くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リアリティ」

「リアリティ」

こういう映画を見ると,アメリカ映画の奥の深さを垣間見るように思います。裁判で公開されたFBI捜査官の記録した尋問音声をほぼ忠実にドラマとして再現した作品。リアルタイムで描かれる映像は主人公を演じたシドニー・スウィニーの演技力にかかった部分も多いが、巧みに切り返すカット編集も緊迫した場面を映像として昇華させている。問題定義満載の作品なのだろうが、映画としてもなかなか面白い仕上がりだったと思います。監督はティナ・サッター。

 

2017年6月3日、スーパーで買い物を終えたリアリティ・ウィナーは車を自宅に停める。そこへ二人の男性が近づいて来る。自分たちはFBI捜査官だとバッジを示し、ギャリック捜査官とテイラー捜査官は柔らかい物腰でリアリティに接し始めて映画は始まる。捜査官らはリアリティに何気ない会話を投げかけるが、次々と捜査官が到着し、家の周りには立ち入り禁止のテープが張り巡らされ、家宅捜索の許可があるからと自宅内に次々と捜査官が入っていく。

 

室内で飼っている犬を外に繋いで、リアリティはギャリックらに促されて奥の部屋に入る。三人はだだっ広い部屋で居心地の悪い中、ギャリックはリアリティにこれまでの職歴や、現在の職場の様子などを聞いていくが、次第に、リアリティが持ち出した文書へと言及していくにつれて、リアリティの受け答えがぎこちなくなっていく。どうやら、リアリティは故意にある文書を持ち出し、メディアにリークしたらしい事が見ている私たちに伝わって来る。

 

キーになる言葉は伏せ字になっていて分かりづらいものがあるが、ロシアがアメリカの選挙サイトをハッキングしたとか、アメリカにとってマイナスになる何かが漏洩した事がわかる。リアリティは、検索して出てきた記事がなぜどこへも漏洩されていないのか不思議に思い、印刷したものをストッキングに隠して持ち出し、メディアに送ったらしい。

 

リアリティは元軍人で極秘情報を取り扱える資格もあったが、自身の望む部署へ異動できず、翻訳の仕事を続けざるを得ない現状に不満でもあった。そんな様々から出来心も重なっての今回の事件だと次第にわかって来るが、かなり重要なものが漏洩したのかもしれない。そもそも、そういうことが起こるというセキュリティの甘さもどうかとは思うが、その後彼女は収監され四年服役したとテロップが出る。彼女へのさまざまなマスコミの報道が流れて映画は終わる。

 

リアルタイムで展開するドラマですが、映像表現としての工夫も見られ、商業映画としても仕上がっているのがある意味恐ろしい作品でした。