くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)」「トラスト・ミー」

ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)」

ジャン=リュック・ゴダールが描かんとした主義主張を初期作品から晩年に至るまでのフィルムを映し出しながら語っていくドキュメンタリー。作品の一部は好きなものもあるが監督としては特に好みの人ではないけれども、その時勢に応じての彼の徹底したメッセージのぶれない信念を感じることができて、ドキュメンタリーとしても非常に面白い作品でした。監督はシリル・ルティ。

 

ヌーベルバーグの旗手として華々しくデビューした初期の頃から、五月革命をターニングポイントにしての政治的な時代、70年代の内省時期から80年代に劇的な復活まで、スタッフ、役者、友人を通じて描いていく。名作、短編、長編さまざまなフィルムが登場し、その時々のゴダールの心情が語られていく。そして復活後、「ゴダールの映画史」を集大成していく現場で映画は終わる。

 

映画関係者のドキュメンタリーはやはり面白い。

 

「トラスト・ミー」

不思議な感覚ですが、そんな感覚の中でどことなくとってもピュアなイメージを感じるラブストーリーで、素敵で良い映画でした。監督はハル・ハートリー

 

マリアが派手なリップをつけながら、学校を辞めたこと、結婚を決めたことを両親に告白している場面から映画は幕を開ける。母のジーンは大反対し、父親もマリアに辛辣な言葉を浴びせるが、そんなことは意に介せず、マリアは家を飛び出していく。直後、父は倒れ息を引き取る。どうやら心臓が悪かったようである。

 

学校へ行ったマリアは恋人のアンソニーに妊娠した旨伝えるがアンソニーは無責任な態度を取る。家に戻ったマリアは父が急死し、ジーンがマリアのせいだからと冷たい態度をとっている場に出くわす。ジーンはマリアを追い出し、行き場のなくなったマリアはドラッグストアの前で座る女性に五ドル貰う。そこへバギーを押した女が現れ、赤ん坊を外に置いたまま店に入って電話をする。

 

マリアは貰った五ドルでビールを買おうと店に入るが店長が絡んできて、裏部屋で、マリアに嫌がらせをする。マリアはタバコの火を押し付け飛び出すが、外では赤ん坊を誘拐されたと女が叫び、五ドルくれた女はいなかった。

 

テレビ修理の技術者として働くマシューは、工場のやり方が気に食わず、喧嘩をして仕事を辞めてしまう。家に帰ると父親に罵倒される。実はマシューの母はマシューを産む時に亡くなっていて、以来父とは確執があった。家のガレージに行ったマシューはそこでマリアを見つける。お互い行き場がなくなり、マリアはマシューを自宅に誘う。そしてマシューはマリアの家で暮らし始める。

 

やがて二人はさりげなく惹かれあい、マシューはマリアと結婚して子供を育てることにする。ジーンはマリアがマシューと結婚することに反対で、妹と結婚させるべく画策し、アルコール飲み比べをしてマシューを妹の部屋に寝かせて服を脱がせ、妹を部屋に行かせるがマシューは酔っ払って目を覚ますことはなかった。そこへ中絶したマリアがかえってくる。ジーンはわざとマリアを妹の部屋に行かせるが、何事もないようなのでジーンが上がると、酔い潰れたマシューと妹が寝ていた。マリアはシャワーを浴びていた。

 

マシューは、マリアと結婚するために仕事を探して、以前の会社に一旦は復帰するが、やはり工場経営者のやり方が許せず、再び辞める。そんなマシューのところに父親がやって来て大喧嘩するが、そこへジーンとマリアが戻ってくる。マシューは酔い潰れてマリアの母の妹の部屋で寝てしまったことを謝り、結婚しようというが、マリアは中絶して来たことと結婚はできないと告げる。マリアは、五ドルくれた女の夫を探し出し、そこから女の住所を見つけ警察に匿名電話をして赤ん坊を助け出す。

 

マリアに断られ、マシューは兼ねてから持っていた手榴弾を持ってテレビ工場へ立て篭もる。駆けつけたマリアは、ピンを抜いて呆然とするマシューのところへ行き、一緒に逃げようと提案、一か八か手榴弾を投げるが爆発しない。不発かと思われた途端、小さく爆発。マシューは警察に捕まる。パトカーの後ろ姿をマリアの視線が追って映画は終わる。

 

不思議に切ないラブストーリーでした。母と娘、父と息子の一見溝ができたまま埋まっていないように見えて、どこか親子の心のつながりが垣間見られるさりげない演出が実にうまく、それが次第にラストシーンで実を結ぶ展開がとっても素敵でした。一風変わってますが良い映画でした。