「枯れ葉」
シンプルなストーリーとウィットに富んだセリフの軽快なリズム、そして、既成曲を巧みに取り入れた選曲によるテンポのいい展開、さらに抑えた赤、青、黄を交えた色彩演出、とにかく知的に面白い、そんな映画だった。監督はアキ・カウリスマキ。
スーパーで働くアンサがレジをこなしている場面から映画は幕を開ける。機械的に処理して行く品物はベルトコンベヤーの端で溜まって行く。工場で働くホラッパは同僚に誘われてカラオケバーに行く。そこで友人と来ていたアンサと出会う。アンサは賞味期限切れの品を捨てに行って、捨てるものを分けて欲しいと来た男に分けてやったことからスーパーをクビになる。ホラッパは、部品の不備を指摘していて事故が起こるがその点検に際し、ホラッパが酒を飲んでいたことからクビになる。
ある時、ホラッパとアンサは再会し、映画を見に行くことになるが、何を見るでもなくジム・ジャームッシュのゾンビ映画を見てしまう。そしてアンサは電話番号をホラッパに渡すがホラッパはタバコを取り出す際にメモを落としてしまい連絡が取れなくなり、アンサと再会するべく探し回る。そしてあの時の映画館の前で再会、アンサは住所を書いたメモを渡す。
ホラッパはアンサの部屋で食事をするが、酒を飲んでしまい、アンサは、父も酒で死んだことなどを話し、アル中はお断りだと断言してしまう。
ホラッパは工事現場で働き始めるが、そこでも酒を飲んでいたことでクビになる。アンサにも嫌われたホラッパは一念発起して酒を断つことにする。アンサは孤独を癒すため一匹の野良犬を貰い受けて生活を始める。そんなアンサにホラッパから電話が入る。ホラッパはもう酒は飲んでいないのだという。アンサは嬉々として部屋を掃除して待ち構えるが、ホラッパは、家を出たところでトラムに轢かれて入院してしまう。
アンサはホラッパの友人から、ホラッパが意識不明で入院している旨を聞き病院へ行き、ひたすら話しかける。ある日、病院から、ホラッパが意識が回復したと連絡が入る。ホラッパはアンサに、一緒に婚姻届を出しに行く夢を見たと話す。まもなくしてホラッパは退院、出迎えにアンサは犬と一緒に行く。ホラッパがアンサに犬に名前を聞くと、「チャップリン」と答える。こうして映画は終わる。
とにかく映画愛とユーモアに彩られた洒落たラブストーリーで、明らかにチャップリンの映画を意識した作りになっている。ラストシーン、二人が彼方に歩いて行くシーンなど明らかにチャップリン映画である。赤、青、黄をさりげなく盛り込んだ画面と、セリフの応酬の中に潜まれるテンポいいユーモアに終始楽しませてもらえる作品。シンプルな作りこそ究極の映画じゃないかと証明するような映画だった。