くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブラック・フォン」「リコリス・ピザ」

「ブラック・フォン」

どこか妙な仕上がりのホラー映画で、ミスリードと伏線がうまく機能していないのと、物語のキーになるグウェンという予知夢のようなものを見る少女が生かしきれていないために、中途半端な仕上がりになったように思います。監督はスコット・デリクソン

 

草野球のシーン、ピッチャーのフィニーが鋭い投球でバッターのブルースを打ち取らんとするところだが最後にホームランを打たれてしまう。フィニーはブルースとさりげない会話を交わす。ブルースが自転車で走る、フィニーはロケットを飛ばす遊びをしている。ブルースの前に黒いバンが現れる。この付近で謎の子供誘拐事件が起こっているニュース映像が被りタイトル。

 

フィニーの父は母が居なくなってから酒浸りで、核工場にいたというネームプレートをつけている。この意味が不明。フィニーの妹グウェンは気が強く、一方フィニーは学校のいじめっ子に目をつけられている。一人のメキシコ少年ロビンは、いじめっ子の一人を叩きのめしている場に出くわしたりしている。ブルースが行方不明になり時が経ち、また別の少年が不明になる。さらに、フィニーを友達だと言ってくれたロビンも行方不明となる。

 

週末はジェニファーという友達の家に泊まるのが習慣のグウェンは、この日も学校帰りフィニーと別れてジェニファーのうちへ行く。そんなフィニーの前に一台に黒いバンが止まる。そして、中から出てきたマジシャン風の男にフィニーは拉致される。ここでの黒い風船という小道具が全く効果を出していない。

 

気がついたフィニーの前に、奇妙な仮面をつけた男グラバーがいた。拉致された部屋の壁に線が切れた黒い電話だけがあった。グラバーが部屋を出た後、その電話が鳴る。フィニーが出ると、床の土のところを掘れと言ったり、壁に電線を隠してあるから使えと言ったり、壁の一角から物置の冷凍庫に出れるなどという声が聞こえる。声の相手はここで殺された少年たちだった。

 

一方、グウェンは、意味ありげな夢を見て、刑事に取り調べを受ける。捜査事項で外部に漏れていない情報もグウェンが知っていたことで、刑事は彼女を注視する。刑事はある家に聞き込みに入り犯罪マニアのマックスという男と出会うが警察は簡単な聞き込みだけでその家を後にする。実はこの家の地下にフィニーが拉致されていたのだが、マックスの兄グラバーは、防音を施していたのだ。

 

グウェンは、一人の不良少年がゲームセンターで喧嘩をし、その少年が犯罪を犯してパトカーに乗せられる夢を見る。その中にあった部屋番号など様々なヒントからグウェンは一軒の家を発見、警察に連絡をする。そんな頃、グラバーが、フィニーを殺す最後の準備を進めていた。フィニーは、ロビンからの電話で敵と戦うための準備をしていた。マックスは自分が調べていた資料の地図からこの部屋の地下が怪しいと思い、フィニーのところに降りてくる。あっけにとられるフィニーの前で、後ろから来たグラバーが斧でマックスを殺し、フィニーに迫ってくる。

 

グウェンの通報で刑事がやってきて踏み込むが、踏み込んだ家の地下には子供達の死体が埋められた跡だけを発見、一方フィニーはグラバーと戦い、とうとうグラバーを締め殺して自分で脱出する。後日、学校へ行ったフィニーを馬鹿にするクラスメートは誰もいないし、好きな彼女も声をかけてきて映画は終わる。

 

どこかチグハグで、何をどう見せていこうかという一貫したものが混乱していて、どれもこれもがうまくストーリーを引き立てずに終わっていく。なんとも不思議な仕上がりの映画でした。

 

リコリス・ピザ」

映像がリズミカルに流れていく爽やかな青春ラブストーリーという感じで、全体が透明感あふれる画面になっているし、余計にこだわらない素直なストーリーも素敵、音楽センスも良くて、綺麗な作品に仕上がっていました。背景になる1970年代の空気感をさりげなく盛り込んだ作りも程よいアクセントになっていて良かった。監督はポール・トーマス・アンダーソン

 

タレントの写真撮影の場、撮影スタッフのアラナが歩いている。反対側からテレビなどにも出ているゲイリーという若手俳優が歩いてくる。二人はすれ違うが、ゲイリーは一目でアラナに惚れてしまう。しかしゲイリーはまだ十五歳、アラナはおそらく二十歳を超えているということで、アラナは最初相手にしないが、若さゆえか真っ直ぐに迫ってくるゲイリーの誘いに乗ってしまう。アラナはゲイリーが芸能界にいるという一種の憧れもあって、彼が番組のキャンペーンでニューヨークへ行くのについて行き、付き添い人であることを自慢しながら、言い寄ってきた若手の俳優を自宅に招待する。しかし、アラナはユダヤ人で、宗教的な問題でその俳優を追い出す羽目になる。

 

そんな頃、ゲイリーはウォーターベッドを取り扱う商売を始め、アラナをビジネスパートナーにして成功する。ウォーターベッドのキャンペーンで、ゲイリーは若い女性といちゃついているのを見たアラナは、自分もとベテラン俳優ジャックと食事をし、その場でジャックのノリでバイクで疾走することになる。それを見たゲイリーは危険を感じてやめさせようとするが、スタートのところでアラナはバイクから落ちてしまう。必死で駆けつけるゲイリーの姿、二人は何気なく心が通う。

 

ところが折しも石油ショックに遭遇、売れ残ったウォーターベッドを俳優のジョンに売りつけることになる。人に紹介する時は彼女ではなくあくまでビジネスパートナーだというゲイリーにアラナは若干の不満があった。トラックのガス欠などで大騒ぎしたゲイリーらだがその姿を見ていたアラナは、どこか寂しいものを感じ、たまたま見かけた市長候補のワックスの事務所で働くことにする。密かに、ワックスとのアバンチュールを期待してのことだった。

 

一方のゲイリーはピンボールホールの経営を始めることにする。ピンボールホールの開店パーティの日、アラナはワックスから食事に誘われる。アラナが約束のレストランに行ってみると、ワックスのパートナーの男性がそこにいた。ワックスはゲイだった。スキャンダルを恐れたワックスはパートナーの相手がアラナであるかに見せかけようとしたのだ。アラナはそのパートナーとレストランを出て、寂しい思いのパートナーを抱きしめてやる。

 

ゲイリーは、アラナが来てくれないのでワックスの事務所に行ってみるが既に誰もいない。諦めてトボトボ歩いていると、ゲイリーの開店パーティに行ったアラナもゲイリーに会えずトボトボ歩いているのと出会う。二人は駆け寄り、ゲイリーはアラナを開店パーティの席に連れて行き、自分の妻になる人だと紹介、二人はようやくキスをして映画は幕を下ろす。

 

とにかく、さわやかに突っ走る青春映画という空気感がとってもいい。それほどの大俳優を起用せずに、素朴な画面作りとセンスの良い音楽、流れるようなカメラワークを徹底した演出が素敵で、うねりのあるドラマはないものの、どことなく懐かしさを感じる良い映画でした。