くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アナログ」「シアター・キャンプ」

「アナログ」

物語は今更目新しいところもないのですが、映画として良くしようという真面目な演出がなかなか見せてくれる作品でした。極端な望遠による背景のぼかしや、あざといほどの様式にこだわった画面、あまり意味もない気がする俯瞰アングルなどなど、決してクオリティがあがるようにはみられないけれど努力している感が実に面白い。役者に演技任せな部分もちらほら見え隠れするのは気になりますが真面目な映画だったと思います。監督はタカハタ秀太

 

建築デザインをしている水島は、ある日、行きつけの喫茶店「ピアノ」で、一人の女性みゆきと出逢います。喫茶店のデザインを担当した水島がこだわったさまざまをみゆきが見抜いたことが嬉しくて、二人は急速に接近、毎週木曜日に店に来るというみゆきに合わせて水島も通うようになる。水島はみゆきを様々な店に案内し、次第に恋人同士の感になっていくが、みゆきは携帯を持っていなかった。それでも、毎週木曜日に「ピアノ」でのデートは続きます。

 

みゆきがクラシックに興味があると聞いた水島はクラシックコンサートに誘いますが、途中でみゆきは席を立って帰ってしまう。後日、みゆきは水島に謝罪するも理由は明かさなかった。水島には病気で入院中の母がいて、その看病も行っていたが、とうとう母は亡くなってしまう。水島とみゆきの交際は続き、水島はプロポーズを決意して親友二人と指輪を選びにいく。そして水島は「ピアノ」でみゆきを待つが、みゆきは急に父の食事の世話をしないといけないと顔だけ出して去っていく。ところがそれからみゆきに会うことがなくなる。

 

水島は大阪へ赴任することになって一年が経った。そんな時、水島の友達の山下の妻が、仕事先でCDを引き取ってくる。何気なくみていた山下はそこに一枚のCDを見つける。それは、世界的な天才バイオリニストの写真で、それはみゆきだった。山下は同じく水島の親友の高木と大阪へ行き水島に伝える。そしてさらに、みゆきは水島がプロポーズしようとした日に交通事故に遭い、脳障害と半身不随になっている旨を知らせる。

 

会社を辞め、リモートで仕事を続けるようになった水島はみゆきの姉香津美に頼んでみゆきに会わせてもらう。後日、香津美は「ピアノ」にやって来て、水島にみゆきの日記を見せる。ドイツで結婚していたみゆきは六年前夫を病気で亡くし失意の中日本へ帰って来た。名前を偽って、「ピアノ」で自分の心を慰めていたが、水島に会い、次第に心がほぐれていった旨が書かれていた。

 

水島はこれからもみゆきに会いに行きたいと香津美に頼み、毎週木曜にみゆきに会いにいく。間も無くして、水島はみゆきにプロポーズする。そして一年、かつて一緒にきた海辺に水島とみゆきが来ていた。寒なって来たので帰ろうという水島の手をみゆきはそっと握る。そして「今日は木曜日?」と尋ね「毎日が木曜日」と水島が答えて映画は終わる。

 

背景の描写がかなり薄っぺらいのは原作の弱さだろうが、シンプルに映画を楽しませるという意味では、軽い観客には受けるし、素直に表面をなぞると感動した。なのに涙は出ない。そういう物語作りと、なんとかクオリティを上げようとしたスタッフの拍手したい映画だった。

 

「シアター・キャンプ」

映画というのはいろんなスタイルがあるもんだと思います。もっと独創的で面白い作品を期待したのですが、意外に使い古されたエセドキュメンタリータッチのコメディでした。もっとコミカルなシーンにキレがあれば映画に緩急がついて楽しい作品になったかもしれないけれど、クライマックスのステージシーンまでは、ドキュメンタリータッチを意識しすぎたか映画になっていなくて展開が読めない。結果、引き込まれる物がなかったのは残念。監督はモリー・ゴードン、ニック・リーバーマン

 

ニューヨーク州北部湖畔にある演劇スクール「アディロンド・アクト」ではミュージカルスターを目指す子どもたちが演技のレッスンに励んでいる。しかし今夏のキャンプ開校前のステージで校長でこの学校を率いて来たジョーンが倒れ昏睡状態になる、彼女を引き継いだのは演劇に全くの素人の息子のトロイだった。一方、経営状態は破綻寸前で、銀行の差し押さえも目の前に迫る中、出資を申し出る人物が現れる。しかし、その人物は、ライバル校レイクサイドの回し者だった。

 

映画は、癖のある子どもたちのドタバタを描きながら、三週間後のキャンプ終了時のステージに向けて奔走するトロイの姿をドキュメンタリータッチでコミカルに描いていく。この展開がどうもだらだらしていてお話が見えない上に、個性的な子どもたちの面白さも映像に昇華されていないので、なんとも言えない。

 

ジョーンを扱ったミュージカルが完成し、その披露ステージがクライマックスとなる。ステージが終わり、スクールの行末がテロップに流れ、昏睡状態のジョーンが目覚めて映画は終わる。

 

なんともコメントしづらい作品で、面白かったのか退屈だったのか、どうとも書けない映画だった