くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「呪いの家」「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」

「呪いの家」

この時代のホラーのしては、話も入り組んでいてなかなかしっかり作られて面白かった。悪霊があっさりと退散するラストは物足りないけれど、もやのように現れる亡霊シーンやいかにもな叫び声、臭気による恐怖演出など、この作品が最初らしいが、楽しめました。監督はルイス・アレン。

 

崖の上に立つウイングロードの屋敷に主人公のリックと妹のパメラがたどり着くところから映画は始まる。愛犬のボビーが勝手に屋敷に入り、ボビーを追って二人が屋敷に入りその雰囲気が気に入る。窓からは崖を臨む海が広がる景色の描写が実に大きくて美しい。

 

持ち主はビーチ中佐という男性であることを知り、その家に行くと孫だというステラという女性に出迎えられる。彼女は家を売ことに反対するが中佐はさっさと同意してしまう。

 

リックとパメラは早速移り住んでくるが、深夜になると叫び声が聞こえてきたり、二階のアトリエの部屋には、ステラの母メアリがつけてミモザの香水の香りがするようになる。ステラは、リックと親しくなっていくが、ウイングロードの邸宅に来た時に、錯乱して崖から飛び降りかける。リックらは、この邸宅の過去を調べ始める。ステラの主治医でもあるスコットらから、かつてメアリが崖から落ちて亡くなったことを知る。

 

そんな頃、中佐はハロウェイという女性に連絡を取っていた。ハロウェイというのは、かつてウイングロードにいた看護師で今は精神科の療養施設を経営していた。ウイングロードの邸宅で降霊会をしようということで儀式を行うが、成果は十分えられない。そんなことをしたことに、やってきたメイドのリジーは反感を持つ。このリジーの存在は果たして必要なのかと思う。

 

中佐は、ステラをハロウェイの療養所へ送り込む。ステラを助けるべくリックたちはハロウェイの元を訪れるが、ハロウェイはすでにステラを送り返していた。それはステラが美しいことへの嫉妬でもあった。慌ててウイングロードに戻ったリックたちだが、ウイングロードの亡霊に操られステラは崖へと走り出していた。

 

すんでのところで彼女を助けたリックたちだが、病身の中佐がステラを助けるためにウイングロードにきていた。いきなり中佐が病気になる唐突さ。そんな彼らの前にメアリの亡霊が現れる。その中で、実はステラはメアリの娘ではなく、一緒に住んでいたジプシー女の娘であることが判明する。それを知ったメアリが幼いステラを崖から落として亡き者にしようとして自分が落ちたのだ。リックは、これ以上苦しめるのをやめるようにメアリの亡霊に迫り、亡霊は消えていく。

 

というお話だった気がするが、唐突な展開が所々に出てくる上に、必要以上に登場人物が多くて話が混乱しる部分もある。リックは作曲家という設定だが、ほとんど意味をなさないし、ヨットでステラをデートに誘う場面もそこまで必要かという展開。とはいえ、面白い作品にしようという生真面目さが見え隠れする映画で、退屈はしなかった。

 

「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」

これはめちゃくちゃ良かった。まず、絵がとっても美しいし、カメラワークが絶品、しかも、散りばめられた小さなセリフやシーンの数々が実に奥が深くてそれでいてサスペンスフルな展開で物語も面白い。相当にクオリティの高い秀作でした。ラストシーン、一気に胸が熱くなり、しばらく動けませんでした。いい映画を見ました。監督はフィリッポ・メネゲッティ。

 

夜の明かりのカットから暗転して、かくれんぼのカウントする声、森の中、そばに沼らしいものがあり、美しい画面、白い服と黒い服の少女がかくれんぼをしている。白い服の少女を探す黒服の少女だが、見つからず、カラスの鳴き声のようなものを発して探し回る黒服の少女のカットから暗転、タイトル、シーンが変わるとベッドで愛し合う二人の老婦人、おそらく六十歳は超えている雰囲気のレズカップルである。マドレーヌとニナはアパートメントの向かい合わせの部屋にすみ、二十年来愛し合っていた。マドレーヌはアパートを売って、ニナと思い出の地ローマに行こうとしていた。

 

マドレーヌには娘のアンヌと息子のフレッド、孫のテオがいて、この日誕生日のお祝いをする。マドレーヌは娘たちにアパートメントをうることを話すと言っていたが、この日も結局話せなかった。一方、一緒にローマに行くことを決めていたニナは手持ちの貴金属を売ってお金を用意していた。マドレーヌとニナが思い出の曲アイ・ウィル・フォロー・ヒムを流してダンスをする場面が終盤キーとなる。

 

しかし、ニナはマドレーヌが子供たちに売ることを言えなかったことを知り激怒する。その日、焦げついた匂いに気がついてマドレーヌの部屋にやってきたニナはマドレーヌが倒れているのを知り、アンヌに連絡をする。ニナはマドレーヌの容態が気に掛かっていたが、ただの隣人だと思っているアンヌらは詳細を話そうとしなかった。まもなくして退院したマドレーヌだが、脳卒中で喋れなくなり、歩くこともままならなかった。アンヌはミュリエルという介護士を雇って泊まり込んでもらうが、ニナは心配で気が気でなく、持っている合鍵で中に入っては様子を伺う。そして、ミュリエルが首にされるように色々画策を始める。

 

ある時、ミュリエルが留守だと思ってマドレーヌのそばにいたニナは、戻ってきたミュリエルに見つかってしまう。ニナはミュリエルに取引を持ちかけ、追加で金を払うから自分も介護に加わらせようとする。ところが、ミュリエルがシャワーを浴びていた隙にマドレーヌは一人家を出て行方不明になる。ニナやアンヌがなんとか見つけるが、ミュリエルは首になってしまう。

 

アンヌは泊まり込みでマドレーヌの世話を始めるが、ニナはある夜マドレーヌのベッドで朝を迎えてしまいアンヌに追い出される。しかも、ニナは三年程前にこのアパートに来てマドレーヌと知り合ったと言っていたが、二十年前のローマでのマドレーヌの記念写真にニナが写っているのをテオが見つけ、アンヌは二人の関係を知ってしまう。マドレーヌの夫は常に暴力を振るっていたがそんな夫を最後まで愛していた母をアンヌは尊敬していたのだ。しかし、本当は、母はニナを愛していたのだ。

 

アンヌはマドレーヌを老人ホームに移し、ニナから遠ざけてしまう。連絡がつかなくなったニナは必死で探すが見つからず、一方、ミュリエルとその息子が、ニナのせいで首になったから金を払えと脅しにくるが、ニナは追い返す。ニナはアンヌたちの家まで行き、自分達が二十年近く愛し合ってきたことを訴えるが、アンヌに追い返されてしまう。

 

アンヌは老人ホームへマドレーヌを見舞いに行ったが、薬漬けにして治療している老人ホームのやり方に不信感を持ち始めていた。そんな時、マドレーヌは、ホームの電話からニナに電話をする。ニナはその電話から老人ホームの場所を知り、車でホームへ行きマドレーヌに会い抱き合う。

 

アンヌは施設長と治療について話をしていたが、ニナはマドレーヌを散歩に連れ出した時に表の門がたまたま開いているのを見つけ、マドレーヌを連れ出し、二人でローマに行くべく着替えのためにアパートに戻る。ところがニナの部屋はミュリエルの息子によって荒らされていてお金も無くなっていた。呆然とするニナ、マドレーヌはゆっくりとドアを閉める。そこへアンヌが駆けつけ必死でノックをする。カメラは荒らされたニナの部屋をゆっくりと縫うように捉え、やがて二人が、アイ・ウィル・フォロー・ヒムで踊っている場面で映画は終わる。

 

たまらなくよくできた作品で、決して冷たいわけではないものの、最善と思って必死に介抱しているアンヌたちの思い、仕事を見つけて必死で生きているミュリエルの姿、そして、老年となって、レズビアンであることへの後ろめたさと、贖えない恋の思いを貫抜いてくるマドレーヌの姿、そして、過去の何か辛い出来事の中、最愛の恋人を見つけたニナの想い、何もかもがとにかく胸に染み渡るように伝わってきます。絵作りもカメラワークも素晴らしく、音楽の使い方も見事。とってもいい映画に出会いました。