くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「君は行く先を知らない」「卒業 Tell the World I Love You」「高野豆腐店の春」

「君は行く先を知らない」

イランという国がわかっていないからわからないのか、表現演出が未熟な映画だからわからないのかなんともおかしな作品だった。全ての謎が結局明かされないし、奇抜なシーンや美的なシーンを次々と挿入してくるのですが、それが物語に何も反映しないし、ラストシーンに向かっていく脚本になっていないので、結局どういうことなのだろうとエンディングを迎えてしまいました。監督はパナー・パナヒ。イランの名匠ジャナル・パナヒの長男です。

 

骨折している父のギブスに落書きされた鍵盤を弾いている次男の場面から映画は幕を開ける。次男はまだ幼く、母、長男と車でどこかに向かっているようで、ハイウェイの脇に停めて運転手の長男が用を足している。戻ってきた長男が運転して家族は何処かへ出発。なぜか携帯を持って行ってはいけないらしく、隠して持ってきた次男の携帯は母が途中で道端に隠してしまう。長男が結婚をするらしく、しかも国境へ行かないといけないらしい。さらに、悪者に付けられているなどというセリフまで飛び出してくる。

 

長男の結婚のために家などを売り払ったようなセリフも出てくる。次男は異常なくらいにはしゃぐ性格で、目障りなくらいうるさい。時折意味ありげな楽曲が挿入される。どの場面にもドラマティックな展開がないので、どういうお話か分からない。目的地の村に行くために迎えの男がくるが、バイクに乗って覆面を被っているので、どう考えてもおかしい。

 

指示されるままに村について、長男は、覆面の男に連れられてどこかに一旦隔離されるのだという。そして二日後にもう一度最後に会えるということで家族はテントを張って待つことにする。そんな家族がたくさんキャンプ地にいる。

 

父と次男は寝物語をして、宇宙に漂って行く。二日後、結局再会できず母は悲しむが、家族はそのまま帰路に着く。一緒に来ていた飼い犬にジェシー感染症で余命わずかだったが帰り道で亡くなり、父が穴を掘って埋めてやる。そして家族は帰って行って映画は終わる。

 

美しい遠景カットで、延々と長回しをしたり、突然次男が大人の声で歌い出したり、父と長男が意味ありげな会話をしたり、途中で、自転車レースの選手と接触し、その選手を乗せたり、なぜか父は骨折していたり、何もかもが謎のままにストーリーが進んでいく。で、結局、よく分からないままに終わるのだが、イランの国情を知っていればわかる話なのかどうかは何ともいえず、と言ってもそれほどクオリティの高い映画にも見えない。おかしな作品でした。

 

「卒業Tell the World I Love You」

支離滅裂なストーリー展開と振り回すカメラ、不必要な長回し、その場限りで時間稼ぎのようなエピソードの羅列に呆れてしまう。しかも、辻褄が合わずにツッコミ満載になり、いい加減終わって欲しいと終盤思ってしまった。こんな適当な映画、まだ作ってるんやなあという感想です。監督はポット・アーノン。

 

バイト先で皿洗いをするケンの独り言。傍に親友のタイがやってくる。ケンはタイの兄の店で居候をしている。学校では二人の中をゲイだとからかうので、ケンが切れて喧嘩沙汰になる。ある夜、ケンはヤクザ者にリンチされている少年を見つけて動画に撮り、その少年を助けてやる。

 

その少年はボンと言って、どうやら組織のヤクを持ち逃げしたらしく責められていた。ケンがボンを助けたことを嗅ぎつけたヤクザ者たちはケンをつけ回し、バイト先のタイの兄の店を壊す。いづらくなったケンはボンの家に寝泊まりするようになる。ケンに心ならずも気があるタイは複雑な気持ちになる。ヤクザ者たちは執拗にケンとボンを追い詰める。ここから先は、ダラダラと三人の少年とヤクザ者たちとの追いつ追われつのエピソードがこれでもかと展開する。

 

一方、ケンは中国にいる母を探すために中国の学校へ行くべく奨学金の試験を受けることになっていた。そして見事合格する。タイはケンが学校でからかわれるので、ボンの銃で学校の同級生を撃ち殺す。ボンを追い詰めていたヤクザ者のニックが実は兄貴分のヤンにも恨みがあり、機会があれば殺そうと思っていた。

 

ケンを拉致したというニックからの連絡でボンが現場に行くがそれはフェイクだった。そこでリンチされるがそこへケンが駆けつけ乱闘となる。ボンは、ニックがヤンを殺そうと計画しているとその場で叫び、ニックはヤンを殺す。瀕死のケンを助けようとボンが立ち上がり抱き合ったところへニックの銃で撃たれる。そこへ警察が駆けつける。

 

ボンは意識不明となり、傍にケンがいた。警察は高校生を撃った犯人を探していてタイを逮捕する。留置所へ来たケンにタイは愛しているからと答える。ケンが中国へ旅立つ日が来る。なぜか全快したボンがバイクで待っていて、二人で中国へ向かって映画は終わる。

 

とまあ、こんな話の流れをその場限りの思いつきで展開していきます。さっきセリフにあったはずの会話が少しして又くり返されたり、ボンのおばあちゃんの取ってつけたようなボケシーンが展開したり、ヤン兄貴が強面かと思えばバカだったり、ツッコミどころも満載で、どうしようもない。ラストはこれでもかと引っ張るので、いい加減終わって欲しいと懇願してしまいました。最低の映画やった。

 

「高野豆腐店の春」

ありきたりのストーリー展開と、ありきたりのキャラクター設定に、前半部はテレビドラマを見ているようで、辟易とさせられたものの、後半は丁寧に演出された流れにそれなりに惹かれていきました。巨匠と言われる人が作れば、九十分の研ぎ澄まされた映像表現を見せてくれたでしょうが、二時間近い仕上がりにした時点で普通の映画でした。監督は三原光尋

 

尾道豆腐店を営む高野辰雄、娘の春が元気よく店に入ってくる場面から映画は幕を開ける。豆腐ができる過程をひたすら捉えて行くカットから、頑固一徹の辰雄が、幼馴染たちと、春の見合い話を計画していくくだりとなる。バツイチながら気立のいい娘春は辰雄たちの計画で一人の男性と見合いをしる流れになる。しかし、春は近くのスーパーの仕入れ担当の西田と親しくなる。しかし、辰雄は気に入らず、結局春と辰雄は別居してしまう。その頃、心臓の診察で病院で中野という女性と知り合った辰雄は、急速に接近して相談し合うようになる。物語はよくある展開で、やがて仲直りした辰雄と春、そして中野の手術も成功して付き合い始める辰雄と中野、こうして誰も彼もささやかな幸せの一歩を踏み出して映画は終わる。

 

尾道が舞台ということもあり、いかにも小津安二郎の「東京物語」を意識したカットが登場するが、似て非なる仕上がりはやはり名作と凡作の違いと言わざるを得ません。悪い映画とは言いませんが、平凡すぎて、ラストは涙ぐんだものの映画としてはつまらない作品でした。