くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「身代わり忠臣蔵」

「身代わり忠臣蔵

こういう気楽で肩の凝らない娯楽映画の存在も必要という一本で、たわいないとしか言いようのない作品ですが、これはこれで楽しんだからそれで良いという映画でした。ムロツヨシは嫌いな役者ですが、前半はともかく後半はその実力だけを前面に出した演出は良かったと思います。史実をコミカルなフィクションにアレンジした面白さはわかるものの、ちょっとキレが足りないために、全体がぼんやりとなってしまったのは勿体無い映画だった。監督は河井勇人。

 

橋の上で、口上をたれるこじき坊主孝証は思うように布施をもらえず、死ぬの生きるのと大騒ぎをした挙句、通る人に愛想を尽かされ騒ぎの中川に落ち、釣りをしていた大石内蔵助に助けられる。結局、食べ物にあづかれない孝証は吉良の屋敷にやってくる。実は孝証は、吉良家の末の弟で蔑まれていた。吉良家の当主上野介はそんな弟は邪魔でしかなかった。

 

その頃、朝廷の勅使を迎えるためにその手筈の全てを任されていた赤穂家当主浅野内匠頭吉良上野介にその段取りを教授してもらうべく声をかけていたが、上野介は横柄な態度で内匠頭を罵倒する。内匠頭はその仕打ちに耐えられず、ついに江戸城松の廊下で上野介に斬りかかり、額と背中に刀を浴びせる。

 

上野介は重傷を負って自宅に下がるが、背中に刀を受けたという逃げ傷は武士の恥であり、老中柳沢吉保はそれを機に吉良家をとり潰そうと考えていた。そのことに危惧した吉良家の重臣佐藤は、孝証が上野介に瓜二つなのを利用して、一時的に吉良家のの当主になってもらい、背中の傷は儀式に大事な茶道具を懐に持っていたためそれを守ったという理由を柳沢吉保に抗弁させる作戦に出る。

 

大金を積まれた孝証は一時的に引き受けるが、間も無く上野介が本当に死んでしまい、佐藤はほとぼりが覚めるまで当主でいてほしいと孝証に頼み、孝証も渋々引き受けることにする。

 

大金を手にした孝証は、吉原に遊びに行き、そこで大石内蔵助と再会する。浅野内匠頭切腹させられ、赤穂家はとり潰しになり、大石内蔵助は、家臣からの仇討ちの要望を抑えるべく苦心していた。しかし、結局お家再興の希望は叶えられず、仇討ちへ進まざるを得なくなる。

 

一方、孝証は吉良家で、上野介とはうって変わった温厚で温かみのある態度で接し、吉良家の家臣たちも女中の桔梗も癒され始めていた。柳沢吉保は、赤穂家仇討ちの機運が高まる中、幕府擁護のため吉良上野介江戸城外の本所へ転居させる。そして大石内蔵助らに討ち入りさせて返り討ちにする計画を進める。

 

そんなことと知らない大石内蔵助は決行日を決め、泉岳寺に参拝していた。そこへ坊主姿の孝証が現れ、自分は吉良家の末弟で、上野介の身代わりに立っていることを白状し、斬り合いを最小限にして、自分の首だけを斬るようにという作戦を大石内蔵助に申し出る。大石内蔵助は、孝証の気持ちを汲んで、その計画で討ち入ることにする。

 

討ち入り当日、計画通り孝証は大石内蔵助に捕まる事にする。しかし桔梗は全て知っていた。大石内蔵助は孝証を引き出すも、酔わせていた吉良家の剣豪清水一学が躍り出てくる。孝証は、自室から抜け道を通り炭小屋に隠れる。そこへ大石内蔵助がやってくる。潔く首を差し出す孝証に大石内蔵助は刀を振り下ろそうとするが、吊ってある塩の俵から本物の上野介の遺体が落ちてくる。せめて後日葬儀をしようと佐藤が塩袋の中に上野介の遺体を隠していた。

 

大石内蔵助は本物の上野介の首を持って家来たちの前に現れ、泉岳寺を目指して江戸の街に出る。しかし後を追って吉良家の家臣が首を取り戻そうと襲いかかる。赤穂家の家臣たちはラグビーよろしく首をリレーし、最後に大石内蔵助の手に届いて大団円となる。孝証は、佐藤に貰った千両を、お家取り潰しになる吉良家の家臣に分け与えるように言って家を出る。大石内蔵助は本来打首だが将軍綱吉の便宜により切腹となる。孝証はもう一度坊主をやり直そうと泉岳寺に参った後旅に出ようとするが、そこへ桔梗が現れ、二人は手に手をとって旅立って映画は終わる。

 

なんのことはない気楽な娯楽映画で、いい作品にしようと思うならもっと脚本を練って、演出も工夫すればいいのだろうがそこまでする気はなく、あっさり仕上げた感満載の映画だった。