くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アウシュヴィッツの生還者」「メルビンとハワード」

アウシュヴィッツの生還者」

良質の映画なのですが、脚本がよくないのか、ストーリーに焦点が定まっていなくて、エピソードの羅列で淡々と描かれ、しかも過去と現代を繰り返す構成で非常に長く感じられてしまった。実話を元にしているのですが、いいお話なのだからどこを見せるかを絞って物語が組まれていたら良かったと思います。監督はバリー・レビンソン

 

一人の男ハリーがビーチを歩いている。時は1963年、彼の影に女性でしょうか一人の人物の影が寄り添ってタイトルの後時は1949年に遡って映画は始まる。ボクシングをしているハリーはこの日も負け、このところ七連敗になっている。彼は第二次大戦時に恋人のレアと生き別れ、今も彼女を探していた。その記憶が試合中も蘇りこのところ負け続きだった。

 

第二次大戦時、収容所で作業をしていたハリーは、つい看守を殴ってしまい、危うく殺されるところで一人の男に助けられる。その男は彼の収容所での親友のジョンだった。ハリーのパンチを見ていた親衛隊の中尉ディートリッヒはハリーを引き取りボクサーとして将校たちの慰み試合に出させる。相手はユダヤ人で負けたらナチスに射殺される。ハリーは生き残るために試合を続ける。しかしこの試合でジョンも殺してしまった。そしてこの記憶が戦後も悪夢となってハリーを苦しめる。

 

戦後もハリーはレアを探し求め、役所で事務をしているミリアムという女性と知り合う。彼女は真摯にレアを探してくれ、やがてハリーと親しくなる。ハリーはレアの情報を求めるために、新聞記者にアウシュヴィッツから生還した経緯を話し、その記事をレアが見つけてくれるように画策するがそれはユダヤ人の反感を買ってしまう。ハリーはさらにチャンピオン候補でもあるロッキー・マルシアノとの試合を希望し、叶えられるものの、コテンパンに打ちのめされてしまう。担当した新聞記者はレアのことは必ず力になると告げる。しかし、間も無くしてハリーはミリアムと結婚することになる。

 

収容所時代のトラウマからミリアムを素直に抱けないハリーだったがやがて息子と娘が生まれる。時は1963年、ハリーはミリアムらと小さな店を経営して生活していた。そこへかつての新聞記者が現れ一枚の住所のメモを渡す。それは現代のレアの居場所だった。家庭では収容所時代の苦しみから家族関係、特に長男アランとの関係がギクシャクしていた。ハリーは旅行と称してレアのいるビーチへ家族と向かう。

 

現地でハリーはアランを連れてレアに会いに行く。レアはハリーがマルシアノと試合をした記事を今の夫マイケルと結婚した翌朝に見たと話す。彼女は不治の病で余命わずかだった。ハリーはアランに過去の全てを話し、浜辺で待つミリアムたちのところへ行き、全てに区切りがついたかのようにジョークを言って映画は終わる。

 

エピソードがてんこ盛りでメリハリがなく、次々とハリーの過去が語られるくだりが単調になってくるのが残念。ミリアムとの話に焦点を絞るか、ボクサーの話に焦点を絞るか、レアとの再会に焦点を絞るか、どれか一つに中心を置く脚本にすべきだったと思います。決して駄作ではないけれど、折角の演出手腕が生きていない感じがしました。

 

メルビンとハワード」

軽快なテンポで展開する物語は古き良きアメリカ映画、その屈託のない明るさに乗せられてしまう作品でした。決して大傑作の完成度はないけれど、陽気そのものの空気感がとっても良い。実話を元にしたとはいえ、コミカルで心地よい映画でした。監督はジョナサン・デミ。彼の出世作です。

 

ネバダ州の砂漠、小さな池の周りをバイクで走っている男の場面から映画は幕を開ける。その男は猛スピードで池を飛び越しさらに周りを走り、二回目のチャレンジをするが今度はバイクが転倒して気を失ってしまう。深夜、この地域で暮らしているメルビンがハイウェイの脇で用を足して帰ろうとするとヘッドライトに倒れている老人を見つける。メルビンはその老人を車に乗せるが、病院へ行くのも医者を呼ぶのも嫌だという。名前を聞いたらハワード・ヒューズだと名乗る。大富豪の名を語ったボケ老人だと思ったメルビンだが、妙に気が合い、ラスベガスまで送ってやる。

 

メルビンには妻のリンダと一人娘がいたが、リンダはある朝男を作って子供と出て行ってしまう。しかし、すぐ男に捨てられたリンダは娘だけメルビンのところに送り返す。メルビンはリンダを探し、やがていかがわしいクラブで踊っているのを発見連れ戻す。お金の管理に雑で散財ばかりするメルビンに、リンダは起死回生にとテレビのクイズ番組に出て大金を手に入れる。しかし、その賞金もメルビンは無駄遣いばかりするのでとうとうリンダは家を飛び出し、離婚してしまう。

 

時が経ち、メルビンは再度リンダと連絡を取り、リンダが妊娠していることを知る。メルビンはもう一度やり直そうと結婚式を上げる。それも長続きせず、やがて離婚してしまう。まもなくしてメルビンはボビーという女性と親しくなり結婚、彼女の親戚のガソリンスタンドで働くようになる。その頃、ハワード・ヒューズが亡くなったというニュースが流れる。

 

ある日、スタンドに一人の紳士が現れ、タバコだけ買って、一通の文書を置いて去る。それはハワード・ヒューズの署名入りの遺言書だった。メルビンはその文書を法律事務所に届け、まもなくしてハワード・ヒューズの相続人16人のうちの一人に選ばれたことを知る。

 

メルビンの周りの人間が狂喜するのだが、遺言書が偽物ではないかという噂が流れ裁判となる。しかしメルビンには、今回の出来事を繰り返し証言するしかなかった。何とか遺言書は認められ、大金が入る流れになってきたが、メルビンは今更そんな金が手に入ると思えないと車を走らせる。

 

深夜老人を拾った夜、メルビンはその老人にトラックの運転をさせてやる。嬉々として運転する老人は鼻歌を歌って走って行って映画は終わる。テロップで、結局遺言書は無効になったこと、メルビンたちは普通の暮らしをしたことが語られる。

 

果たして、出会ったのは本物にハワード・ヒューズだったのか、その夢のような物語に思わず人生って面白いものだなあと感顔に耽ってしまう。なんか良い映画でした。