くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「オペラ座の怪人」

オペラ座の怪人パーフェクトガイド

冒頭シーン、モノクロームの場面に今や廃墟同然のオペラ座が現れ、今日のオークションの会場が映し出されます。
舞台版もそうですが、かつて栄光の時代にオペラ座の天井を飾っていたシャンゼリアがオークションにかけられ、その口上が始まると一気に場面はカラーに変わって物語は全盛期のオペラ座の舞台へ・・・

度肝を抜く導入部分は舞台版と同様ですが、舞台版では一気に舞台上のシャンゼリアが客席の上まで引き上げあれて観客の頭上につるされます。
まさに舞台と観客が一体になる衝撃的な導入部分で私はここが大好きでした。
映画版では観客の頭上に引き上げることは不可能なのでその迫力を表現するために大きくカメラが動いてシャンゼリアを真下からみる構図を作り出します。

今回の作品に共通するのがこの縦横無尽に動くクレーンカメラの多用でしょう。この大きく縦に横にそして奥に手前にとパンするカメラワークがスクリーンの中の豪華な調度品や全盛期のオペラ座の華やかな場面をさらに効果的に倍増させてくれるのです。

物語は有名なガストン・ルルーのやや怪奇じみた、しかしあまりにも美しい恋愛劇。
その名作に天才アンドリュー・ロイド=ウェーバーの名曲が被さって物語は否応もなく盛り上がります。
さらに映画版ではジョエル・シュマッカーの独特のカメラワーク(「フォーンブース」でも見せた大きく俯瞰する構図など)と見事なカット編集で見せ場見せ場で引き込まれていくのです。

ファントムがクリスティーンを自分のところに連れて行く場面を始めてみせるときのやや大げさなシーンとバックに流れる名曲にさらに観客はまか不思議なレトロな世界に陶酔してしまいます。
舞台版では使えない色彩変化の表現を見事に効果的に使っています。
冒頭のややグレーっぽいトーン、オペラ座の舞台のやや深紅っぽい豪華なトーン、そして一方でろうそくに光るモノトーンのくっきりした場面、そこに繰り広げられるのがファントムの真っ赤なバラのイメージ。

ファントムの黒と赤が悪魔的にしかしもの悲しくクリスティーンへの恋心を表現しています。
そして感動のラストシーンは・・・みてのお楽しみ。

とはいえ、やはり舞台劇には違いなく、スクリーンの二次元の世界に描くにはあまりにも物語が壮大すぎたようですね。

難をいうときりがないのですが全く無駄のないシーンの連続と見事な構成は見る人を19世紀に誘ってくれますよ。おすすめの一作ですね。