くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブラックナイトパレード」「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」

「ブラックナイトパレード」

もっと悪ふざけばかりの映画かと思っていたら意外に感動ものだった。原作の良さだろう。もうちょっとラストの真相の展開が鮮やかだったら傑作だったかもしれないが、そこは監督が福田雄一なので、ここまでで留めた方が良かったのかもしれない。

 

クリスマス深夜のコンビニ、フリーターになって三年の三春は、後輩で、仕事をしないカイザにいいようにあしらわれながらせっせと仕事をこなしていた。カイザは彼女とデートに出て行ってしまい、店長には濡れ衣を着せられた上、むしゃくしゃしたまま、三春は廃棄品を処分に出して、ついでに憂さ晴らしに普段は絶対にしない廃棄のケーキを持って帰る。

 

途中、やけ酒を飲むのに屋台に立ち寄った三春は、屋台の店主に化けたブラックサンタクネヒトに連れ去られる。着いたところは何故か北極で、ハッカーの志乃とシェフの鉄平に出迎えられる。顔のないブラックサンタのクネヒトからサンタハウスで正社員になるかと詰め寄られる。しかも、あれよあれよとブラックサンタになるべくして就職することになる三春は、その才能を買われて子供達に渡すプレゼントを選別する部署に配属される。実は赤いサンタがかつて存在していたのだが、赤いサンタを妬むネズミと呼ばれる集団に殺されたのだ。赤いサンタは良い子に、ブラックサンタは悪い子にプレゼントを配っていたのだ。

 

三春は次のステップとしてトナカイになるべく志乃や鉄平と準備を始める。トナカイはエリートコースでそのリーダーの赤鼻のトナカイはレイモンドと言われて尊敬されていた。トナカイの適性試験、なんと三春の後輩のカイザ=田中皇帝もやってきていた。しかも、三春たちが勤めていたコンビニの店長はブラックサンタ養成のために三春を三年間コンビニで修行させていたというはちゃめちゃな前提があらわになる。コンビニで働くきっかけになるカイザとの出会いや、カイザの発注ミスによる苺大福のエピソード、発注ミスをわざとやった性格の悪い稲穂の事件などが語られ、その流れで三春はあのコンビニで働くことになったのだ。

 

トナカイの実技試験が迫った日、たまたま三春は大事にしていた母からのクリスマスカードのコレクションの中にクレジットカードのブラックカードを見つける。それは、幼い頃、父が亡くなって初めてのクリスマスでサンタクロースにもらったものだった。それが限度額無制限のクレジットカードとは知らなかった三春だが、それをもらった時からおもちゃを大量に買って、父を亡くしたことと母が入院した寂しさを紛らわしていたことが今更ながら判明する。母は父が亡くなった後、息子を育てるにあたり過労でしばらく入院していたのだ。

 

退院してきた母は、大量のおもちゃに驚愕する。再び心労をかけたと思った幼い三春は、おもちゃを子供たちに配ることを決意し、包装準備をする。その配達を請け負ったのがクネヒトらトナカイだった。一方、ネズミは田中皇帝を亡き者にしようと襲いかかってくる。田中皇帝は最有力でトナカイになる可能性があると判断されたのだ。田中皇帝=カイザの危機を感じた三春はカイザを助けようとするが逆にネズミに襲われ、カイザが三春を助ける。これで、かつて、苺大福事件で三春に助けられたカイザは恩返しをした。

 

見事、トナカイの適性試験に合格した鉄平、三春、志乃、カイザは、いよいよ実技試験となる。それはサンタが送り損ねたプレゼントを全て配達するというものだった。三春たちは力を合わせて次々とプレゼントを配達、最後の一個になるが立ちはだかったのはネズミ達だった。最後の最後、ネズミにより高層マンションの屋上から突き落とされた三春だが、駆けつけたレイモンドに助けられる。それはクネヒトの指示だった。

 

無事プレゼントを配り終えた四人は晴れてトナカイとなる。三春はクネヒトの部屋に呼ばれた。行ってみると、そこにかかっていた赤いサンタの肖像は三春の父の姿だった。幼い頃から三春の父は三春を見守っていたのだ。三春は赤いサンタとなることを決意し、全てハッピーエンドとなって映画は終わる。

 

福田雄一らしい馬鹿馬鹿しい展開が散りばめられる作品ですが、原作がしっかりしているのか、次第に親子の人間ドラマが表に出てきて終盤は胸が熱くなってしまいました。一級品とは言えないまでも思いの外、厚い作品に仕上がっていたと思います。面白かったです。

 

ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」

二時間半ほどの長尺ながら、全然退屈せず、ホイットニー・ヒューストンの歌声に引き込まれる映画でした。少々脚本が荒っぽいので、ドラマ部分は相当に希薄だし、カメラワークも平凡なので、映像作品としては普通ですが、主人公の物語とカリスマ性に最後まで画面を見つめられる作品でした。監督はケイシー・レモンズ。

 

教会でゴスペルを歌っている主人公ホイットニーと母のシシーの姿から映画は幕を明けます。街で女子大生ロビンと知り合うホイットニーは、意気投合する。彼女はレズビアンだった。ここはかなり唐突。歌手としてそれなりに有名な母シシーは娘の才能を生かすために数々の一流歌手を育てたプロデューサークライブ・デイビスにホイットニーを引き合わせる。一目でその才能を認めたクライブは早速レコード契約を結び、ホイットニーはみるみる成功街道を走り始める。

 

ロビンをマネージャーにし、ホイットニーはクライブのもとで次々とヒット曲を発表していくが、父のジョンはホイットニーのボスとして会社を運営するようになる。そして、ロビンを排除するようにと勧めるがホイットニーは受け入れなかった。そんな時、ホイットニーは歌手のボビー・ブラウンと知り合い恋に落ちる。やがて二人は結婚するが、女遊びやドラッグに溺れるボビーはホイットニーにとって負担になり始める。さらにロビンとボビーも事ありごとに対立するようになる。この辺りの描写がかなり雑である。

 

ジョンはホイットニーの稼ぎを自分のものにして贅沢三昧を繰り返し、それに気がついて問い詰めたホイットニーに、世界ツアーに出て大きく稼ぐようにと提案する。クライブの反対を押し切って世界ツアーに出たホイットニーだが、そのストレスからドラッグに溺れ始める。やがて、ドラッグで逮捕され、四ヶ月の療養を言い渡される。

 

復帰して初めてのステージを見たクライブは、休養を進めるが、ホイットニーは強行してツアーに出てファンから見放されるほどの不評を買ってしまう。時が経ち、この日、久しぶりのステージが控えていた。バーでかつてのホイットニーを知るバーテンから応援している旨を話され、控え室で予定していた既存の曲を口ずさむが、いざステージでは、歌ったことがない愛の歌のメドレーを熱唱、客席からはスタンディングオベーションの大歓声を受ける。こうして映画は終わり、2012年、ドラッグの過剰摂取で浴室で亡くなったというテロップが出てエンドクレジットとなる。

 

実際のエピソードを次々と見せていく脚本で、ホイットニー・ヒューストンの周辺の人物とのエピソード描写はかなり雑に描かれているので、ドラマ性は非常に薄っぺらいのですが、ステージシーンの迫力でグイグイとラストまで引っ張っていきます。ホイットニー・ヒューストンの歌声をひたすら楽しむ作品という感じの一本でしたが、大満足できました。よかったです。