「スカイライン 奪還」
今回も見せ場の連続で、無駄なツッコミが発生するよりどんどん話が前に進むので、何も考えずに楽しめる娯楽映画に仕上がってました。監督はリアル・オドネル。
時間は前作と同じタイミングから始まります。ロス警察のマークは息子のトレントが喧嘩をして逮捕されたとの知らせで署にやってくるところから映画が始まる。正義感の強いトレントとマークは帰ろうとするが車が調子が悪く地下鉄へ。そこでエイリアンの襲撃と遭遇。前作の戦闘シーンが所々に挿入され、時間軸を統一。この演出はなかなかのものです。
エイリアンから逃げ回るもののとうとうマークもトレントも、地下鉄職員オードリーも捕まってしまう。ところが、脳を取られそうになる寸前、一匹のエイリアンに助けられる。このエイリアンこそ前作で脳を取られたジャレッドだった。そして妻のエレインは光を浴びたため、通常より早く臨月を迎え、女の子を出産する。しかしその出産でエレインは死ぬ。マークはその赤ん坊を守ることを約束してジャレッドと協力。
一方トレントは抵抗の末に捕まり怪物にされてしまう。エイリアンになったジャレッドはこの宇宙船を破壊する計画で動いていた。そして、エネルギーのボールで見事に宇宙船を爆破、大破したまま、ラオスに不時着。ジャレッドは破壊工作の中死んでしまう。
マークは赤ん坊を連れ、オードリーと脱出。現地でスアら抵抗組織のメンバーと知り合い、エイリアンに交戦を始める。脱出の途中で、危ないところをトレントが変身したエイリアンに助けられる。
生まれた赤ん坊はみるみる大きくなり少女にまで成長。しかもその血清はエイリアンを倒すことができると判明する。この辺りよく考えると、どう言う仕組み?みたいな気もする。
どうやら宇宙船に乗っておるエイリアンは一匹だけで他は人間の脳を取り込んだだけの奴隷のような化け物であるとわかる。これもまた強引。
不時着した宇宙船からは、巨大なバトルスーツに身を包んだエイリアンが、赤ん坊を奪取すべく現れる。エイリアンは人間の赤ん坊である実験をしているらしいセリフがあるが、一体マークはいつ知ったの?
交戦する中、勝手に離れた少女の危ない瞬間に現れたマークの息子トレントが巨大バトルスーツで登場、エイリアンに戦いを臨む。一方、マーク達は血清を仕込んだ爆弾を宇宙船の光の大砲に打ち込み、青い光で悪者に感化されている変身エイリアン達を赤い光の善玉に変え、とうとうエイリアン本人も倒されて大団円。
10年後、少女はローズというマークの奥さんの名前をもらい、地球を守る戦士となり変身したトレント達と、向かってくる新たなエイリアンに宇宙船で立ち向かうシーンでエンディング。えーまだ続くの?
本当に単純な娯楽映画で、今回はラオスに不時着したので、現地の戦士とエイリアンの格闘アクションも登場、何が何だかわからない死闘が繰り返される。
エイリアンの科学的な弱点についてはかなり適当な理由づけでどんどん話を進める強引さはかえって潔くて面白いし、日本のアニメさながらに巨大バトルスーツに身を包んでの戦いも、ニンマリしながら見ることができた。B級かもしれませんがよくできたSFエンターテインメントでした。
「つかのまの愛人」
フランス映画らしいちょっとしゃれた感じの作品で、男と女の物語が不思議な魅力で語られた秀作でした。監督はフィリップ・ガレル。
大学の校舎の階段、女子大生のアリアーヌが駆け上がってくる。すぐ後を教授のジルが駆け上がってきて、二人で教師専用のトイレに入りSEXするシーンから幕を開ける。カットが変わると、ジャンヌが恋人マテオに追い出され泣き崩れている。父ジルのアパートに転がり込むが、アリアーヌが奥の寝室で眠っていた。
アリアーヌとジャンヌは同い年、不思議な三人の生活が始まって物語が始まる。ジルの留守の時、アリアーヌとジャンヌは同い年ということもあり、女同士で男関係の話やジャンヌが別れたマテオとの話などに花を咲かせる。
そしてジルが帰ってくると、ジルとアリアーヌは恋人同士となり、ジャンヌの存在が微妙な立場になるが、それはまたジルとジャンヌが親子になればアリアーヌが微妙な立場になる。
アリアーヌがある時帰ってくると、ジャンヌが窓から飛び降りようとしていた。マテオがいまでも好きなのだと叫ぶジャンヌにアリアーヌは必死で慰めてやる。
大学で学生達の授業の時アリアーヌに近づいてくる男子学生がいた。ジルは見て見ぬ振りをしたものの、アリアーヌはその男子学生と一夜を共にし、今回限りと鏡に書き置きして家に戻ってくる。当然、ジルには嘘をつく。
ジャンヌは、たまたま道で、ポルノ雑誌に写っているアリアーヌを見つけるが、ジルには話さなかった。
ジャンヌには新しいボーイフレンドができたが、ある時、ジャンヌがアリアーヌと待ち合わせている時にそのボーイフレンドと会い、三人で食事をする。しかし、その日アリアーヌはその男性と学校のトイレでSEXをする。しかも、たまたまそに現場をジルが見てしまう。
帰ってきたアリアーヌをなじるジル。アリアーヌはつかのまの愛だからすぐに消えるのだと訴え、後悔し、今でもジルを愛していると抱きつく。しかし、やがてアリアーヌは出て行き、ジルとジャンヌの二人になる。
三ヶ月が経ち、ジャンヌの誕生日にジルもやってくるが、その席にマテオがいた。ジャンヌとマテオは元の鞘に収まったのだと言う。ジルと別れたジャンヌとマテオは夜の街で熱いキスを交わす。映画はここで暗転エンディング。
それぞれの心の声が入れ替わりながら語られ、その繰り返しで物語が進んでいく。特に凝った画面作りはせず、淡々と三人の物語が描かれるが、そのどれもに男と女の、言葉にできない関係が描かれて行く。不思議な機微を表現した作品で、一見思いつきそうで思いつかないストーリーだったように思えます。いい映画でした。
「あの頃、君を追いかけた」
台湾版のオリジナルから毒が抜けた感じですが、日本映画として洗練された出来栄えになり、誰もが通ってきた青春の時間を、うまくまとめた物語構成で、切なく描き切った秀作にしあがっていました。監督は長谷川康夫。
オープニングはオリジナル版と同じくりんごのカットから始まります。スーツ姿の主人公浩介が、幼馴染に急かされるカット。そして物語は高校時代に遡る。
主人公浩介が、授業態度が良くないと、真愛の前に座らされる。真愛はクラスでも一番人気の美少女で、この頃、詩子や陽平ら仲の良い仲間でつるんでいたメンバーの一人だった。物語はオリジナル版同様にそれぞれの友達の姿を簡単に紹介し後はたわいのない青春ストーリーが続く。
浩介は真愛のことが好きだが、まっすぐに気持ちを表現できない。一方の真愛も浩介への気持ちをはっきり見せない。しかし、二人が好き同士なのは周りの誰もが知っていた。
そんな、誰もが経験してきたプラトニックな恋を軸に、彼らの周りのさりげない青春の時間が平凡なのだがみずみずしいタッチで描かれていく。
恋に発展するようで発展せず、ほんの些細なことで、別々になってしまう浩介と真愛。高校から大学、さらに社会人へと、気がつけば時間は過ぎ去っていた。
そしてある時真愛から浩介へ、結婚すると言う連絡が入る。冒頭のカットはこれから真愛の結婚式に行く浩介達である。そして、結婚式で新婦にキスをしたいと提案して、まず新郎にキスをしなさいと言うオリジナル版同様の展開から、浩介が真愛とキスをする幻想、彼らの過去がフラッシュバックされる。そして、浩介が真愛と結婚するパラレルワールドならと言う切ないラストのセリフと、りんごのカットでエンディング。
台湾版は、やや稚拙な演出が目立ち、それがかえって毒になって面白かったが、日本版はその毒をそぎ落とし、甘酸っぱい青春映画として仕上げた。それぞれに思わず胸が熱くなるのは、ラストの畳み掛けを特徴の脚本の良さかもしれません。映画のクオリティが綺麗にこなれたいい映画になっていた気がします。見てよかったです。