊娠していた。七年間妊娠せず、姑から石女だと言われ続けたミリアム、この夜、ウエディングドレスをきてベッドに横たわる。夜が明けてカットが変わる。

 

ハヴァの隣の家に住む家族の長女アイーシャは、間も無く従姉妹との婚約が決まっていた。しかし、実は彼女には恋人がいたのだが、自分のことを蔑ろにするので別れたのだ。しかし、妊娠しているのがわかり、中絶のために友人に医師を紹介され、そのお金を工面していた。婚約で母にもらった指輪とフィアンセにもらった腕輪を売ってお金を作り、友人と医師の元に行く。

診察を待つロビーで三人の女がいた。ハヴァ、ミリアム、アイーシャだった。こうして映画は終わる。

 

とにかく身勝手な男たちに翻弄される上に、女性蔑視の風習が抜けきれないアフガニスタンの現実を痛烈に批判しいく視点はやや誇張されたように見えなくもないけれど、メッセージ性はしっかり描けている作品かなと思えました。

 

「北の橋」

例によって、即興演出と思いつきのストーリーで展開する奇想天外なストーリーでした。ドン・キホーテをモチーフにしたとありますが、全体のどこを見るのか不明。見えないところを推理する面白さを楽しむ作品なのでしょうが、同じ展開を繰り返し、結局ラストは、主人公を殺して終わらせる唐突さに呆れた感じです。監督はジャック・リヴェット

 

バイクに乗った女性バチストがパリの町を走り抜けている。途中、大型バイクに乗る男にやたら絡んでいくが、結局その場を離れていく。一方、刑務所を出てきたマリーも、ヒッチハイクの車を降りてパリにいた。彼女は恋人のジュリアンに連絡を取るが通じない。

 

手帳を見て歩いていたマリーにバチストのバイクがぶつかり二人は出会う。解説によるとマリーは閉所恐怖症のテロリストらしく、電話ボックスでも扉を閉めない。マリーとバチストは、ジュリアンが持っている鞄を盗み、その中の地図をすごろくに見立ててパリの街をめぐる。しかし、地図を取り戻そうとするジュリアン、さらにバチストが絡んだ大型バイクに乗る男マックスが絡んできて、何やら陰謀に巻き込まれていく。

 

マリーとバチストはパリを徘徊しながら、やがて地図はジュリアンの元へ戻り、マリーはジュリアンに撃ち殺されてしまう。バチストはマックスと対峙するが、空手の型をお互いに見せ合って映画は終わる。

 

なんとも言えない展開とエンディングで、バチストが滑り台のような鉄の構築物をドラゴンよろしく向かう場面はドン・キホーテを彷彿とさせるもののそれ以外はどこがどうだか全くわからなかった。即興で撮影を繰り返すうちに、この辺で終わらせようかと締めくくった映画にしか見えない一本でした。