くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「奴が殺人者だ」「NOCEBO/ノセボ」

奴が殺人者だ

面白い脚本なのですが、全体が雑多に処理された感が強くて、一本筋が通って見えてこないので、主たる話の脇の話が薄くなってしまって、出来栄えは普通になった感じです。面白いサスペンスですが、橋本忍脚本と考えるともう一歩クオリティが欲しかった。監督は丸林久信

 

刑事の大利根徹夫の家の朝の風景から映画は幕を開ける。徹夫は今日も職場に行く。一方妹礼子の夫石原は、仕事が忙しいとなかなか会えずイラついている。礼子の友人杏子のフィアンセは、出張から戻ってこなくて式を上げられないと困っている。そんな時、一人の男が殺され徹夫が捜査に赴く。殺された男は、殺される直前に酒に酔って暴れたことで徹夫に取り調べられたことがあった。しかし、山尾弁護士が来て処理したことがあった。

 

どうやら麻薬がらみだと判断した徹夫だが、実はこの男が殺される一ヶ月前に別の男も殺されて川に流され発見されていた。二つの殺人事件に関連性があると判断したと徹夫は、実は麻薬捜査に潜入捜査している石原を、たまたま喧嘩で逮捕して取調室で話をする。徹夫は石原の仕事を知っていたが礼子は知らなかったのだ。危険だからと辞めるように徹夫は勧めるが石原はもう一息だからと潜入捜査を続ける。

 

二人が殺され、麻薬の売人の組織のボス沢田は湯本というもう一人の男も殺すべく殺し屋を準備していて、石原を相棒につけるところまで石原の潜入捜査も成功していた。しかし石原が相棒に組まされた殺し屋竜はヘロイン中毒だった。ふらふらになりながら湯本を探す竜だが、次第に石原も痺れを切らしていく。

 

しかし、ついに湯本が海外から日本に戻って来たことを突き止めた沢田らは、空港で殺すべく石原を乗せて空港へ向かう。すんでのところで石原は徹夫に連絡をし、徹夫らは石原らの乗った車を追跡、途中で逮捕しようとするが、薬が切れた竜は、石原を疑い、沢田を撃ち殺してしまう。そしてついに発狂した殺し屋は刑事に逮捕される。実は湯本こそは杏子が待っているフィアンセだった。

 

石原は礼子とデートをし、石原は礼子に真実を告げられないまま、礼子は杏子に電話をしている場面で映画は終わる。傍には裏社会にいる男が衆議院出馬の演説をしていた。

 

石原の潜入捜査の展開を中心に礼子や杏子の脇のの話を絡ませて面白く膨らませるところだが、徹夫の存在も最初だけで次第に影が薄くなってくるし、ちょっと勿体無い出来栄えの作品でした。

 

「NOCEBO/ノセボ」

なんとも気持ちの悪い映画だった。結局、西洋人に搾取されていた東南アジアの貧困層の人が娘を殺された恨みを晴らす復讐劇、しかも呪術を使うというホラーテイスト有りという作品ですが、かなり都合よく展開する作りなので、B級ホラーの領域を出ない映画でした。監督はロルカン・フィネガン。

 

子供ファッションの事業を展開するクリスティーンが、何やら、電話を受けて犠牲者が出たことを聞く場面から映画は幕を開ける。家では仲の悪い娘のボブスを学校へ送って行き、迎えを夫のフェリックスに頼んでみたりしている。ファンションショーの日、電話で、犠牲者の数を聞きながらステージを離れたクリスティーンの目の前に真っ黒なしかも体中に蚤を纏った不気味な犬が現れ、クリスティーンの前で体を震わせたので蚤がクリスティーンに降りかかる。絶叫の後クリスティーンは目を覚ますが、一匹だけ蚤が頸に張り付いている。そして八ヶ月が過ぎる。

 

あの日以来体調が芳しくないクリスティーンは、酸素マスクをつけて眠っている。目覚めて、同業者の友達リズのところに自分のデザインの服を持ち込んで、社交辞令的に褒められて自宅に戻る。チャイムの音で玄関に出るとダイアナというフィリピン女性が、クリスティーンに雇われてお手伝いに来たという。物忘れがひどくなっていたクリスティーンは言われるままに部屋をあてがって仕事をしてもらう。フェリックスが帰ってきて、不審に思うものの、しばらくダイアナには家にいてもらうことにする。

 

ダイアナは自室で、不気味な祭壇を作り、玄関に灰を撒き、呪術的なことを始める。食事の時にクリスティーンが痙攣を起こしたがダイアナが何やら施術をして助けたことから、クリスティーンはダイアナを信頼して治療してもらうようになる。最初は嫌っていたボブスもダイアナを受け入れ始めるが、疑心暗鬼のフェリックスは、ある日、クリスティーンが捨てるようにとダイアナにいったと言っていた常備薬をダイアナのベッドの下で見つけ、さらに奇妙な祭壇も発見したことからクリスティーンに告げてダイアナは首になる。しかしすっかりダイアナを好きになっていたボブスはダイアナと約束をする。

 

ダイアナが去った後、クリスティーンの周りで奇妙なことが起こり、フェリックスは階段から落ちて入院する。クリスティーンは仕事場でも幻覚を見て錯乱状態になったことから、自宅に引き篭もるがそのタイミングでダイアナが戻ってくる。全てダイアナの呪術のせいだった。そして、治療ではなく、もっと先のことを施すと言って何やらクリスティーンを支配し始める。実は、ダイアナはフィリピンで縫製の仕事をしていた。その依頼主がクリスティーンの会社だった。クリスティーンに無理なノルマを工場にかけられて、ダイアナは娘を職場に連れてきて働いていた。ダイアナが娘のためにジュースを買いに出た時に、工場が火事になり娘は焼け死んでしまった。ダイアナは、ある呪術師の死に際に立ち会ったために呪術師の呪いを受け継いでいた。ダイアナは縫製工場にやってきた赤い靴の女=クリスティーンに復讐するべくクリスティーンの家にやってきていた。

 

ダイアナの呪術で強制的にミシンを踏まされたクリスティーンはやがて周囲が火事になり焼け死んでいく。その遺体を、戻ってきたフェリックスが発見する。一方、ボブスには、ダイアナがこれからも一緒だからと言ってボブスを庭に出す。そしてダイアナは屋上から飛び降りる。ダイアナの死に際に呪術師の呪いがボブスに乗り移り、呪術師の力を得たボブスの姿で映画は終わる。

 

蚤が舞い上がったり、巨大な蚤がベッドを這い上がったり、とにかく描写が気持ち悪い。強大な呪術を身につけたダイアナが火に包まれた工場から娘を救えないのはちょっと無理があるように思うが、結局、西洋人が東洋人を搾取しているという、今時古臭い設定もちょっといただけない映画だった。